「豪さん!」
働き終えて、お店から出てきた彼女が手を振って此方へ向かってきた。
転んでしまうので気を付けてくださいと言ったのに…。
でも、自分の姿を見たらすぐ駆け付けたくなってしまうという彼女が
愛しくて仕方なくもある。
「―さん、お疲れ様です」
冷たい空気で少しでも彼女が冷えてしまわないよう
距離の近づいた彼女を抱きしめてあげると
他の人が見てるのでっと慌てだす。
「それにしても…迎えに来てくれる時の豪さんの服装…
格好良すぎて未だに慣れないなあ」
「それは…嬉しいですね。慣れてくれなかったら寂しいですけど」
彼女を迎えに来る際、気合を入れて綺麗な姿で仕事を楽しむ彼女に向く
男達の視線や欲望が少しでも紛れるようにと
いつもとは系統の違った服を着て迎えに来て、彼女の隣に素早く並んでいた。
「どうぞ」
「あ、有難うございますっ」
そう言って助手席の扉を開けて、彼女を車に乗せる。
「はい、ココアです。買いたてなので暖かいですよ」
「わ、いつも何から何まで本当に有難うございます…頭が上がらない」
缶の蓋を開けて手渡すと、彼女は本当に嬉しそうにしてくれる。
彼女の伴侶として当然の役割であるし
そういう反応を見せてくれるのが嬉しいから
より些細な事も全部してあげたくなる。
「いいえ、いいんですよ…そんなにかしこまらなくても」
可愛いので頬を緩ませながら彼女をじっと見つめる。
恥ずかしがりながらも、ココアで一息をついた彼女が
ドリンクホルダーに飲み物を置いたのを見届けて、車を発進させる。
「幸せ…」
彼女が呟く。
そう自然に呟いてくれたのが本当に嬉しくて、今すぐ口づけたくなったが
そうもいかず。
「ふふ、僕もです」
心は暖かいけれど、もどかしい距離感を
家に帰ったら一度に縮めてしまおうと心に誓った。