「ふぅ……。」
溜まりに溜まった仕事も一段落し、漸く風呂に浸かる事を許された。頭を使う仕事はどうも肩が凝る。とは言えまだ齢二十歳、他の人から比べればまだこれからの働き盛りである。
しかし丁度いい湯加減は、心も身体も休まり、あっという間に憩いの場と化す。
…そう思ってるのも束の間、
「…………え。」
扉が開いた、法正の手によって。
「ん、これは奇遇ですね。」
へらりと笑っているがどう考えても態とだ、服が置いてあるにも関わらず入ってくるのだからこれは故意としか考えられない。
「や…え…!?」
「どうも今の仕事が合わない気がするんですよね、全く肩が凝る。そう思いません?」
何事も無いようにずかずかと入り込んでくる法正に慌てる、当然一人で入ってるわけだから身体に布など巻いてない。ひたすら隠す事で頭がいっぱいだ。
「何をそんなに縮こまって…ああ、俺が入ってきたのがそんなに驚きで?」
「驚きというか深刻な事態ですよ!?急に入ってくるなんて想像すらしてませんでしたもの!!」
おまけに色っぽい身体に目のやり場が困る。ただでさえ狭い風呂場なのだから尚更心臓が張り裂けそうだ。このまま何も無ければいいのだが、そう願うばかり。
しかしそうはいかない、法正は大人しくしている様な人間ではないのだから。
「成程、なら次からは想像するように…。」
「しませんよ!それでは私が変人みたいじゃないですか。」
極力端の方に身体を寄せるが、そんな努力は虚しく彼の手によって打ち砕かれる。腕を軽く掴まれ強制的に向き合う様な形になれば不敵に笑む法正。
「わ……!?」
「俺の前で隠し事はいけませんよ……いいじゃないですか、逢瀬を重ねて男女の関係はとっくに……。」
「待ってそれ以上言わないで恥ずかしいですから!」
二人きりとは言え、そのような事を大胆に言うものではない。羞恥で沈んでしまいたい、と涙目で訴えるななし。しかしそれが法正にとっては甘い蜜、全くの逆効果である。
「俺を誘ってるんですか?」
法正が動く度水面は揺らめく。肌白い首筋に手を当てればびくりと震わせる身体、その姿がもっと見たいと欲に駆られゆっくりと鎖骨まで這う。駄目、とその手を離そうと必死になるが寧ろもっと、に聞こえて仕方ない。
「素直になった方が楽ですよ。」
「本当に……!誘ってないですから!」
「…往生際が悪いな。」
這う指を瞬時に腰に移動させ、身体を密着させる。何がどう起きたのか分からないななしは唖然とする。しかし我に返れば押し返そうともがく。それでも男女の力は決まってる、びくともしない事に諦めがついたのか動きをぱったりと止めた。
「観念したか。」
「……意地悪です。」
「ななしにだけだ。」
額に口付けを落とせば頬を膨らませるななし。それすらも愛おしく感じる法正は今度は唇に優しく接吻をした。
(ななしは平気か!)
(ええ、少しばかり逆上せただけですから)
(誰のせいですか……)