「俺の勘が告げている、正気を保てって……。」
どういう訳かななしが李典の部屋で完全に寝てしまっている。ちょっとした用があって暫く部屋を空けていたのだが、帰ってきたらこの有り様、何がどうしてこうなった。李典は上手く働かない思考を巡らせながら、どう対応しようか懊悩する。
綺麗な首筋から鎖骨、太腿を服から覗かせる色っぽさにごくりと生唾が喉を通った。眼福などと言っている場合ではない、なんとしても理性を保たなければ。
「いやぁ、寝込みを襲うとかあり得ないだろ、俺。」
とか言って就寝している時にそういった行為が無かったと言えば嘘になる。だがその時は真夜中であり今は日が真上に昇っている、昼間に襲うなんて完全に変人扱いだ、どれだけ欲求不満なんだ、俺。
「はぁ、よりにもよって俺の部屋だなんて……。」
いや、楽進の部屋で寝られるのも困る。彼も彼女の事を意識しているのが李典の目からも丸分かりだ。確かに奴は真面目だが、手を出さないとも限らない。男はいつだって獣だ、誰だってきっとこうなる。
「ああもう、そうじゃなくて……どうしてそういう事しか思いつかないんだか!」
己の象徴である青い首巻きを無意識に弄りながら右往左往。すると声に気付いたのか寝息が止まり、ごろんと寝返りを打った所為で更に曝け出される素肌にぎょっと目を見張る。
「うわっぷ……っ、」
李典の顔はもはや耳まで紅潮し、理性の限界まで追いやられている。ここまでくれば音を立てて崩れるのも時間の問題だ。
「いいか……直すだけだ、開けた部分を元に戻すだけなんだからな、俺。」
膝をついて近くまで寄りじっと凝視、幸い先の声では起きていないようだ。心臓の波打つ速さを深い呼吸で押さえながら震える指を彼女の胸元へ。
「もう少し、もう少し………。」
見るな、魅惑の谷間とか見るな、何も見えない、何も見えない。
「ん…………。」
願い虚しくもその目は開かればっちりと合う瞳と瞳、手は既に胸辺りの服を摘んでいて明らかに不審である。彼女は未だぼんやりと李典を見つめ、当の本人は石のように固まってしまった。
「り、てん………?」
「あ、いや……違うんだ……その、俺………。」
言い訳しようにも上手く声帯が機能してくれない。なんという展開だ、このまま微睡んでいる意識が覚醒すれば完璧に引っ叩かれる。
「………………おいで。」
「……………へ?」
李典はななしの口から漏れた幻聴に困惑した。間違っていなければその開いた唇でおいで、と確かに言った。
「もしもし、ななしさん、起きてますか。」
「んんー……李典、李典………。」
そんな目で見ないでくれ、何度も名前を呼ばないでくれ、このままだと俺の何かが吹っ切れる。伸ばされる手はふわふわ宙を浮いていて、李典を掴もうと何度も空回りする。
「なぁ、襲っちゃうよ俺。」
「………うん。」
「嘘じゃなくて、本当に抱きたいって言ったら。」
「………うん、欲しいな。」
「………本当に、だな?」
ふにゃ、と微笑むななしに遂に理性が崩れ、李典は掴んだままだった服を更に開けさせて色白の双丘を露わにさせた。
「やっ………。」
「ここまで煽っておいて嫌だなんて言わせないからな……覚悟しとけよ?」
李典は意地悪く笑って頂を指で摘めば、甘い声を漏らして身を捩らせた。そのまま深く口付け、舌を何度も入れたり出したり繰り返して互いの唾液を共有する。当然微睡んだ意識はすっかり目覚めて違う快楽を得る事になった。
「んっ………だめ、ぇ………!」
「駄目とか言って、何でここは濡れてるんだ。」
李典はすかさず脚の隙間に手を忍ばせて敏感な所を指でなぞれば、びくりと身体を震わせて一気に頬を紅潮させる。既に濡れそぼつ秘所に指を挿れれば更に甘美なる声を上げた。
「ひぁっ………!!」
「狭い……な、食われそうだぜ……。」
肉壁を指の腹で刺激し、好き放題に引っ掻き回す。すれば彼女は気持ち良さに喘ぎ、好がり、挙句の果てには李典の頭を思い切り掴んだ。
「いててっ、髪が千切れるっ…!」
「やだっ、いっちゃ………ぅう……!!止めて、おねが……っ!!」
「なら余計に逝かせたくなるぜ……一度果ててしまいなって……!」
「ーーーーーっ!!」
ななしが一番声を上げた部分を集中的に攻めて、一度目の絶頂を味わわせる。そのまま弓なりに反れた身体を抱き寄せて、互いの身体を密着させた。
「そろそろ俺も、いいだろ?」
見ずとも分かる、雄々しくなる男の物が。朦朧としながらもななしは両手でそれに触れて思い切り握れば、李典は突然の不意打ちに顔を歪ませた。
「なっ……ななし、何して………!」
「これで、おあいこ……。」
上下に擦り刺激を与えれば当然ながら彼も詰まるような呻きを漏らし、酷く苦悶する。自分でも分かるくらいに心臓の波が激しく鼓動し、今にも果てそうだ。
「……っ、どうせなら……ななしの口の中で逝きたいって思ってたりするんだよね、俺。」
「……………やっ!?」
頭を掴むと李典の物まで近付け、そのまま濡れた唇へと割って押し込んでいく。喉まで侵入する感覚に嗚咽は抑えられなかった。
「んぅ………っ!」
「唆るかもしれないな、その顔。」
まさか口で奉仕するとは思ってもいず、ななしは咥えたまま固まってしまう。しかしその時間は以外と短く、じゅぶ、と厭らしい音を立てて舌で器用に舐め始めた。吸ったり甘噛みしたり、時々李典の表情を伺ってはますます大きくなる男根を扱いた。
「っ、う………出、そう………っ。」
無意識に腰を振って喉の奥へと濃いめの精を射出させれば、吐き気に堪えながらもそれを飲み干し、ななしは暫く咥えたまま動かなかった。李典の腰を掴む手は震えて、心なしか目尻に涙らしきものが見える。それには流石にしまった、やりすぎたか、と後ろめたい気持ちが押し寄せた。
「悪い………っ、やりすぎた、か。」
申し訳なさそうにそっと抜けば、飲み切れなかった液と混じった唾液が口の端から溢れていく。呆然としていたななしは我に返り、李典の目を見た。
「ちが、うの……!その、飲むのも、李典が初めてだったから………ごめんね……っ!」
「…………っ、ななしの初めてばかり奪ってる気がするな……なんか、もう……可愛いったらありゃしないぜ……。」
怒るかと思って冷や冷やした、ほっとした李典は頭を撫でて一息ついた。
「でも、私の全ての初めては……李典に、あげたい、から。」
「……………。」
照れながらそんな事言われたら勃たない訳がない。
「じゃあ、もう初めてじゃないけど、くれよ?」
誤魔化すように笑い軽く押し倒すと再び雄々しくなった男根を挿入させる。初めてではないが、決して広くない中を通るにはまだ苦難である。ぎち、と鈍い音をさせながらも押し広げて何とか根元まで挿れていく。
「痛く、ないか?」
「少し……苦しい……。」
「ごめんな、もう少しで、気持ちよくなる。」
ゆるゆる律動させて異物の侵入に慣れさせていく。時々痛いと苦痛の言葉を吐いたが、少しでも気を紛らわせる様に何度も口付けを繰り返して、次第に甘い声へと変えさせていった。
「はっ、あ……っ、ん……!」
「ほら、もう大丈夫だろ……だからこのまま、最後まで行くぜ……?」
その言葉をつぶやくと同時に律動を加速させ、容赦なく身体をぶつけていく。とうとう涙がこぼれ落ちたがそれでも止まる事は許されない。幾度となく突き上げ、砕けんばかりに腰を振って絶頂へと駆け上っていく。
「やぁっ!!だめ、りて、……っふ、あぁ……いっちゃあっ!!」
「……っ、逝っちま、え!」
目を大きく見開いて痙攣する四肢へと止めどなく流し込む精液。流れていく脈動と締め付ける感覚に李典も思わず身体を震わせた。唇を噛み締めて一滴残らず彼女へと送り、汗ばんだ額を手で拭った。
それと同時に嫌な汗が一筋頬を伝って床に落ちる。
「ああ、やっちまった……昼間っから……。しかも俺の勘が告げてる……凄く嫌な予感を。」
絶対に外に聞こえている、そう思っても時すでに遅し。戸の隙間が運悪く開いていた為に、二人の声は完全に外に漏れていたのだった。
(予感的中、おかげで俺の頬にはくっきり手形がついているぜ)