夜景の見渡せるバー。
目の前の彼女が俺の手の動き一つ一つに魅入りながら
カクテルの完成を待つ。
うっとりと俺を見つめてくれるその瞳が好きだ。
いつもより遅い時間にやってきた彼女。
ここでひと時の時間を過ごし、また現実に帰るという
気配が見当たらなかった。
もうバーテンダーと客として過ごした日々は大分重ねた。
俺の中の興味が、いつの間にか
違う感情の確信へと変わったのはいつだったか。
「お待たせしました」
すっと出来上がったカクテルを彼女の目の前へと差し出す。
綺麗…と喜んでカクテルに夢中になった。
そしてそれをゆっくりと味わいながら飲み始める。
「あ」
たまに出てくるうっかりを装って。
「味を重視しすぎて、つい甘くて度数の高い組み合わせの
カクテルになってしまいました…
度数の低いお酒を飲んでいる所しか見たことがありませんが
やはりお酒には弱いんでしょうか……すみません」
彼女の様子を伺う。まだすぐに酔い始めた様子はもちろんない。
俺なりの今夜は帰したくないなんて意味合いのカクテルを飲ませる。
「あまり飲んだことがないだけで…よくわからないです」
そう言って大丈夫ですよと微笑む。
いつも、どこか期待しているような熱を含んだ視線で俺を見つめ
名残惜しそうに帰っていく後ろ姿を見送っていた。
今日はもう閉店近くの時間だ。
「そうですか」
テーブルに乗せていた左手の甲を指先でそっと撫でる。
「美味しいですか?」
そのちょっとの熱と、アルコールで頬を染める彼女。
頷いた後に見上げられると視線が絡み合う。
「お口にあったようでよかったです
でももし何か異変があったら言ってくださいね?」
そういって微笑んだ後、彼女は俯いてしまった。
手の甲を撫でた熱の感触に追い縋るように。
お酒の介抱は慣れている。
けれど求められた後はどうしようか。
こういう手まで使ってしまって近づいたわけではあるけれど
これ以上今すぐ無理やりに関係を進めたい気持ちはもちろんない。
ぎりぎりで留まっておいて
たまらなく求めているのにもどかしくて仕方ない所でとめられ
どうにかなりそうな彼女を見ていたい。