「太った……!」
恐る恐る体重計に乗れば何と言うことか、その矢印が示す先がとんでもない場所だった。思わず爪先を伸ばしてみたが当然変わりようのない事実。
「ダイエット………しなければ。」
決意を胸にしてその翌日、空腹に耐えつつ朝はバナナと牛乳と軽い食事で済ませる。それを怪訝そうに見るのは恋人の法正。
「………なんだ、ご飯大盛りで行く様な貴女が少食など随分と珍しい。」
「き、今日はあんまり食欲がないんです……。」
「それは心配ですね、休んだ方がいいのでは。」
「いえいえ!全然平気ですよ、身体はこの通り…………この通り。」
腕を上げると揺れる二の腕が気になり、動きを鈍くして笑い誤魔化す。
「…………正直に言ってみろ、何があった。」
彼が疑わしく目を細めて言う時は必ず逃れる事が出来ない。何でも無いと言い張ろうが力づくでも聞き出すのが法正という男のやり方なのだ。周りから悪党等と呼ばれる意味をその時十分に理解したのを思い出し、背中が寒くなった。
指でトントン、と規則的に机を叩くのが更に怖さを引き立たせる。
「……………ダイエット……………です。」
「…………は?」
「ですから………っ、ダイエットしてるんです……。昨日体重計に乗ったら、凄く増えていて………。」
「何処がどう太ったと言うんです。」
ななしは顔を真っ赤にしながら二の腕と腹、太腿に指を差す。すると法正は気の抜けた表情でコーヒーを飲んだ。
「俺から見て何ら変わりは無いと思うんですが。」
「そんな事ありません!私には分かるんです……僅かな重さでも。」
そう言えば何かを考える様に黙りこむ法正、暫く見つめていたが一向に話し掛けてこない。気まずくなり飲み物をおかわりしようと冷蔵庫に向かったが。
「ななし。」
不意に腕を引かれて法正の方へ倒れ込む。思わずコップを落としそうになったが、彼はそれを上手く手に取って支えた。見上げれば何か企んでいる様な笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。
「ここか?」
服の隙間から手を滑り入れて腹の部分を思い切り摘まんだ。驚きのあまり身体は即座に反応を示す。
「なっ!何するんですか…!」
「ああ、確かに肉が増えたかもしれませんね。」
「…………っ、言わないで下さいよー!」
すると次第に上ってくる骨張った冷たい手。擽ったさと冷感がその身体を支配し、ぞくりと震わせてはななしの身をくねらせ捩らせる。それでも力に叶う筈もなく、胸辺りにがっちりと置かれた。
「ここも増えました?」
「あ…っ……そっ、そんなの……っ分かりません………っ!」
下着越しにやんわりと揉まれ、変な声を漏らしてしまう。唇を噛んで行為に耐え切ろうと奮闘するが、そんな抵抗を屈服させたくなるのがこの悪党。
態とらしく強弱をつけて愛撫し、下着をずらして敏感な場所を指で押した。
「やっ………っ、だ……ぁ…!」
「おかしいですね、反応して張っているのに。」
朝から何盛っているんだ、と訴えたい気持ちだったが、いざ快楽を前にするとそんな気も何処かへ消し飛んでしまう。
「兎に角、痩せる事はない。寧ろ今の貴女が痩せたら骨と皮という言葉がお似合いになる。」
漸く手が離れ解放されると、息絶え絶えに涼しい顔した彼を見つめる。心の何処かで求めている、なんて言ってしまえば本当にやりかねない。誤魔化すようにななしは立ち上がって再び冷蔵庫の方へ向かった。
「骨と皮になんてなりませんよ……。」
「男から見たらそれ位が一番丁度良い。」
法正もまた台所に向かってコーヒーを淹れ直す。しかし、それだけが目的ではない雰囲気を醸し出しているのがすぐに理解出来た。動作はコーヒー、鋭い目線はななしに向けている。
「………そんなに見ないでください……。」
「失礼、うっかりしてました。」
一度目線を戻す。が、
「そんなに痩せたいのであれば、手伝いましょうか。」
悪魔の誘惑する囁きが聞こえた。
「………本当に、ですか?」
「ええ、ですが、この悪党の策に乗って頂けるかどうか……。」
本気で悩んでいる事に関して、ななしは時に盲目になる。それを法正は知って、こういった甘い仕掛けを用意するのだ。それに嵌まれど気付かないななしも、相当の鈍感と思うが。
「いえ、法正さんが出す提案ならきっと効果がある筈……!でもそれって、辛くないですか……激しい運動とか……。」
「そうですね、激しいと言えば激しいです。が、気持ちが良いものですよ、汗もかきますし。」
「汗ですか……確かにそれなら脂肪燃焼に効果的ですね。……それって、どんな運動なんですか?」
獲物が罠に掛かった、と思わんばかりに口角を上げる法正。彼女の持つコップをすかさず奪い取り、冷蔵庫と板挟み状態にする。所謂壁ドン、という類だろうか。
勿論焦らないななしではない、僅かに瞳が揺れている。
「どうしました。」
「え………あの、これはどういった事で……。」
「勿論運動するんですよ。貴女と、俺で。」
満悦の表情で顔を近付ければ、漸く理解したのか顔を真っ赤にして瞠目した。そんな隙だらけのななしに軽く口付けを施せば、ぎゅっと目を閉ざして縮こまる。
「ん……っ。」
「貴女の事ですから、本当は望んでいたんでしょう?……運動も出来て愛を深めて、一石二鳥という事で。」
角度を変えて貪る様にキスを繰り返せば、目尻に涙を浮かべて応える彼女。ガタ、と壁にしている冷蔵庫が何度も揺れたがお構いなしに噛み付いていく。
「そうですね、腰辺りとか絞ってみましょうか。」
そう言って腰を掴み、強く揉みほぐす。手が這う度に敏感に反応し、左右に身を捻った。
「あぅ……っ、そこ……やっ……!」
「痩せたいなら我慢しろ。」
次第に下へと降りていき、スカートの中に手を忍ばせる。
「そこっ、関係……っ、な…!」
「ほう……関係ないのに何故濡れている?」
指をなぞらせていけば、下着の上からでも分かる位にしっとりと湿り気を感じる。ずらして既に濡れそぼつ丘へと刺激を与えれば一際高い声を上げた。
「ひぁ……っ!!」
「淫乱だな、マッサージしてるだけなのに、随分とみっともない姿を晒してますよ。」
ガクガクと脚が震え、今にも崩れ落ちそうだ。法正は膝を曲げて腰を下ろし、恍惚としたななしを見上げる体勢をとる。勿論、何もかもが丸見えだ。
「見ないで、ぇ……っ!」
「知ってましたか、人に見られると痩せたいと思う意識が高まってくるらしいですよ?」
違う意味での意識ならもう高くなってる、ましてや朝だと明るい為に見放題だ。夜とは違った羞恥に心臓が張り裂けてしまいそうだった。
まじまじと見るだけならマシなのだが、それで終わる筈もない。脚を抉じ開けるとそこに顔を埋め、膨れた豆を執拗に攻め立てる。
「ひぁっ、ああ……っ!!!」
「ほら、崩れ落ちないように筋肉を使って下さい。脚を鍛えるにはいい運動だ…そうでしょう?」
びちゃ、とどちらの液か分からない水音を立て、舌で丹念に弄り尽くす。時々吸われる感覚に意識を持って行かれそうになり、脚が覚束なくなった。
「崩したら更にキツくしますから。」
「やぁっ…だめぇええ!!……いっちゃ、…んんっ!!」
遂に限界を迎え、びくりと身体を震わせながら液を満遍なく溢した。体勢は何とか耐え切ったが、いつ落ちてもおかしくない崖っぷちの状況。液塗れになった法正は満足そうに唇を舐めた。
「吹く程好がったんですか?全く、運動に集中して下さいよ。」
床はすっかり液に塗れてはしたない状態。しかし後始末の事など考える暇もない、次に取り掛かろうと法正は彼女を持ち上げた。
「なに、を……っ!?」
「ああ、俺も運動不足でしてね。たまにはこれもいいかと思いまして。」
腕を首に回せ、言われるがまま通すと体勢的には抱っこ状態。見えない恐怖に怯えていると秘所に当たるは雄々しく反り立つ法正の。
「っ……ひっ…ぁああ!!」
ガクン、と振動したと同時に挿入される衝撃を食らう。潤う中はすんなりとそれを受け入れて満たし支配した。
「どうだ……っ、たまらないだろう……?」
腰を浮かせてぶつける毎に深く突き刺さる刺激、あまりの快感に頭が追い付かない。それでも余裕の笑みを浮かべて律動する法正。
「いいですね、これなら足腰が良く鍛えられそうですよ。」
落ちないように必死にしがみつけば、彼は首筋に舌を這わせる。舐める感触と突き上げる感覚にもう何も考えられなくなり、ただ甘い声を上げる事しか出来ない。
「ああっ…!!!気持ちい…っ…またっ、いっち……ゃあっ、おねがぁ……ああっ!!!」
しかし絶頂を迎える寸前に法正の動きはピタリと止まる。急に失った快楽にななしはただ呆然とするばかり。
「逝くには早いですよ?」
ニヤ、と挑発的な表情を浮かべてゆるりと律動を遅めて焦らしを始めた。
「あぁ……意地悪……です……っ!」
果てそうで果てる事の出来ないもどかしさ。地味に迫り来る快感の波が何とも言えない程に歯痒い。ななしはふるふると首を振って、強く締め付ける様に彼に抱き着いた。
「いや……っ、おねがい……イかせ、て……ぇっ!!」
「お断り、だ。」
そういう風に言い張るが、法正の表情も眉間を曇らせて若干ながら苦しそうだ。それは持ち上げる体勢なのか、果てるのが近いのか。
どちらにせよななしもこのままだと辛い、堪らず耳元で懇願した。
「法正さん……の、精、が……欲しいです……お願い……動いて…っ!」
「…………っ、砕けても後悔しないで下さいよ。」
耳を燻る様な吐息、流石の法正も堪えていた理性が音を立てて崩れ去った。再度動きが始まると、先よりも一層激しく深く奥へと劈く。痛みすらも愛おしくそれを受け入れれば改めて押し寄せる絶頂の手前。
「んぁっ……ああ…っ!!!」
「何度でもくれてやる……っ、その分、たっぷりと味わって下さいよ……?」
同時に果てると望み通り大量の液が注がれる。入りきらない物は結合部からボタボタとこぼれ落ち、床が白濁の液で染まった。抜こうにも締め付けが強すぎて法正は思わず呻吟する。
「……………、絞り尽くす気か…。」
「駄目っ、動か……ない、で……。」
内側からの生温かさを感じつつ、懸命に緩めようとするが。
「………どうせなら、もう一度しますか。」
ぐっ、と何かが膨張する。それにななしはぞっと背筋を凍らせた。
「………待って、もうダイエットは止めますから……!」
「言ったからには徹底的にやってもらいますよ?半端な覚悟では痩せませんから、ね。」
それから幾度も体勢を変えては幾度も果てて、気が付けば昼はおろか、日が沈むまで法正のダイエットが続いたのだった。
それからというもの、二度と彼の前ではダイエットしたいという言葉は言わなくなったななしだった。
(足腰が死にそうです……)
(いい運動になっただろ?)