冬の始まりー後ー



苗字がフラれて相当落ち込んでるから励ましてやって下さい、と後輩から連絡が来た。任務やらですぐに顔を見に行けなかったが、たまたま傑と二人で寮に戻ると噂の本人を見つけた。

「苗字、お前フラれたんだって?」

「悟、いくらなんでも直球すぎるぞ」

ニヤニヤと肩を叩けば硝子と並んでいた苗字が振り返る。いつも通りの化粧にいつも通りの格好だ。落ち込んでいる様な雰囲気ははいように見える。

「ああ、五条先輩、夏油先輩お疲れ様です」

思う存分いじってやろーという俺の意思を感じて隣の傑と硝子は呆れ顔だ。だってこんな面白い事なくね?

「フラれた割に元気そうじゃん」

「まぁ、ハイ。そうですね」

いつものハイテンションの#@#じゃない。なんだ、やっぱり落ち込んでるのか。

「もう別れたんで。関係ないですし。あんな男こっちから願い下げですね」

やけに淡々と喋る彼女にそうだ、と閃く。

「俺が慰めてやろうか?俺、今フリーだよ」

「おい五条」

すかさず硝子が低い声で止めてきたが、まあいつもの冗談だ。ワンチャンないかなと心の底で思っていない訳ではないが、普段のノリできっとこいつは返すんだろーなと言っているのを傑は気付いているようで、少し呆れながら様子を見ているだけで何も言ってこない。


「え、ムリです。新しい彼氏出来たんで」


は?え?早くね?
という突っ込みも忘れて、言葉が出ない。

「あ、彼氏から電話だ」

いつかも聞いた電子音に苗字がポケットから携帯を取り出して「じゃあ硝子さん、またお話ししましょー!」と言って出て行ってしまった。


「.....今のは流石に、ねぇ...」

「...まぁ、本人の受け取り方次第かな...」

硝子と傑がため息混じりに呟く。俺完全に悪者じゃねーか。誰だよ落ち込んでるから励ませって言った奴。俺を励ませよ。

翌日連絡してきた後輩に文句を言いに行けば、聞いてくださいアイツ実はすっぴんめちゃくちゃ美人なんですよ、と言われて更に後悔した。ガチで。



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