愛を深く欲し

「これで何日目でしょうか。」

彼が交わる事を避けてから、とななしは指折り数える。己の手では足りないくらいに彼と触れ合えない日々が続いていた。自分から求めるより彼から求める事が多かった故に、寂しさを覚え懊悩する。

「………飽きてしまわれたんでしょうか……いえ、そうじゃない…。」

外に目をやればその彼、徐庶の姿が目に入る。勿論それは軍師としての真面目な姿だ、自分が介入する隙すら与えない程に忙しい。仕事と私どちらが大事か、というありきたりな台詞があるが、正しくその言葉を喉まで出かかっていた。
そんな事言ってしまえば彼に迷惑をかけてしまう、分かってはいるのだが。

「徐庶さん………。」

気付いてほしい、訴える様に彼の名を口にしてそっと部屋の扉を閉じた。
ごろんと硬い床に寝転がり、肌を曝け出す。どうせ誰も入っては来ない、出入り可能である彼以外は。

目を閉じて彼に触れられる感覚を思い出すと、身体が熱く疼きだす。骨ばったごつごつとした長い指が肌を擽り、湿らせた場所へと滑らせていく。双方の膨らみの頂に生温い舌が這ってはぞくぞくと震わせる四肢。

「…………ん。」

考えただけで自然に求めてゆく絶頂。彼の熱が欲しくて身を捩らせては涙で頬を濡らした。僅かに乱れる吐息が静寂に溶けて、己の鼓膜に染みていく。

「…………駄目、これ以上は……。」

言い聞かせても止める気など毛頭ない崩れた理性、息が詰まる程にその身体を蝕んだ。







「ななし。」

外から徐庶に名を呼ばれふと我に返り、突然の事に酷く狼狽える。それよりも自分の今の状況を見せる事など出来ない。

「………っ!」

「あの、入ってもいいかい?」

扉が少しだけ開いて伺う姿が瞬時に目に飛び込み、思わず身体を起こした。すると案の定目眩を起こして身体をふらつかせる。

「あ……っ、大丈夫かい!」

徐庶は傍に駆け寄り身体を支える。触れられた瞬間にびくりと肩を震わせた。

「…………。」

「………ななし……何だか顔色が優れないね。」

「平気です………少しだけ寝不足ですから。」

悟られないように目を伏せて視界から外す。それでも支えられる手の温もりが伝わる毎に唇を噛み締めた。

「……ええと…すまない。」

「なぜ謝るのです…?」

徐庶は申し訳なさそうに頭を下げた。

「きっと俺の所為だと思う、ここの所頻繁に入る仕事に夢中で君の傍にいてあげられなかったから……。」

「いえ、軍師としての務めはきちんと果たさなければいけません。それは重々承知、私如きに構ってる……」

時間など惜しい筈、と言いかけた口は閉ざされた。虚ろな瞳に映るは彼の長い睫毛。

「…………っ。」

「ななし…………愛している……だけど、君をそんなに苦しめていた俺は……。」

彼は苦々しい表情で何度も口付けを施す。己を咎める様に、哀しそうな瞳を揺らして。それを見るに見兼ねてななしもまた大粒の涙を零した。

「………やっぱり、嫌だったかい。」

彼は眉尻を下げて唇を離そうとする。それをななしは止め、触れるか触れないかの寸前で口を開いた。

「違います……悪いのは私の我儘で。…仕事よりも私を大切に思ってほしいという利己……貴方の気持ちを優先してあげられない心狭き人間なんです。」

「そんな……君はそんな人じゃない!」

「もう大丈夫ですから、今やるべき事に目を向けてください……それが終わった後、また……。」

再び言葉を詰まらせれば、呼吸が止まってしまいそうな程に深くなる口付け。言葉とは裏腹に貪り食う愛欲、彼の憂う瞳に釘付けになり一刻たりとも離せない。

「ん………っ。」

「ななし………もう、我慢出来ない………俺だって凄く辛かったんだ………君に触れられない日々が……。」

するりと手が服の中へと入り込み、柔肌に滑らせていく指。膨らみを優しくほぐして頂を焦らす様に弄る。

「あっ……ん…っ…駄目…!」

「いや、凄く嬉しそうだ……これが好きなんだよね。」

くるりと回して強く摘めば彼女は喜悦の声を漏らした。その声を聞いて満足そうに微笑む徐庶は、もう片方の手を下へと持って行く。

「………考えて、いたのかい?」

「…あ……違……っ!」

「………嬉しいよ。」

口元を緩ませ二本の指でゆっくりとなぞり上げる。すれば身震いを起こして耐える様に縮こまった。
ぬるりと粘液を手に纏わせ中へと押し込んで行けば、すんなりと受け入れた指は締め付ける力で身動きが鈍くなっていく。

「……もう、食べられそうだ。」

「言わない……でっ…!」

力を緩めようと呼吸を繰り返す。少しだけ自由になった指は中を引っ掻き回して液を程良く溢れさせた。
引き抜いてじっとそれを見つめる、ゆっくり瞬きを繰り返して愛おしそうに撫でた。

「俺も、度重なる激務とななしと交わっていない所為でこの熱が冷めないんだ……火照った身体が、疼いて止まない……。どうか、受け入れて欲しい。」

天に反る程に熱を帯びたそれは彼女を驚愕させた。今までの堪えていた欲が今にも吐き出されそうだ。

「………。」

手で触れればびくりと顫え、軽く擦れば徐庶は甘い吐息を漏らし呻いた。

「ま、待ってくれ……っ、そんなに刺激した、ら……!」

「こんな、に……我慢していたんですか?」

気まずそうにこくりと頷けば辛そうな表情を向ける。

「………もう、いいかい………。」

ゆっくり侵入させれば、びくりと痙攣させて跳ね上がる四肢。僅かに荒れる呼吸を繰り返して潤う肉壁を押し上げた。
ぎちりと締め付ける度に徐庶は息苦しそうに声を漏らす。

「……動かすよ……痛かったら、言ってくれ……。」

ゆるりと腰を動かしていき熱を上下させれば、厭らしい鈍い水音が鳴り響いて結合部から液が滲み出る。慣らしておいた為に痛みを訴える事は然程無く、直ぐに快感に溺れていった。
次第に動作を大きくさせて激しく打ち付けていく。ぶつかる度に口を開けて嬌声を上げ涙を床へと散らせた。

「あぁ……!元直……っ、元直……!」

二人だけでいる時に呼ぶ字を彼女は何度も発した、それが嬉しくて徐庶は幾度も口付けを繰り返す。舌を唾液ごと絡み合わせて呼吸させない程に奥へと捻じ込む。

「ん………っ、む……!」

「ああ………堪らないよ……もっと呼んでくれ、ななしっ……。」

酸素を与えれば息を吸う音が大きい。

「元直………っ、貴方の全てを……くださ……いっ!元直が……っ、欲しい……!」

欲しい、と希う目の前の女性は嘘偽りない正真正銘の愛。

「愛している………ななし…!」

艶かしい程に美しい姿に魅了され、我慢出来ずに渾身の力で最奥へと突き上げれば一際大きな声を上げて、身体を仰け反らせて果てる。

「あ、あぁ………っ!!」

頭に電撃が穿ち視界が真っ白になり、だらんと全身の力が抜けて倒れ込んだ。

「まだだよ……まだ、君の中で逝かせて欲しい……。」

未だ冷めやらぬ塊は痙攣する彼女で刺激され、どくどくと巡る様に脈を打つ。

「まっ……まだ、いっ、たばっか……っ!!」

懇願する彼女の言葉も聞けぬ程に気持ちは昂ぶり、一層激しく打ち付け、狂おしく全身を奮った。

「すまない……手加減出来ない……っ。」

「あっ……っ、来る…ん…っ!!」

言い放つと同時にふるりと震わせて最奥へと精が放たれる。どくりと脈打つ様に流れる液を滞り無く絞り尽くし、子宮に直接届く位に深く挿入されたそれをずるりと引き抜いた。入りきらなかった液は床へと流れて太腿を濡らす。

「……ん…は、ぁ……。」

「元、直………。」

「……ななし……ずっと、傍にいてくれ。」

疲弊しながらも僅かに笑えば、彼もまた優しく抱き締めた。














「やぁ。」

あの日以来、徐庶は頻繁に触れ合ってくる。会う度に抱き締められ口付けを交わす事が増え、今もまたほろ甘い口付けが降り注いだ。

「もう執務はいいんですか?」

「ええと、まだ少し残ってるけど……今は君と一緒にいたいんだ。…駄目かな。」

照れくさそうに頬をかく姿が何処か可愛らしく、つい笑みをこぼした。

「そんな……むしろ嬉しいです。」

ありがとう、とななしは幸福そうに彼の胸元に顔を埋めた。



(務めよりも君を大切にしたいんだ)