「あ、今日も来てくれたんだね。」
とことこやって来るのは小さな白猫。どこから来るのかは不明だが、ここの所毎日の様に遊びに来る。
「またあの猫ですか…全く、獣に恩を売って何になる……。」
聞こえない程度に独り言を漏らす。ななしは来る度に餌をあげたり撫でたりする。
獣はそれが人間の当たり前の行為としか見ていない、と法正は考えていた。恩を売った所で何も返ってきはしない、やるだけ無意味である。
「可愛いなぁ……こうやっているだけで癒しになります。」
「癒し、ね……。」
「法正さんは動物好きですか?」
動物という単体の存在で言うならば好きでも嫌いでもない、相手が何かをするのであれば別なだけだ。
法正はすっと目を細め、無言で猫を見下ろす。ななしもその視線を追うと、何を思ったのかその猫を差し出してきた。
「撫でますか?」
「……いえ、結構ですよ。俺はあまり好きではありませんので。」
嘘を付けば彼女は犬派でした?と残念そうにもう一度猫を膝に置き撫で始める。その撫でる行為はどこか無性に苛立ちを覚える。ななしになのか、猫になのか、自分でも分からない。
「…………。」
ひょい、と猫が法正の膝に乗っかり、思わずぎょっとする。
「あ…もしかして気に入ったのかもしれませんよ。」
「…………。」
猫は丸くなりその場から動かなくなった。どうやら眠りについてしまったらしい。退かすわけにもいかないので法正は小さくため息をついて布を上から掛ける。
「この猫は恩を返してくれますかね。」
「ふふ、かもしれません。」
だといいがな、と眠るその姿を見つめていれば、隣でクスリと声が聞こえた。視線を向ければ微笑むななし、僅かながら眉を顰める。
「この猫を見てると、羨ましいです。」
「……?」
その言葉に首をひねる。羨ましいとは何の事だ、と思えば膝に置かれるななしの手。
「何も考えずにこういう風に出来ますから。」
「ああ…やきもち、ですか。」
ななしははっとなり、頬を染めて目を逸らす。
ついさっきまで俺も思っていた感情は嫉妬だったのか、猫にするとはなんともらしくない。
「その台詞、そっくりそのまま貴女に返しますよ。」
彼女は意外だと驚いた目をする。それを肯定する様に寄せて軽く口付けすれば更に顔を真っ赤にした。
「あ……。」
「そうですね、明日にでも実践しますか……膝枕を。」
獣と戯れるのも悪くはないか。
(どっちがどうやるんですか…?)
(勿論どちらもやりましょう)