「え、どうして分かったんだい…?」
誰がどう見ても疲弊しきった表情、ふらりと足も覚束なく今にも倒れそうだ。
思わず身体を支えたくなるが、彼は無理に笑みを浮かべる。
「はは……最近任務が多くてね、夜が明けるくらいまで策を練ってしまうんだ。俺とした事がついつい悪い癖だ。」
「あまり無理はしないで下さい…貴方が倒れてしまったら……。」
眉尻を下げて心配そうな瞳で見つめれば、彼は優しく頭を撫でた。
「君にまで心配かけてすまない、でも…
もう少しで終わるから。」
「徐庶さん……。」
その手が離されると軽く頭を下げそのまま部屋に入っていく。手が離れていくのが名残惜しい、そう思ってその姿を見送ったがどうしても不安になってしまう自分。
様子だけでも見ようと、扉をそっと開ければ机の上で彼の項垂れる姿が見えた。
「徐庶、さん……?」
名を呼ぶが返事がない、嫌な予感がしてそのまま部屋に足を踏み入れた。
しかし直ぐ側まで寄れば寝息を立てて眠りにつく彼。予感が外れてほっと胸を撫で下ろすと彼は唇を僅かに動かし何かを呟く。
「…………。」
「私の…名前?」
口元まで耳を傾けると己の名前を呼んでいるのが分かった。何故自分の名前を呼んでいるのだろう、夢でも見ているのだろうか。
とりあえず気持ちよさそうに寝ているので、側にあった布をそっと掛ける。
膝を立て出ようとしたその時、不意に腕を掴まれた。
「……!」
「あ…行かないで……くれ……。」
その言葉にはっと振り向くが当の本人は寝ぼけているのだろう、薄っすらと目を開けたり閉じたり。
彼女は微笑んでその手を取り、優しく握り返すと彼もまた安心した顔で微笑んだ。
「暫くはいますから、だからゆっくり休んでください。」
先と同じく頭をゆっくり撫でるとふわふわとした髪質でこちらも心地良い。
そして自分も次第にうつらと舟を漕ぎ、彼が起こすまでの間眠りへと誘われていくのだった。
(良かった…夢じゃなかったんだね)
(側にいてくれて、ありがとう)