「法正さん、手を貸してくれませんか?」
「ああ、今度は一体何を企んでいるんですか。」
失礼な、と顰めっ面をすれば彼は渋々手を差し出す。今度は嬉しそうにその手を握れば何を思ってかじっと動かなくなる。
「何がしたいのかが分からないんですが。」
「冷たいです、法正さんの手。」
「それが何か?」
「知らないんですか?手が冷たい人は心が温かいんですよ。逆に手が温かいのは心が冷たいんです。」
成る程な、と言いつつどこか興味無さそうに頷く法正。
「ですが、そんなの迷信に決まっているじゃないですか。仮にそうだとしても、俺が温かい心の持つ人間に見えますか?」
「確かに法正さんは悪党で性悪という噂は聞きますが、それが全てではないでしょう?人間である以上情というものが必ず一つはあるものです。恩返しだってそうだと思いますよ。」
ずいっと迫る様に声を上げるななし、そんな姿に思わず苦笑いをする。
「情、ね。確かに恩返しは度々しますが……。それは心から思いやって行動する物だとは今の地点では思ってません。やって来たから返す、それだけなんです。」
「では、私への恩返しもそうなんですか…。」
曇る顔で法正の手を見つめる。
「……そうかもしれませんね。」
素っ気なく返事をし、その手をするりと抜けて法正は徐に立ち上がる。見下ろせば彼女は何も言わないが更に表情に影が走る。少々苛め過ぎたか、泣かれても困るのでそろそろ本音を告げる事にした。
「……冗談ですよ。貴女は他の人とは違う、純粋に俺を助けているのが分かりますよ。そうなれば俺だって本気で恩返しします、心から思いやって、ね。」
「やっぱり法正さんは、冷たいです。」
「……ええ、俺は冷たい人間です。」
「それでも、私はそんな貴方が大好きです。」
思いもしない答えに目を丸くする、ななしも立ち上がると再び法正の手を握り締める。
「俺を好いて後悔しないんですか?」
「後悔する位なら最初から好きになっていませんから。」
そう言って初めて彼女から口付けを施した。今日は珍しい程に積極的だ、離れていく唇を惜しみつつも法正は口角を上げて不敵に笑った。
「安心して下さい、夜はお互い熱くなると思いますよ。」
今度は法正が額に口付けを落とし離さないように指を絡ませた。
(そんな貴女の手も氷の様に冷たい)