サイコパスの香りとともに


 ウィンターカップ決勝戦、珍しく由都も交えて観戦に来ていた。
 由都を見ていると、花宮の人間らしさが垣間見える。思いやりの心は、クズにも備わってるんだなあと。
 思いやっているのかどうかは判別し難いが、チームメイトにも気安いノリを許している。花宮は、類を感じた人間はテリトリーに入れるタイプなのだ。
 恋人という距離感を受け入れるどころか、手放す気がないことは丸わかり。あいつは、由都を自分の一部だと認識するくらい気に入っているらしい。ザキっぽく表現するなら、手を繋ぐことも家にあげることも全く嫌だと思わないくらいに好き、だ。
 こういう言い方をすれば、あいつは舌打ちをして肩パンして凶悪な笑みでペナルティを言い渡すだろう。たとえ事実であっても、心情の核心をつかれることは誰だって嫌がる。
 もし花宮がなんてことない顔で肯定したら、おそらく結婚目前だ。

「由都から見た花宮って、どんなやつなの」

 興味本位で尋ねた。普段話す機会もないので、せっかくだ。

「……混ぜたらヤバイもの混ぜてしまった、かな」
「例えば?」
「ううん……綺麗事を言うイイコが嫌い、プラス、他人を傷つけて何も思わない。の上に、人の不幸に愉悦する。そのわきに、器用さとカリスマと頭脳をトッピングした外道パフェ。サイコパスの香りとともに。ドリンクはマインドコントロール」
「まずそう。改めて言葉にすると人間か疑うね」
「わたしも」
「仮にも彼氏に対する評価とは思えない」
「大丈夫」

 どの辺が大丈夫なのか。

「それだと由都も、相当常軌を逸したクズになるだろうけどいいの」
「え、」
「なるよ」
「わたしクズじゃない……ないよね?たまに頭おかしいって言われるけど、」
「ナチュラルボーンクズを許容してるじゃん」
「んふっふ、語感が良い」
「使っていいよ」
「そうする。……悪いことしてるなあ、外道だなあ、とは思うけど。イコール嫌悪にはならない。規律を破らずかいくぐってるし。わたしにされたら嫌だけど、」
「されない自信があるんだね」
「花宮くんが楽しめるリアクションは出来んしなあ」

 あの花宮にしてこの彼女ありというか、変な噛み合い方をしているらしい。花宮のようにアグレッシブな外道ではないだけで、由都もレアなタイプだろう。

「じゃあ、悲劇を見てて愉しい?」
「内容は楽しくないかなあ。凝った演出に目がいく」
「……おかしいっていう評価は妥当だと思う」
「えええ……」
「刹那主義でなんでも愉しむとこと、周りがどうだろうと面白いことだけ考えたいし興味がないってあたり、確かに原と古橋のハイブリッドだね。おめでとう、立派なクズだよ」
「うーん、嬉しくない」
「……さっきから黙って聞いてれば」

 由都を挟んで俺の反対隣にいた花宮が渋い顔をしている。ちなみに他のメンツも揃っているので、時折吹き出す声もあった。今は引き合いに出された古橋と原が顔を見合わせている。

「よく本人がいる所で、んな話が出来るな」

 目の前で至極真面目に、彼女にサイコパス呼ばわりされる気分はどんなものだろう。
 まあ、多分、お似合いだ。

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