「本当に、桜が綺麗です。」
庭から見える満開の桜に思わず見惚れる。空を見れば満月、まさに幻想的な風景とはこの事であろう。持ってきた酒を注いで嗜めば、すぐにほろ酔いな気分になる。
「桜、か。俺には合わないな。」
隣で杯を飲み干す男が呟く。
そうでしょうか、と言えばそうだ、と低い声で返し彼は酒を注ぎ足した。
「俺より貴女の方が似合いますよ。」
足した杯を置いてふらりと立ち上がり、何気なく手を差し伸ばす彼。意味が分からずきょとんとするがそのまま手を掴まれ私も立ち上がる。
繋いだまま近くまで寄ってみれば、散る花弁が風と共に踊る。雨のように降り注ぐかのようで壮大で美しい。そしてどこか儚さも感じる。
「…ならば、弱い私はいずれ散ってしまう運命なのでしょうか。」
か細く独り言を呟けば彼はそれに答えて
「桜は散ってもまた咲くだろう。
貴女もそれと同じです、どんなに苦境に立たされても何度でも咲き帰る。誰よりも強いと思いますよ。」
空を見仰ぎ、桜より遠くを見据える彼の姿はどこか悲しげに見える。私は微笑み両手で握り返す。
「ならば法正殿も強いと思います。こうして私が不自由無く暮らせるのも貴方が守ってくれてるおかげですので。」
「…俺に守るものが出来るとは、ね。」
「来年も二人で見ましょう。私は何時までもこの桜の様に咲き誇って、貴方を想ってます。」
そうだな、と彼は先とは違う表情を浮かべ、私の肩をそっと抱き寄せた。