「ああ、漸く終わった。」
珍しく仕事が早く片付いたので、うんと背伸びをした法正は帰る支度をした。会社を出れば無意識に歩幅が大きくなり足は急ぐ。辿り着くは恋人が待つマンション。
「ただい……。」
言い終わる前に彼女に思い切り抱き締められた。
「おかえりなさい、孝直さん。」
すり、と寄せられる頭をそっと撫でればななしは嬉しそうに笑う。
「今日は早かったですね、お風呂湧いていますよ。」
「ああ、なら先に風呂入る。」
分かりました、と頷いて離れると、背中を向けて風呂場へと駆けて行く。何処か嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか、その姿を追って法正も風呂場へと向かった。
ネクタイを緩めてシャツのボタンを外せば一式用意した彼女は目のやり場に困ったのか横に逸らした。
「じゃあこれ、此処に置いておきますから……どうぞごゆっくり。」
そう言って出ようとするななしを止めたのは言うまでもない。細い手首を掴めばぴくりと肩が上がった。
「……えっと…何でしょう、か。」
「貴女が想像している通りです。」
「ほ、本当に、なんの事ですか。」
振り払おうと振り回す手を押さえつけ器用に素早くネクタイで縛り上げる。動かせばぎりぎりと締まりが良くなり、一層両手首に絡んだ。
「孝直さん……!」
「そんな上目遣いをされて大人しくしている男はいませんよ。さっさと観念しろ。」
「嫌です!今日だけは本当に駄目なんですって!」
「じゃあ何故ここまで来たんです、それはもう嬉しそうに。風呂の用意なら俺一人でも出来るだろう。必然的に入って来た貴女が悪い。」
ボタンを一つ一つゆっくりと開けて、スカートをするりと床に落とせば白い肌が目一杯に入り込む。ネクタイで縛っている為に半端な脱ぎ方をさせたが、それでも殆どが明るい光の下で曝け出されていた。身を捩りながら懸命に抵抗を続ける彼女の腰部分に唇を押し付ければ震える振動が伝わる。
「それでも身体は素直だな。」
「う………。」
そのまま風呂場へと引き摺り込んで椅子に座らせる。ネクタイは未だ縛ったまま自由を拘束していた。
「待って………寝る時ならいいから……。」
「それまで待てない。」
耳元で低く愉しく囁き、程良く膨らむ双丘を手で揉み解した。
「あっ………!!」
「俺をたっぷり愉しませてください、貴女のその乱れる嬌声で鼓膜を劈く程に。」
「ひぁ……っ!ああ、駄目ぇ!」
「駄目か、それは良かった。」
嬉しそうに舌を中に侵入させる法正の頭を何とか掴み、引き剥がそうと奮闘するななし。そんな努力も虚しく嬉しそうに脚はがくがくと震え出し、押し寄せる快感に頭がおかしくなっていくばかり。
半端に捲れた服はすっかり液まみれで役に立たなくなっていた。
法正はシャワーを一捻り、温かい湯が二人の身体に降り注ぐ。一度水に滴れば普段の何倍もの色気を魅せる、それが彼女の心を酷く燻らせた。
「あんなになるまで吹くとはな、そんなに気持ちいいのか。」
「うぅ……言わない、で…くださ……っああぁ!!!」
長い中指が一気に奥に入っていき、先程逝ったばかりの身体は魚のように飛び跳ねてしまう。そして透明な液は彼の指にねっとり絡まり、それを法正は己の唇に塗り付けて一舐め。
「イッたばかりは随分と敏感のようで……。」
「も……許し、て……。」
「許す……ね。そうは言うもの、別に俺は貴女を戒めてる訳じゃありませんから。」
態とらしくコテンと首を傾げて笑う。ななしは羞恥に堪えつつ軽く睨みを利かせるが、こんな行為を前にしてしまえば呆気無く表情も崩れて溺れていってしまう。
再び顔を近付けて態とらしく音を立てればそれに反応してビクビクと痙攣を起こした。シャワーの湯と共に流れていく液。
「………物欲しそうに強請っている姿、ぞくぞくしますよ。」
「ん、はぁ………っ…やだ、我慢、できな…い…!」
「……っは、本音が漏れていますね。」
法正自身も分かる位に反り上がる己は大きく熱を帯びていた。涙を流しながらそれを希うあられもない姿は普段では考えられない程に背徳だ。そうさせたのは自分だと分かっているつもりだが、それでも止める事は出来ない。
先端を焦らしながら宛てがうと、彼女は自分の腰を緩く動かし始めた。
「いや……、はやく…っ!」
「………っ、随分と積極的だな。先まで散々嫌がっていたのに。そんなに欲しいのなら、おねだりしてみろ。」
「………っ、ん……ぅ………。」
口に出すのが恥ずかしいのか、噤んで顔を真っ赤にした。
「ほら、いらないならもう終わりますよ。」
「……っい、や……!……くだ、さ……!」
「駄目ですよ、そんな曖昧な言い方じゃあ。」
「………孝、直の…くださ……い……お願……いしま、す……っ!」
途切れ途切れに希う姿が何とも愛おしい。そう内心喜びつつも顔には出さず太ももを掴み、一息おいてずぶりとそれを突き入れた。
「っ、んぁあ…っ!」
「ああ、相変わらずキツいですね……。」
案の定中は狭まった状態、ぎちぎちと狭い道を通り奥まで挿れていく。その度に聞こえる悲痛を唇で塞いで紛らわせる。
「あっ……ぁ…!ん、それ……きもち、い…ですっ!」
「……漸く素直になったか、どうせならもっと喘いでもいいんですよ。」
がつん、と打ち付ければ嬉しい悲鳴を上げる。よがる所を見つければ徹底的に擦り、欲張る甘ったるい声が逐一響き渡った。
「あっ、………だ、め……っ、それ………いっ、ちゃ……!!」
「またイクのか、随分と早いですね。」
「………ーーっ、あぁ!!」
手の自由が利かないななしは背を逸らして足をピンと伸ばす。だらしなく涎を垂らして余韻に浸る姿を法正は満足そうにまじまじと見た。
「これは眼福、尚更気持ちが昂ぶってきますね。」
「も……無理……で、す…。」
「まだ、一回目ですよ……?」
未だ熱を含んだそれは彼女の中で膨張していた。ななしは必死に首を振るがそんなのはお構いなし。
「たっぷりと、愉しませろ。」
「ん………っ………。」
あれからどれだけ時間が経ったのだろう、と彼女は虚ろな目を彼に向けた。余裕の笑みを浮かべながら打ち付けた腰は疲れなど全く知らない。
「ああ、逆上せたか。」
「…………も、あつ……い……お願いだから解いてください……。」
渋々頷いて彼女の手首を自由にした。擦れた跡が赤くひりひりと湯に染み、彼女は僅かに眉間に皺を寄せる。
「………折角、用意したのに。」
「………何をです。」
意味深な事を呟くななしの身体を後ろから支えながら肩に顎を乗っける。
「今日、何の日か分かりますか……?」
「………………。」
ななしや俺の誕生日ではない、記念日か何かだろうか。頭をぐるりと巡らせて端から端まで答えを探してみる。
「…………ああ、成程。」
理解した法正はぐったりした彼女を抱き抱えて脱衣場に運ぶ。タオルで全身を拭き、リビングまで行くとそこにはいつもと違う食卓。まだ作り途中であっただろう品もキッチンに置きっぱなしだ。
「すっかり冷めてしまったか。」
「孝直さんが全然離さないからです……!今日は一年目だから頑張ったのに……。」
悪い、と頭を撫でる。泣きそうな顔で見つめる姿は子供のようで。
「でも気持ち良がっていただろう。」
「…………馬鹿!」
内心否定しきれない自分がいた事にも腹を立てたが、それでも嫌いにはなれない。嬉しそうに見つめ返す法正が愛おしかったのだ。
仕方なくななしは彼の頬に軽く口づけをして笑った。
(来年は絶対にご飯が先ですので)
(それはご飯が終わってからの風呂なら良い、という解釈で間違ってませんよね)