恋情教育

「英才って、そんなに凄いの?」

「当然だ、この私がいい例だ。」

ふん、と誇らしげに言う彼、鍾会は小さい頃に英才教育というものを受けてきたらしい。良く分からないが、兎に角凄い事の様だ。

「阿呆なお前には、到底分からないだろう?この私の才能が。」

「そんなに私、阿呆に見えるの?だったら私と関わらない方がいいんじゃないのかな、阿呆が移っちゃいますよー。」

面白半分で言ったことだが、な…!、と口を開け少し動揺をしている。何かと彼をからかうのは楽しい。

「お、お前が孤独そうにするから仕方なくだな!!私だって不本意だが哀れなお前を救済をしてやるのもその、なんだ、英才の一つだと思って!!」

必死に弁解する鍾会、果たして英才と友人作りって結びつくのだろうか、序でにこんな事も冗談で聞いてみた。

「それなら恋愛も、英才で習うの??」

「は!?」

素っ頓狂な声を出して彼は硬直してしまった。恋愛は英才で学ぶ事は出来ないのか。何てそう思ったのも束の間、彼は何かが吹っ切れた様に話し始めた。

「と、当然だ!!!どうせお前はロクに男と付き合ってきたこともないだろう?それに比べて私の方は才能を理解してくれる女共から引く手数多だ!!女に困ることなんて有り得ないよ!!!」

「そ、そっか、確かに私、誰と結ばれた事もないし…接吻もした事ないし…。」

冗談で聞いてしまったとは言え、彼の言葉を聞いた時、私はチクリと胸が痛んだ。落ち込んだ私を見るや否や彼はバツが悪そうに口を閉ざしてしまう。
誰かと付き合った事がないのは事実、それに自分に自信がない事もあるが、もう一つは……。

「何より私、鍾会の事、好きなの。」

「…………な!!」

そのまま私は鍾会の横を走り去った、彼は何かを言いたそうにしていたが。

……そうだ、私は彼の威張ってる所も、髪がクルクルしてる所も、照れる所も、憎たらしい所も沢山あるけど、全部引っ括めて好きだ。でも、先の言葉を聞いたら急に辛くなって、逃げ出して。

戸を閉めて暗い部屋に火を灯す。食事を先に摂っておいて良かった、今の彼に合わす顔がない。
床に落ちてる数枚の紙を拾い上げ片付ける、ふと何処からか落ちた雫が畳に染みた

「あれ………。」

その雫は自分の目から零れた物だ。

「…………逃げ出しておいて勝手だし、馬鹿だなぁ、私。」

「ああ、全くだ。」

驚いた、彼が直ぐ後ろに立ってた。私は思わず尻込みをしてしまったが彼はそんな事構わず腕を掴む。

「………!」

「何で逃げた。」

手に込める力が次第に強くなり歪む表情。

「ごめんなさい。」

「先の言葉、本当なんだろうな。」

先の言葉?もしかして好きという事だろうか、しかし鍾会は私のことなんて何とも思っていないのでは。

「た、確かに引く手数多なのは事実だが、誇り高きこの私がそこらの底辺の女に興味がある訳無いだろう。
お前は、その……確かに阿呆だが、この私が面倒を見てやらんと何しでかすか分からないからな!!つまり、そ、傍にいてもいいという事だ。」

倩々と張り裂けんばかりに話す鍾会、何がどうなってるか、理解出来ず私は目を丸くしてしまった。
掴む手が離れ、代わりに両肩に手が置かれる。真っ直ぐ見つめる目から逸らせない。

「……ななし……私の妻になれ。」

つま、つまとは何だろう。ああ、妻の事かしら。待って、今なんとおっしゃいました?

「おい、聞いてるのか。」

「え、あ………。」

「よもや耳まで、これだから阿呆は………。」

気が付いたら鍾会の顔が目の前に、口で息が出来無いのは彼が唇が塞いでるから。

「これで分かっただろ。」

離れると私はあまりの出来事に押し黙ってしまう。だが沈黙にしまいと、小さい声ながらもはい、と告げる。告げてしまった。

「有り難く思えよ、この私に貰われる事を。」

淡々と話してる様に見えるが実際、耳を紅に染め、癖っ毛をいじり、目を泳がせる彼、どうやら私と同様余裕はなかったみたいだ。

(どんなに素晴らしい教育を受けても、学べない物もある)