法正5
「……あ。」
縁側で法正が珍しく昼寝をしている。起こさない様足音を殺し、側まで寄ると整った寝息が聞こえてきた。どうやら浅くはなさそうだ。
「…………。」
本が置いてあるという事は、先程まで読んでいたのだろう。しかし寝ても色気が半端無い、いつもの仕返しとしてなにか出来ないだろうか。例えば筆で落書き、いや、後の報復が怖いのでやめておこう。
ならば自分から普段しない様な事をしてみよう、手を握る事や頬に触れる事、それなら後も怖くはない。
「…………。」
運良く手袋ではなく素手、顔を伺いつつ触れれば思っているよりひんやりと冷たかった。
では次は頬はどうだろうか、彼から撫でる事が多いので少しばかり気持ちが高ぶる。
「………(すべすべ)。」
しかし、そこで調子に乗って撫でたのがいけなかった。撫でる手は呆気無く掴まれる。
「わっ!」
「そんなに俺に興味があるんですか。」
もう片方の手で彼女の頬をつまむ。
「……すいません。」
起こされたのにも関わらず機嫌はいつも以上に良かった。逆にそれが恐怖の前兆でもあるのだが。
「俺は別に構いませんよ?その後に覚悟があるかないか、それだけの話ですから。」
「申し訳ありませんもうやりませんので見逃していただけませんか。」
「まだ一つ、してないことがなある筈だが?」
一つ?特に考えてもいなかったのだが、法正は彼女の顎を軽く持ち上げ、唇に親指を当てる。
「ええ、是非お望みしますよ……貴女からの接吻を。」
その言葉を聞いた瞬間に、彼にちょっかいを出す事は止めようと心に誓った。