「この私がお前にやると言ってるのだ、感謝しろ。」
「今日……何かの記念日?」
「な………別に何もないが。」
士季が私にくれたのは青い石が付いた綺麗な髪飾り、特に特別な日ではないがくれたのだ。
「いちいち何かの記念日とかなければ渡す事も許されないのか。」
私が怪訝そうにしているためか、彼の表情はみるみる機嫌が悪くなるのが分かった。
好きな人から貰うのは凄く嬉しい事だ。しかし、らしくない事を急にしたので疑問に思い問うただけである。そう考えたら何だか申し訳ない気持ちになってしまった。
「いらないなら返せ。」
「え………い、嫌です。」
はぁ?そんな雰囲気の顔をした彼は既に手を出していた。返すなんてとんでもない、嬉しいのだから。
手を出しているし、代わりと言ってはなんだが懐にあった長い青い紐を渡した。私がいつも愛用している結紐だ。
「何だこれは。」
「髪を結ぶ紐ですよ。私の宝物です、大切にしてくださいね。」
ニコリと笑うと彼の頬がみるみる紅潮するのが分かった。怒ったり照れたり忙しい人だな、だなんて思いながら私は頬に軽く口付けをした。
翌日、私は早速士季にもらった髪飾りを付けて部屋を出る。
そしてもらった本人に出くわした。
「おはよう、です。」
「ああ。」
短い言葉が交わされるだけで特に何も変化がなかった、と思っていたのだが。
「…付けてくれたのか、それ。」
「はい、気に入ったので。」
そうか、と一言、彼は踵を返しそのまま早歩きで向こう側へ歩いてしまった。何かしたかな、なんて思いながら後ろ姿を見送ると見覚えのある物が見えた。
「あ…………。ふふ、付けてくれたんだ。」
青い紐が彼の長い後ろ髪にしっかりと結われ、ゆらりと揺れていた。
(目の前で見せるなど、恥ずかしくて出来るわけないだろう)