そんな幸福に笑みを

白く柔い雪がしんしんと降り外はすっかり銀世界、ななしはそんな景色を子供達と一緒に見惚れていた。

「わぁ、すごく綺麗だね。」

「うん!早くお外行きたいなぁー!」

「僕も雪だるま作りたーい!」

姉と弟は未だ積もらぬ地面の雪を見ながら明日の朝を心待ちにしている。一緒に混ざって、遊ぼうかな、そう考えていると後ろから扉の開く音がする。振り向けば仕事を終えて帰宅した法正が頭に雪を被りながら大きな袋を抱えていた。

「おかえりなさい、寒かったですよね。」

「ただいま。夜は特に冷え込みますからね、お陰で顔が痛いですよ。」

「パパおかえりなさい!」

ただいま、と駆け付けた姉を抱き抱えて頭を撫でれば、彼女は法正の髪や頬についている雪を楽しそうに触って喜んだ。そんな光景を微笑ましく眺めていると、ふとななしは椅子に置いてある大きな袋に目が行く。

「あの、その大きな荷物はもしかして?」

「ああ、見ての通りですよ。」

半透明な袋の中身を覗けばそこにはカラフルな色の包装紙と赤いリボン、所謂クリスマスプレゼントだ。

「ふふ、きっと子供達も喜びます。」

「ああ、こんな俺でもこの日位は子供に甘やかしますよ。」

「ねーねー!プレゼントは!?」

目を輝かせた弟が法正のズボンを掴んで強請れば待ってました、と言わんばかりに、しかし表情は崩さずその袋から箱を取り出す。

「ほらお前らが待ちに待ったプレゼントだ。ああ、勿論恩は大人になった時にたっぷりと……。」

「もう考直さんってば……これくらい見逃してあげて下さい……って毎年言ってるじゃないですか、何度目ですこの台詞。」

「冗談ですよ、そこまで俺も恩着せがましくない。……今はこいつらの笑顔が見れればそれでいい。」

きらびやかな大きな箱を二人に渡せば大いに飛び上がって喜んだ。

「わぁい!パパありがとう!」

「中はなんだろー!」

子供が出来てから彼も父親らしく少しだけ穏やかになり、今のこの表情も悪党とは正反対の幸せそうな顔だ。

「……何ですか、人の顔をジロジロと。」

「いいえ、とっても幸せそうだなって。」

「まぁ、否定はしませんよ。」

「良かった。あと、今夜の夕飯はとびっきり豪華ですから楽しみにしてて下さいね!」

ああ、とコートを脱いで部屋へと消えていく法正の姿を見送り、予め作っておいた料理を取りに行く。チキンにグラタン、スープにデザートと、子供達が好物なものを取り入れたクリスマスディナー。そしてななしと法正には洒落たシャンパンを用意して机に並べていく。

「おいしそー!」

「今日は二人の大好きな食べ物を沢山入れたから、いっぱい食べてね。」

うん!と目を爛々と輝かせ二人はおもちゃを抱えながら椅子に座る。

「ところで、パパからのプレゼントなんだったの?」

「えっとね、ぼくはねコレ!ドラゴンレンジャーのアクアソード!」

「わたしのは氷のプリンセスがいつも使ってるクリスタルコンパクト!」

ドラゴンレンジャーとは弟がいつも見ている人気特撮番組、法正も時々一緒に見ていたからこれを購入したのだろう。一方姉のは雪の結晶が散らばった綺麗なコンパクト、メロディが鳴ったり歌が流れたりと色々な仕掛けが施されている。

さすがは彼だ、この子達の好きな物をしっかりと把握している。そう思うだけで自然に笑みがこぼれた。

「ねぇねぇ、ママにはないの?」

「え?私のは……そうだね、きっと大人だからかなぁ。」

「えー、おとなってプレゼントもらえないの……?おとなになるのやだな。」

「そ、そんなことないよ!いい子にしていれば絶対に貰えるから!」

「じゃあママも今からいい子にすればパパからもらえるね!」

法正からのプレゼント、毎年贈られるのは勿論子供達には言えない話。それはもう嬉しいプレゼントなのだが、やはり恥ずかしい。

「うん、じゃあいい子にしていよっかなー。」

「そうですよ、いい子にしていれば、貴女にもそれ相応のプレゼントを……。」

突然の声にななしは驚かざるを得なかった、後ろを振り向けばラフな格好をした法正の姿。まさか聞いているとは思わず少しばかり焦ってしまう。

「え、あ………そ、そうですね、あはは………。」

それ相応のプレゼントは、想像以上のプレゼントになるに違いない。しまった、明日は足腰が生きている保証が殆どない。

「さ、みんな揃ったし、ご飯食べようか!」

誤魔化すように手を合わせれば、子供達も同じ様に手を合わせていただきますと揃えた。










「とても良い日になりましたね。」

ベッドで幸せそうに眠りに就く二人の子の頭を撫でてそっと微笑むななし。その傍らで彼らの寝顔を見つめては安堵に一息つく法正。

「ああ、来年も喜んでくれるといいがな。」

「きっと喜びます、二人共パパの事が大好きですから。」

そう言えば法正は口をへの字に曲げてななしの方へ視線を向ける。

「一人足りませんよ。」

「えっ…………あ、そうでしたね。」

ごめんなさい、と頭を軽く下げるとそのまま引き寄せられて彼の胸板に密着すれば、規則的な胸の鼓動が聞こえてくる。

「さて、そんな貴女にもプレゼントをあげたいのだが……どうだ。」

「…………いい子にしていました、よ。」

「なら、良し。」

首筋に指を滑らせてそのまま顎を持ち上げるとぶつかり合う目と目、それは父親の顔ではなく既に男の顔。口角を上げたかと思えばそのまま抱えられ、姫様抱っこで運ばれるは二人の寝室。ベッドに下ろされるとギシリとスプリングが音を立て、覆い被さる法正の姿はいつになく本気の目をしている。

「とっておきをくれてやる……それなりの覚悟を。」

「あの……手加減して下さいね、明日は子供達と外で遊びますから。」

「出来たら…な。」

きっと手加減しないよね、ななしは心でそう諦めつつも決して嫌ではなく、唇を塞がれると存分にその熱を求めた。冷める事のない愛を確かめ合うように舌を絡ませては互いに纏う服を脱いでは欲の共有を繰り返す。毎年訪れるクリスマスはいつになく甘く、世界で一番幸せだと感じるプレゼントだと、微睡む意識の中ななしは法正の手を握って静かに微笑んだのだった。

翌日、痛む腰を抑えながら子供達と雪合戦。法正の容赦無い雪投げに子供達もはしゃいで且つ俊敏に逃げ回るが、ななしは逃げることすら叶わず案の定雪まみれになるのだった。



(だから手加減してって言ったじゃないです………わっ!?)

(出来たらと言ったでしょう?まぁ、無性に貴女が欲しくなったので、容赦なく犯し……)

(ちょ、子供達の前では禁句です!)