「花が枯れてしまったのか。」
庭に咲いていた白い花が萎れてしまった。ここは雑草ばかりで花が珍しかったから嬉しかったのだが。
「賈充………。この花綺麗ですごく気に入ってたんだけど、やっぱり水が足らなかったのかな……。」
「仕方ない、寿命が尽きたのだろう。」
「寿命か…………。お墓作ってあげよう。」
くく…と笑う彼。何で笑ってるの?と聞くと、お前はどんなものにも優しいな、と。
そうなのだろうか……首をかしげれば彼は私と同じ高さになり、頭を撫でた。
彼の撫でる手が好きだ、一見冷酷で感情が無い様にも見えるが時折優しく見せる姿がまた良い。
「好きだな………。」
「何がだ。」
知らぬ間に声が漏れていた様だ。私は咄嗟に口を抑えたが遅かった、もう彼の顔が近い。顎を軽く掴まれ目と目が合う。吸い込まれそうな瞳、なんて思っていれば口付けされた。
「どうせお前のことだ、可笑しな事を考えていたのだろう。」
「ち、違うって、ただ… 。」
「ただ?」
パクパクと思う様に口が動かない。それが面白かったのだろうか、妖艶な笑みを浮かべる。
「黒い花ならここにある。」
「黒い花………賈充の事?」
「ああ、白のようには眩く、純粋な物ではないがな。穢れてしまった黒でも、お前は水を与えてくれるか。」
「勿論、私がずっと水を与えてあげるに決まってるよ。」
私の返答を聞いて、そうか、と満足そうにする彼。
黒い花、彼が思うのはつまり穢れを取り込んで黒く染め上げた花だろう。
「それに、綺麗な花だよ?貴方が思っている程、私には穢れた物には見えない。」
「白い花。」
「え?」
「ならば、お前は白い花だ、俺を虜にした甘い蜜を持った花。」
「じゃあ私も、いつかこの花の様に…。」
「馬鹿言え、お前が枯れる事など俺が許さん。」
枯れた花に触れかけた時、彼の手が私の腕を掴む。力がこもっていて少しばかり痛い、どうやら真剣に思っている様だ。
ごめんなさいと呟くと、賈充はそのまま腕を引き己の腕に閉じ込めた。
(俺の命を枯らしても、お前の命を咲かせ続ける)