「え……………。」
「俺の冴えてる勘が告げてる、これはまずいってな。」
私と李典二人で旅行にやってきたのだがここの旅館は、どうやら男女混浴のようだ。
ただでさえ部屋も人数の問題で一緒なのに、温泉まで一緒となると……。
「………まーその、何だ、行こう。」
長距離の旅だった為汗だってかいている、一人ずつ入る時間もない為今更引き返す事など出来るはずもない。それなりの覚悟で脱衣所へ足を運ぶ。
幸い夜中だった為か、人がいなかった。李典だけならどうにかなるだろうと安堵の表情で籠を取る。……何もしてこなければの話なんだが。
「いい?絶対振り向かないでね。振り向いたら外で寝てもらうから。」
「分かってるって、誰もあんたの小さい胸なんて見たいとも…ーーー痛っ!!」
彼の頭を空いている隣の籠で殴った、小さいのは余計である。
「あたた…本気で殴るなよ……。」
浴場はとても広く、大袈裟かもしれないが兎に角豪華であった。お湯で身体を流し、浸かる。
「気持ちいい、久しぶりにこんなにいい温泉に入ったかもしれない。」
「そりゃあ良かったな、ま、俺の勘が冴えてたってことだ。」
「男女混浴っていう話は知らなかったくせに良く言うよね…………。」
結果良ければ全てよし!!なんて叫んで、本当に人がいなくて良かった。
更に周りは煙でぼけて湯が白く濁ってて助かった、仲間とは言え男女という物がある訳で。(勿論距離は置いている)
「おーい、静かになったけどそこにいるのか?」
李典の声で我に帰る、いけない…ぼーっとしてた。
…何か近づく音がしてるんだが。
「ん?」
近い近い、兎に角近い、待ちなさいそこで止まりなさい。
…と、言いたいところだが声が出ない。
「何だ、返事が無いから心配しただろ。」
「え、あ………。」
はっきりとお互いの姿が見える至近距離。案外体つきがたくましく、見とれてしまいそうになる。こんなに近くで男の身体を見るのは初めてだ、どうしても緊張してしまう。
「お、俺に見とれてるのか?勘だが、そういう気がするぜ。」
「ち、近いから………。その、距離が近いから………。」
彼から見たら私は、顔を茹でだこのように赤く、口を金魚の様にパクパクさせているのだろう。
それを見て、ははーん、と何か良からぬ事を思いついた言葉を漏らした。
次の瞬間、腕を引っ張られ抱き締められた。頭が真っ白になる、何が起きたのかがさっぱり分からない。
「もっと近くなったぜ、俺達。」
「ば…っ………ば……っ!!」
言葉が上手く出ない、恋人でもないのにこんな事をするなんて!!
「おお、胸結構あるな。」
密着している為、身体の形まで分かってしまう、ふざけるなこの野郎。(当然私は布を巻いてる)
「馬鹿李典、離れ………!!」
「離すかよ、折角二人きりになって、しかもこんないい雰囲気で。
今なら行けるって俺の勘がね、だから言うわ、好きなんだ。」
夢だろうか、こんなのって有り得ない。はたまた逆上せているのか、何だか顔が熱い。
「今返事、聞かせてくれよ?」
「……………私は、」
「………………。」
言ってしまった、私も確かに想いは寄せていた訳だが。改めてあの事を思い出すと消えてしまいたい、李典に正常な思考回路を破壊された。
「さっきから無言だけど、大丈夫か?」
「大丈夫な訳無いでしょうあんな事をしておいて。」
「悪かったって、そう怒るなよ。」
「ちょっと何で布団入ってくるの。」
二つ用意されてる布団だが、何故か枕だけ持って私の布団に侵入してくる。狭い、暑苦しい。
「何でって、んー、初夜。」
「変態李典!!!!しかも婚姻してないから!!!!」
「曼成。」
彼が言う曼成とは李典の字で、つまりそう呼べと。
「…………曼、成。」
「あーもう可愛いぜあんた!!!」
また抱き着いてきた、ああもう恥ずかしいったらありゃしない!!
(今日は何か良い事あるっていう予感が見事的中したな、流石だ俺!!)