法正27
「………はっ、法正さんの服と武器が変わってます!?」
最近何やら忙しいと顔を見せる機会が少なかったと思いきや、突然彼は何処か満足気に私の目の前に聳え立った。その姿は以前と変わらず凛々しく、そしてその右手に持つ刃が鈍く光るのを見逃さなかった。
「ええ、年が新しくなると同時に色々新調しました。最近ろくに顔を見せなかったのはその所為です。」
「そうなんでしたね。ちょっと驚きましたが……その首飾りもとっても綺麗です。」
「ああ、そういえば古い方は机の引き出しに……後で持ってきましょう。貴女にあげますよ。」
「えっ、いいんですか?思い入れの深い品物では……。」
「それほど物に執着しませんよ、俺は。他に夢中なものでね。」
鋭い目線が明らかにこちらに向けられているのが分かる。とりあえず微笑みを返せば、嬉しそうにその目は細められた。
「その刀は……?」
「ああ、まだ戦では使った事はないが、変わった刀だろう?」
「すごい……今までが布だったので、その……なんというか……。」
「まぁ、言いたい事は分からなくはないな。あれからこれだと果てしなく見慣れないでしょう。俺もそうでしたから。」
「でも、格好良いです。法正さんならすぐに使いこなせそうですね。」
眩いその切っ先を静かに見つめてると、法正はそれを隠すように後ろに引っ込めた。
「あんまり見ない方がいいですよ。貴女には似合わない物かと。」
とん、硬い靴音が鳴ったかと思えば、法正の手先が顎に触れて、そのまま攫われていく。唇が触れそうになる寸前で法正は口角を緩く吊り上げた。
「これなら、前よりずっと貴女を守れそうですよ。どんな物からも、ねえ。」
法正にはその刃は既に真っ赤に見えていた。愛する者を守る為ならば、布よりも綺麗な朱色が染まりそうだと、あらゆる報恩報復がより捗りそうだと小さく嗤った。純粋な彼女には知る由もないが、今はまだそれでいい。
「しかし、久しく顔を見ていないと歯止めがきかないな。今すぐにその唇を奪ってしまいたくなる。」
「え、あ、その………。」
「いいでしょう?言って貴女もそういう顔、してますよ。」
そう言って法正は開いた彼女の唇を深く塞いで、そのまま華奢な身体を引き寄せて強く閉じ込めた。暫く言葉を交わすこともなく、時折洩れる息遣いだけがその場を支配していく。
此処が部屋の外だと知ってながらも、己の理性がそれに勝らなかった。早く自分の姿を見せなければと急かすその心は昔の俺が見たらどんな顔をするだろうか。人を本気で愛した事のなかった乾いた心は、誰一人寄せ付けなかった筈なのに、いつから、俺は、彼女に。
「ほうせ、さん。」
彼女の拙い言葉ではっと我に返れば、とろんと蕩けさせた瞳が更に脆くなった理性を削り取っていく。心臓が煩い位に波打ってる、ここまで来たら後戻りは出来ないだろう。
「………、あまり汚す気はなかったんだが……覚悟してくださいよ。
遠い昔の、忘れられない恩返しだ。」
今年も、何かと惚気ける一年になりそうだな。