お姉ちゃん気質


五条悟といえば泣く子も黙る最強呪術師。
昨年よりも遙かに増えた任務量を淡々とこなし、この日も気付けば寮に戻ったのは22時を過ぎていた。
食堂はとっくに営業時間を過ぎているが、途中で買ったコンビニの弁当を温めるべく食堂へ足を向けた。

「やば!うま〜!やっぱ七海の言う通りにしてよかった〜」

声が聞こえる。先客がいたのか、と明かりがついていた食堂の戸を開くと、そこにいたのは五条が可愛がっている後輩の七海と転校生だった。転校以来、度々教師達が頭を抱えているという噂の問題児の苗字と、生真面目で堅物の七海。灰原を含めた三人でいることはあれど、同級生といえども意外な組み合わせだなと五条は思った。

「お疲れ様です」
「五条先輩おひさでーす」
「お前らも任務帰り?」
「はい。五条さんも、ですね」

七海が五条の手の中にあるビニール袋を一見する。五条が袋から弁当を取り出して電子レンジに入れる。温まるまでの間に袋に入っていた揚げ物や菓子を出して広げていると、正面から覗き込んだ苗字が「へー」と興味深そうに呟いた。

「五条先輩もコンビニ弁当とか食べるんですね〜、ちょっと意外ー」
「普通によく食ってるだろ」

そう言う二人はこんな時間だと言うのに寮でいつも出されるトレーで食事をしている。その視線に気付いたのかただの世間話か、苗字が「ねえ聞いて五条先輩!七海ってあざといんですよー!」と湯呑みに手を伸ばしながら喋る。爪が長え。

「食堂のおばちゃんに『任務の後はバランスのいい食堂のご飯が一番です(低音ボイス)』とか言って!まんまとこうして取り置きしてもらったんですよ〜」

七海の微笑みにおばちゃんときめいてたよ、と言いながら向かいに座る七海を指差している。なんだそのギラギラした爪は。湯飲みが似合ねえなと思いながら七海を見れば、「面倒くさい」と露骨に顔に書いてある。お前はクォーターなのに湯飲みが似合うな。

「七海って年上キラー?」
「違います」
「え、お前年下より年上派だろ?」
「五条さんまで・・・違います」
「ってか五条先輩、甘いの買い過ぎじゃない?今食べるの?やばくない?」
「苗字、敬語」
「男なんてこんなもんだろ。食うか?」
「え、絶対いらない。こんな時間にお菓子とかありえない」
「苗字敬語」
「つーかそう言いながらお前も今飯食ってるし」
「これは、スーパー優しい食堂のおばちゃんお手製愛情たっぷりご飯なんでセーフです」
「変わんねーよ」

あー美味しかったーごちそうさまーと手を合わせていた苗字のポケットからタイミングよく電子音が鳴る。なんかのCMだかドラマのタイアップになってる曲が鳴っている携帯を取り出して画面を確認した苗字が顔を綻ばせた。携帯を握りしめて席を立った苗字が、あっ!と振り返り、「あたし後でお皿とか洗うから、五条先輩も七海もそのままにしてていーよ」と言って出口へ向かった。
「もしもーし!ねぇウケる!マジ今ちょーどご飯食べたとこなんだけどー!」

任務帰りの22時過ぎとは思えないテンションで話す苗字に思わず視線を向けると、電話をしながらこちらの視線に気がついた苗字がへらりと笑って手を振った。廊下に出て行ってもなお静かな寮内では電話で話す彼女の声がうっすら聞こえる。
七海は慣れているのか何も言わずに食事を続けている。あいつ食うのはっや。

「謎に面倒見いいの、なに」
「ああ見えて、年の離れた兄妹がいる長女らしいです」
「俺ら弟扱い?なんか腹立つ」
「・・・(どう見たって貴方が一番手のかかる弟でしょう)」




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