「寒い…………。」
「冬だからな。」
近くの戸の外を覗くと辺りは銀世界、有り得ない程寒いのも当然である。思わずため息が溢れる。犬のように寒さ恐れず庭駆け回る事が出来たらいいのに、ぼんやり考えてたらまた溜息が出てしまった。
「溜息は幸福が逃げると聞く。」
「そう言われても勝手に出てしまうの。このままでは冬に殺されてしまう……肉まん、そうだ暖かい肉まんを食べよう。」
司馬師殿の所へ行こう、立ち上がろうとするが手足が悴んで思う様に動かない。
「…………。」
「くく……諦めろ。」
「そうだ賈充、代わりに……。」
絶対にお断りだ、という鋭い視線が私を撃ち抜く。ですよね、私もたった今諦めましたもん。
「どうすれば暖まるかな、手をこすると少しはましかな……。」
冷えた手をすり、息を吐く。何と言うことでしょう、部屋の中だというのに白い息が出てる。
その時、賈充が眉をひそめ低く言葉を囁く。
「暖まるいい方法があるぞ。」
「え!?教えて下さい賈充様!!」
一体どんな方法で暖まるの、とじりじり迫ると彼は口の片端をゆっくり上げ、私の腕を掴んだ。
「勿論、お互いの身体を使って、な。」
まさかこうなるとは思わなかった。
「確かに、暖まった。だけどね、」
彼の言う暖め方とは、身体を重ねる事だった。そんな暖め方があるか、抱き締めるやら手を重ねてくれるやらもっと他に良い方法があったのではと心の中で突っ込んだ。
「そういう割には随分と喘いでいたが、違うか?」
「な……!!」
呆れて言葉も出ない、しかし当の彼は満足げに笑む、そしてどこからか持ってきた肉まんを目の前に置く。
「これ……。」
「食べたかったのだろう?食え。」
火照って身体が熱い、が、先から食べたくて仕方なかった好物なのでこれはこれで嬉しい。
手に取り、二つに割って片方を彼に渡す。
「最初からあったなら出しなさいよ。」
「最初に餌付けしては面白くはないだろう。」
餌付け、私は犬か。
「否、お前は猫だな。犬は家でこんな怠けた事はしていない。」
それに、と彼は続ける。
「…狗は主人に従順で全く面白味が無い。猫は多方逆だ、気まぐれなお前には似合いだろう。」
私の頭を白く大きな手で撫でる、そう言われると確かに猫なのかもしれない。
「でも、賈充には従順でいたいって思ったりしてるよ。……猫が従順っていうのも可笑しな話だけれども。」
「くく、それはそれで滑稽で良いだろう、俺は歓迎する。だが、」
賈充はくつくつと笑い、白く凍える外景に目をやり見仰いだ。
(どこぞの狗とは違う、主人に忠実に生きて死ぬなど、お前にはさせたくはないからな)