情の分かち合い

「…………………。」

動きたいのに動けない、よく見れば徐庶に全身を包むように抱きしめられている。外が暗いという事はまだ夜中なのだろう、もぞもぞ藻掻いてみるも全く効果は見られない。

「んん、徐庶さん。」

「……………ななし…………。」

寝ぼけているのか、名前を呼ぶ声がいつもり低く掠れている。

「少しだけ離れてくれますか……?じゃないと私が潰れてしまいます……。」

「もう少し、君とこうしていたい……。」

それ以上は何も言えなかった。何故ならば徐庶は過酷な執務に追われ、憩いの場すら設けられない程にほぼ毎日働き詰めなのだ。夜には疲弊しきり窶れた身体で倒れ込む彼、何もしてやれない自分だからこそこうして甘えを存分にさせている。
今も十分には休めていないのだろう、顔色を伺えば優れぬ表情で瞼を閉じている。日を重ねる毎に弱っていく彼を見る度に胸が締め付けられる思いだ。

「今日はゆっくりしたらどうですか……?」

「…………そういう訳にも、いかない、かな。でも、いつも心配かけてすまない……。」

彼は何も悪くないのに、謝る事は何一つない。ただ自分の身体は労って欲しい、倒れてしまったら元も子もないのだから。

「あの、徐庶さん………。」

「ん。」

彼の胸を押して互いの顔が見えるようにする。

「……………そのまま、目を閉じていて下さい。」

言われるまま徐庶は薄目を完全に閉ざして視界を真っ暗にさせると、唇に温かい感触が当たり一瞬だけ呼吸を止められる。思わず目を開けばななしは頬を染めながらも口付けを施していた。

「ななし……。」

「ん……。」

触れるだけの口付け、だけをするつもりだったのだろう。そのままゆっくり離れていくが、徐庶はそれだけでは満足出来なかった。腰を強く抱いて引き寄せ、再び唇を重ねる。

「徐庶、さ……っ。」

「もっと、君に触れていたいんだ。」

くちゅ、と音を鳴らしては舌を捻じ入れて求められる。それに応えようとななしも僅かな酸素で必死に絡みつく。

「ふ、ぁ…あ……。」

「……そうだな、お言葉に甘えて……今日は、ゆっくりしようかな。」

するりと服の中に手を忍ばせてふくよかな胸に触れれば、ぴくりと敏感に跳ねる華奢な身体。うずうずともどかしそうな瞳で愛撫する行為に耐えるが、淡く色付く柔らかい突起を摘めば甘い声を上げた。

「やっ………だめっ……!」

「凄く……良い顔しているよ、ななし……。もっと見せてほしい……。」

全体を優しく揉み解していると、もぞもぞと下半身の動きが忙しくなるのが分かる。徐庶はくすりと笑って額に唇を押し付けた。

「感じて、くれてるんだね。」

「…………っ……………。」

「その………触れても構わないだろうか。」

肯定とも否定とも選ばない、ただ下唇を柔く噛んで無意識に欲情する目を向けていた。理解した徐庶は嬉しそうに頷いて下半身へと手を伸ばす。
日々の疲労があるとはいえこういった情事は進んで行いたい、こうして彼女と触れ合う事で今までの隙間があっという間に埋め尽くせるのだから。

「ええと、胸に触れただけでこんなにも濡らしたのかい。」

「んぅ……っ、ちが……っ。」

「おかしいな……でも、厭らしい音しているよ。」

ぐちゅ、と粘り気のある水音を響かせて態とらしく首を傾げる徐庶。言う事もままならず指の動きにただ喘ぐ事しか出来ない。しかし中指が勢い良く侵入する衝撃で四肢が飛び上がってしまい、脚が一直線に伸びた。

「ゃ、あっ………っああ!!」

「そんな声出されたら……俺も堪えられないよっ………。」

辛そうに眉を顰めて引っ掻き回す徐庶、何も考えられずに声帯を震わせて彼の腕にしがみつくななし。締め付けが強くなると一層速度を早めて絶頂へと誘った。

「だ、めぇ……っ!おかしく、な……ぁっ、あ!!」

どくんと脈を打ち逝った感覚を味わい、狭い膣からは新たな液が流れて彼の指に絡みついた。ねっとりと温かい感触に彼も思わず身体を震わせる。

「その……次は俺のも……いや、やっぱり駄目かな……。」

意味を理解した彼女は、恥ずかしがりながらも徐庶の下半身にまで近付いてそれを取り出す。既に熱を帯びていて握れば粘液が纏わりつき、思わず顔を赤くしてしまった。

「………なんだか緊張してしまいます。」

「すまない……でも、苦しくて………。」

ゆっくり強弱をつけながら握り、敏感な所を優しく擦っていく。こういった事に慣れぬななしは徐庶の表情を時々伺いながら奉仕を行えば、彼の口から甘い息が短く漏れた。

「ん、く…………う………。」

「あの……徐庶さん………気持ちいい、ですか。」

唇を噛み締めながら苦悶する姿に、早く楽にしてあげなければという焦燥感に駆られ、擦る両手の動きを速める。すると彼は眉間に皺を刻んで寝台を思い切り掴んだ。

「は、ぁ……っ、ななし……もう、俺……!」

どく、と手の中で大きな脈が打たれ白濁の液が大量に吐出されれば、想像以上の量にななしは瞠目し握ったまま硬直してしまった。

「う、あ……すまない………!」

「あ………いえ!……その、思っていたより、多かったので………吃驚してしまい……。」

耳まで紅潮させ瞬きを繰り返す。そんな姿に徐庶も抱き締めずにはいられなかった。

「嫌いに………なったかい………?」

「そんな……っ、気持ち良くしたかったので、嬉しいです……。」

「…………っ、…………。」

彼に跨る形で抱き締め合っている故、彼の物が再び膨張したのが分かった。自分の下半身に当たっている所為で嫌でも敏感に反応してしまう。

「んっ、徐庶さん……もしかして。」

「…………今度は君の中で、出したい。」

髪を撫でる手が心地良く、自分の身体を彼に預けていると不意に腰を浮かされて中に突き挿れられた。

「あっ………!?」

「手加減は出来無いけど……どうか、受け入れて欲しい。……愛してる、ななし。」

既に濡れている為に難無く根元まで入りきるが、それでも苦しいのか彼女は目尻に雫を溜めながら顔を歪めた。徐庶は胸を愛撫しながら唇を重ね、痛みを掻き消す様に幾度も快楽を注いだ。

「君がいるだけで……俺は、何も要らない……。」

傷付けぬよう腰の動きを低速にし、嬌声に変わるまで出し挿れを繰り返した。ぬぷ、と互いの液を交錯させていけば彼女から喘ぐ声は甘ったるいものへと変化していく。

「んっ………ああ………。」

「痛かったら、言ってくれ。」

そう言い律動を速めて腰をぶつければ、その動きに追い付こうとななしも必死にしがみついた。

背中に立てられる爪の痕や痛みすら鈍く愛おしい。君の受ける快楽をもっと刻み付けて欲しい。いずれ朽ち果てる躰を重ねて今だけは一つでいたい。

「徐、庶さ………っあ、ああ!!」

「………くっ、…………。」

徐庶は蝕む疲労を越えて激しく穿てば、ななしは鈍痛とも言える衝撃を食らってあっという間に絶頂へと果てゆく。がくつく脚を上げて更に奥へとぶつければ彼もまた絶頂を迎えて放たれる白濁の液。全てを絞りきるまでじっと目を閉じ、子宮へと送る時間をじっくりと与えた。その間荒れていた呼吸を鎮めて止めていた二酸化炭素を吐き出す。

「…………好きだ………どれだけ言の葉に乗せても………愛おしくて、死んでしまいそうだ。」

「徐庶、さ……ん………。」

「ずっと側にいてくれ……俺の妻として……最期まで寄り添ってほしい。」

ななしは霞む意識の中、その言葉に僅かながらも微笑み頷いて目を閉ざす。満たされる下腹部に手を宛てて何かを願う様に。





















「生まれたのか…!そうか、俺の子が……。」

その言葉を涙ながらに言う日はそう遠くない話。




(よし、今日も頑張ろう……)

(無理はしないでくださいね)