「法正様が満面の笑みで笑ったらどうなるんでしょう。」
「さぁ、俺も分かりません。」
何気なく目の前の本人に疑問をぶつけてみた。悪党面である故悪辣な笑みを普段浮かべている、これから爽やかな笑みが想像つかない。
「そういう笑顔浮かべたことないんですか?」
「俺がそんな気味の悪い笑顔浮かべてみたら……引きませんか、普通。」
実際見てみたい気もする、死ぬまでで一度でもいいから絶対にしない様な事をしてほしい。
「もしかしたら意外と高評価かもしれませんよ?どうです、この機に一度だけ。」
手を合わせ懇願するも彼は首を横に振った。
「そんなに俺の笑顔が見たいんですか……だが、それは叶わぬ願いだ。」
頑なに断る法正にしゅんと肩を落とす。
だが、と彼は言葉を加えて
「俺としては貴女の笑顔を見たいんですが。」
軽く指を立てて不敵な笑みを浮かべた。
「わ……私ですか?……結構笑ってるつもりなんですが…。」
頬に触れて口の端を指で上げたり下げたり。
「それは皆に対して笑っているんでしょう。そういった意味ではなく……。」
顔が近づき耳のすぐ横にまで寄せる。
「俺だけに、特別な笑顔が欲しいんですよ……。」
俺だけ、その言葉に顔を真っ赤にし身体が石の様に硬直してしまう。追い打ちをかける様に腰に手を回し距離は一気に縮まった。
あまりの素早さに頭も体も追い付いていけない。
「ほ、法正様!?」
「俺の笑顔なんかより余程価値がある……。では、それを拝む為にたっぷりと堪能しましょうか。」
なすがまま部屋に連れられ、そのまま朝まで出ることはなかった。
皆の話によると部屋から聞こえたのは甘美な女の声だとかなんとか。
(笑顔を見たかったんじゃなかったのですか!!)
(俺としてはよく見れたと思うんですが)