光には闇、闇には光、二対一体
私はその一方の闇を知っている、いくら歩けど先が見えず、明るく照らす唯一の月にも見放されてしまったその姿はあまりにも辛く悲しい。
「お前は俺が可哀想な人間に見えるのか。」
月が照らし出す縁側に二人で座り、彼に内に秘めていた思いを告げれば、その白く妖艶な顔は口許に弧を描きくつくつと笑った。
「もう、私は本気で考えてるんですよ。」
「く……そうか、だがそれは違うな。俺はお前が考える程哀れな人間ではない。」
賈充は己の持つ舞投刃に月明かりを映し、その刃から鈍い光を放つ。
「……でも、私は………。」
静かに俯く私を他所に彼は満足げな表情。
「俺はこれでいい。全ての穢れを抱き、闇に葬られそして這い上がる事さえ出来無くなろうとも、光を照らすアイツが全てを得るならば、な。」
「貴方だけがそんな辛い現実を背負うのならば私もいっそ…。」
「それは叶わぬ願いだと思え、闇に堕ちるなど俺が許す訳がないだろう。………それにお前は俺の光だ、闇に欠かせない唯一の希望だ。
……無垢なお前を穢れた俺が抱いた時は心苦しかったがな。」
先程までの余裕な笑みが消え、少しだけ切ない瞳をこちらに向けていた。私は咄嗟に彼の手を取る。
「何故です、貴方に愛されているなら私はいくら穢れても構わないです。貴方の抱えてる闇を少しでも私に分けて下さい、お願いです、私を置いて一人で堕ちて行かないでください。」
いつの間にか己の頬には涙が伝い落ちていた。表情をあまり変えない彼は少し目を丸くした、が、すぐに無表情になり涙を指ですくった。
「……お前には適わぬ、困ったものだ。」
彼の手は男なのに白くとても綺麗で、とても穢れている様には見えない。それもそうか、それは外面なのだから。
いつしか己の意思で涙を止めることが出来なくなっていた、賈充は距離を更に縮め自分の胸に抱き寄せる。
「俺の為に泣くな、お前が悲しむと俺の心が揺らぐ。」
今だけ照らし出す月が嫌だった、こんな私を彼に見せてしまうから。でもこうやって涙を流す私がもっと嫌になった。
「ごめんなさ………」
最後までいう事は叶わず彼の薄い唇で塞がれた、噂で聞く冷徹で無慈悲などという男はここにはいない、彼の全てを知る私は彼を恐れたりしない。
すぐに離された時、接吻がやけに長く感じ熱を帯びた。それだけ私は彼に溶け込んでいるのだ、いっそそのまま彼の暗い闇に溶かして欲しい。
「お前を手放すつもりはない。……矛盾しているのは重々承知だ、闇に生きている俺がお前を犠牲にし、縛られ誘うなど。」
「それでいいです、私は死ぬまで貴方を愛し続けます。」
涙はいつしか笑みに変わり、静かに彼に接吻をした。
(お前がいれば何もいらない)