「あの………法正、さん。」
「……………なんだ。」
ふらりとやって来て隣に座る法正から酒の匂いがする、どうやら宴会で結構飲まされたようだ。彼は酒にそれ程強くない、軽く一杯で十分なのだが。
「お水、飲みますか?」
「……いいえ、結構ですよ。」
ほんのりと顔が赤く、普段の彼とは違う一面を見ている。
「全く、加減という物を知らないんですかね。」
「皆お酒大好きですからね、私は全く飲めませんからいても邪魔なだけですが。」
張り詰めたように冷たい空気は今の酔った彼には丁度いい気温だ。暫くすれば冷めてくるだろう、そう思っていると温かい何かが手に触れた。
「法正さん?」
「……冷たいな。」
大分外に出ていたからだろう、私は手だけでなく全身がすっかり冷えてしまっている。法正は手をゆっくりと擦り火照った熱を分ける。
「……今の俺はむしろ熱い、良ければくれませんか。」
「私は寒くて熱が欲しかったですから、いいですよ。」
そう言うと大きな手に包まれる。手だけしか温まっていない筈なのに、まるで全身が包まれて温まるような気分だ。色んな意味でこちらが酔ってしまう。
「貴女といる時が一番心が落ち着きますよ。」
「え……?」
「ああ、きっと俺が唯一心を開ける人なんでしょうね……。」
いつもより更に低い声で呟く為、何を言っているのか聞き取れなかった。それでも彼は満足そうに口角を上げて笑う。酔いがそうさせてるのか何なのか、彼女は首を傾げた。
「ああ失礼、独り言です。別に頭がおかしくなった訳ではないので、安心して下さい。」
「いえ、酔っていますから気分が上がるのは分かります。」
大丈夫と微笑めば彼はすっと目を細め、
「酒の酔いはほぼ醒めましたよ、その代わりに……。」
顎を軽く掴まれ法正の方を見る体勢になる、そして彼女の耳元まで顔を寄せた。
「今度は貴女に酔っているんです。」
私は嬉しいのか恥ずかしいのか、兎に角酒を大量に飲んだが如く顔を真っ赤にした。