強気少女の決闘

凛とした少女は、悪党を一番好まない。彼と出会ってからそうだった。

「貴方の様なやり方は好きになれません。」

「別に貴女に好いてもらわず結構です。俺が決めた曲げられぬ信条ですので。」

「その態度が本当に苛立ちます。」

こんな風景を皆は何度も見ている。また法正とななしが性懲りも無く対立している、いつもの事だとあまり気にすることは無い。
しかし、言葉の喧嘩で終わる筈の二人が互いに武器を取り合ったのだ。彼女が一方的にそうさせたのだが。

「今日こそ滅多打ちに成敗してくれるわ!そうすれば少しはひん曲がった性格が変わるんじゃない!?」

小柄な少女に似合わぬ大きな刀を取り出せば、呆れる様に法正もまた布を取り出す。

「仮にも女なんですから、言葉くらいきちんと選んだらどうですか…嫁入り前に。」

「貴方に言われる筋合いは微塵たりともないわ!この極悪非道軍師!!」

罵声を浴びせる様に大いに刀を振りかざせば彼はそれを難なく見切り避ける。続けて足を狙い横に回せばふわりと浮いて相手との距離を取った。
彼からすれば端から戦う気など無いのだ。

「逃げてないで向かって来なさいよ!その布を真っ二つに斬り落としてやる!」

「やれやれ……威勢は良いのは認めますよ。」

息を切らすことなく飄々とする姿、それが癪が障ったのか憤怒の目をぎらつかせる。

「ひざまずかせなきゃ気が済まないわ…!」

足に渾身の力を込めて走り距離を縮めようとした瞬間、不覚にも足首を曲げて身体がふらつく。

「きゃっ……!」

地面に倒れ込む、そう判断したななしは目を瞑った。


しかし痛みは襲う事なく、柔らかい何かに包まれる。思わず閉じた目を開けるとそこには布を伸張させ身体を支える法正の姿。

「……危なっかしいな。」

「な、な、何を…!!」

「ああ、別に恩はいりませんよ。どうせ貴女も俺みたいな悪党に恩返しなんか死んでもしたくないでしょうから。」

ぎりっと、何か悔しがる表情で彼を睨む。しかし、先の様な憎む目付きでは無いのは気のせいなのか。

「どうせならその動く腕を振るって今すぐに俺の首を跳ね飛ばしますか。恩を仇で返すのも構いませんが…ね。」

その言葉に思わず背中がぞくりとした。首を跳ねる気は元より最初から無いが、何かをしでかせば何かが起こる。

「…………今回は、見逃す!次はないから!」

足を引きずってその場から去ろうとするが、法正は渋々その手を己の肩に回した。

「……!」

「後から悪化されて文句言われても困りますので。」

唇を噛みつつも、素直に従う。
それを見て彼は彼女の本心を少しだけ見抜けた様な気がした。彼女もまた彼への考えを少しだけだが変えようとしたのであった。



(どうせ…あれも信条って奴よ…特別な意味なんて…ない……ない!!)

(ああ、果たしてどうでしょうね)