「いつも思っていたんですが…その布、伸張性あるんですか?」
法正が戦に行く際よく見る連結布。正四角形や長方形等、様々な長さに変化するのだ。
「これですか?そうですね、様々な長さになるのは事実ですが。それがどうかしましたか?」
腰にかけてる布に目線を移し、是非とも触りたい、と言ったら彼はどうぞ、と触れる事を許してくれた。
手に取って色々と確かめるが、なんの変哲も無い布、せいぜい分かるのはそこらにある布とは質が大きく違う事位だ。
滑らかでとても敵を殺す様な武器には見えない。
「これで人を殺める事が出来るんですか?」
「ええ、勿論です。まぁ、刃を使用する者にとっては疑念を抱くような武器でしょうが。」
「私は武器を所持しない人間なのですが、やはり色々と気になるのです。それだけでなく、布に巻かれた瞬間人が消えたりもすると聞いたのですが、それ、本当ですか…。」
法正は顎に手を添えて何かを考える。その姿に彼女は首を傾げると、そうだ、と一言。
「なら、今ここで俺を消してあげましょうか?」
「…はい?」
思いもしなかった発言にななしは目を丸くする。しかし次の瞬間布が法正の周りをくるりと螺旋状に周り、
「嘘…!」
今そこにいた筈の彼がすっかり姿を無くしたのだ。只々驚くばかりで、きょろきょろとすると後ろから声が。
「どうです、これが事実ですが。」
ばっと後ろを振り向けば笑みを浮かべた彼がいた。
「一体どうなってるんですか!?さっきまで目の前にいたじゃないですか、なのに布に巻かれた瞬間…。」
分からない、と頭を抱えるななしに対して、目を細めくつくつと笑う法正。
「いつか仕掛けを見抜ける日、楽しみにしてますよ。まぁ、貴女の頭で見抜けるかどうか…。」
「もう…そうやってまた!…いいですよ、どうせ私は一生才能なく過ごすんでしょうから。」
小馬鹿にされてつい不貞腐れる、これは彼の普段からの悪い癖だが。
「冗談、才能なんてなくていいですよ。」
再び連結布を纏ってその場から消える。
先と同じ手は効かない、と咄嗟に後ろを見るがまるっきし姿が見当たらない。
が、途端に前方から腕を引かれ、朱い布に包まれた。
「わ…!?」
「見事に引っかかったな。」
なすがままくるりと一回転すれば、そのまま顎を上げられ口付けされた。
「……!?」
唇が離れると、ななしは顔を真っ赤にしてわなわなと震える。そんな姿が面白かったのか
「接吻は俺が初めてだったか。」
と、わざとらしく言えば、案の定彼女は俯いてしまった。
「…知っているくせに、私が貴方を好いている事くらい。」
「知っていますとも、あれだけ寄ってこられれば。」
「……寄らない方が良かったですか?」
「そうだったらとっくに追い払ってますよ。」
そう言うとななしの頭を撫でる。内心ほっとするななしだが先程の接吻が頭から離れず、心臓は高鳴りっぱなしだ。それに気付いたのか、至近距離まで詰め寄り壁に追い込んだ。壁に手をついて逃げ場を無くす。
「え……?」
「本当は俺を知りたいんだろ?
だから、今から教えてやる…嫌という程にな。勿論、拒否なんてさせないから覚悟するんだな。」
「え…あの、大丈夫です!今日は布について知る事が出来たので後日……!」
虚しくもその声は届かず、そのまま部屋に連行されるななしなのであった。
(俺だってお前をよく知りたい)