なんか変やったね?


 学生バスケの冬の大会。霧崎第一は都ベスト4という結果に終わったが、玲央ちゃんの在籍する洛山高校は決勝戦まで駒を進めた。
 わたしは去年のインターハイもウィンターカップも、準決勝と決勝は洛山の試合を見に行っていた。今大会も当然そのつもりだったのだが。

「決勝、俺らも行くから。由都も一緒に来るか」
「どしたん?インハイの時は決勝見んかったのに」
「洛山の相手が誠凛に決まったし、時間もあるしな。私服で行くから霧崎第一(俺ら)だと気付くヤツも少ねぇだろ。一応、会場でもマスクくらいはしとけよ」
「古橋くんたち的にはいいの?バスケ部外の女子が混ざっても」
「駄目なら言わねぇ。あいつらも了承済みだ」
「ではお供する。いつものメンバー?」
「あー松本はインパで欠席やって」
「なら五人と一緒、に……花宮くん、今なんか変やったね?」
「どこもおかしくねぇ」
「……シンクロニー現象」
「空耳だろ」
「わたしも花宮くんの影響受けてることってあるんかな」

 思いつかないが、第三者から見れば気付く所があるのかもしれない。少なくとも、エッジの利いた物言いはわたしには無理だ。もっと頭の回転数を上げ、瞬発力をつけなければ。
 頭の良さが似たら素晴らしいんだろうなあ、とぼんやり思いながら、親指と中指の腹を合わせて力をこめる。

「夏の大会では洛山のキャプテンくん出んかったけど、今回は出るかな。"五将"三人と"キセキ"キャプテンってホント戦力過剰」 
「セオリー通りなら洛山の優勝だろうが、誠凛の勢いを考えれば、あるいは」
「玲央ちゃんに勝って欲しいなー」
「もし今回負けても次は優勝すんだろ、スタメンほとんど残るし。誠凛は運よく勝てたとしても、次からは厳しい」
「どっちに勝って欲しいとかある?」
「クッソどうでもいいわ。……んで、さっきからなんだソレ」
「フィンガースナップ」
「カッスカスじゃねぇか、下手くそ」
「鳴る気がせん」
「これは親指と中指をこする音じゃなくて、中指を振り下ろして空気を弾く音なんだよ」

 花宮くんはそう言いながら、あっさり指を鳴らす。パチン、とも、パキン、ともとれる小気味良い音だ。
 軽快にテンポを刻む手を観察して再挑戦するも、ぱす、かす、と情けない音しか聞こえない。

「……花宮くん、それ第一関節砕けてない?」
「なワケねーだろバァカ」

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