法正の膝でうとうと目を擦る一人の少女。
「眠いなら寝床用意しますよ。」
「いえ、もう少しこのままで…。」
なかなか終わらない執務で度々睡魔が襲ってきてしまう。案外早く済むかと思っていたのだがそうは行かず。
「今日は随分甘ったれだな。」
「それは……。」
法正さんが誘ったから、そんな冗談を言いかけた口元を押さえる。執務しているとは言えその行動を当然逃さず、彼はすっと目を細める。
「どうやらなにか言いたげ、だが。」
「いえ、何でも…ありません。」
頬を染め彼から目を逸らす様に顔を伏せる。
するりと服の中に手を忍び込ませれば、何事かと驚いて目を見張った。退くにも身体は彼に預けている為動く事すら出来ない。
「あ…っ、や…何を…!」
「俺に何かあるなら…はっきりと。」
眠気はすっかり覚め、身を捩って抵抗するも長らく同じ体勢だったので法正にされるがまま。そして手は太腿までゆっくりと這って行く。
「駄目…、まだ……。」
「まだ……では夜ならいいと。まぁ、そうご所望なら俺はそれでも構わないんですがね。」
何も無かったかの如くその手を退いて執務を再開すれば、何処か名残惜しそうな表情で見つめてくるのが目に入る。どうにも分かり易い、口を弧に描き
「本当は早く欲しいんじゃないんですか?」
と、耳元で低く囁けばびくりとその身体を震わせた。
「言わないで…くだ、さ…。」
「口ではそう言っても身体は素直だが…それでも否定しますか。何処まで耐えられるか…見物だ。」
筆を置いて指を下へ下へと這わせて敏感な所を擽っていく。甘い声が次第に大きくなれば、どうやら快楽も近い。法正は聞き逃すことなく彼女が求める所へ近付いて行く。
「とは言え、もう限界だろうな…その状態だと。」
「っ……ほぅ、せ…さっ……!」
「ああ、此処がいいんだろう…?」
望み通りに指で解けば彼女は彼の背中に思い切り爪を立てた。衣服の上からとは言え結構な痛みが走る。
「指を喰い千切るほど、そんなに良かったんですか…。」
「あ……ご…ごめん、なさ…。」
その手を引っ込めようとするが、止めることなく継続したなら当然再び背中に爪が立つ。
「や、待って…!早い…!」
「これでも貴女に合わせてるんですが……ああ、気付かぬ内に早まってたのか、これは失礼。」
そうは言っても止める様子は全く無く、寧ろ満足そうに探っていく。頭が未だに点滅を繰り返すがそんな事お構いなし、声を出さずにはいられなかった。
そこでふいに戸を叩く音。法正は軽く舌打ちし、不服そうにその手を止めた。火照るななしの息は上がり、肩が上下に揺れる。
「誰だ。」
「あの……書類をお持ちしたのですが。」
今この時に入られたら羞恥でどうにかなってしまう。全力で首を振ったにも関わらず彼は何を思ってか止めていたその手を動かし始めた。
「ん…!?」
「声を出せば、分かりますよね。」
何という鬼畜さ、扉越しとは言え目の前に人がいるのだ。こんな声を漏らせばすぐに分かってしまうのに。
そんな緊張感を逆手に彼は楽しんでいるのだろうか、と必死に口を押さえる。
「あの…入ってもよろしいでしょうか。」
「それは急ぎか?」
「……っ、……!」
「いえ、もし御取り込み中でしたら時間を改めますが…。」
早くいなくなって欲しい、快楽と羞恥の狭間で目をぎゅっと瞑って唇を噛み締めた。
「なら、そうしてくれますか。…ああ…それから、暫く人が来ないよう皆に伝えといて下さい。」
分かりました、と男は引き返して足音が遠のいて行く。しかし安堵は一向にやって来ない。
「唇に傷がついたらどうする…。」
「誰の…っ、所為です、か…!」
「しかし…人がいると感じるのか、これはまた随分と…。」
その口を押さえ込めば喉仏が動くのが分かった。やはり彼は愉しんでいる。
「安心して下さい。もう此処に人は来ないと思いますので、存分に声出してもらって構いませんよ。」
「そういう問題では…!」
言葉を遮る様に今度は強めに弾けば身体が跳ね上がり、腕に力がこもる。
「あっ……。」
「俺がこんな所で満足するように、貴女は見えますか…。どうせなら最後まで行きたい…そうでしょう?」
ななしの頭を己の胸に抱き寄せて呟けば、顔のみならず耳まで赤くして押し黙ってしまった。
本当に分り易く故に愛おしい、法正はその顔を上げては優しく口付けを交わした。
(貴女といる時が俺の安らぎ)