ブーメラン刺さってるよ


 今年は、十二月二十五日が二学期の終業式だ。わたしは先に帰る予定なので、わたしがソレを花宮くんに渡したのは二十四日の帰り道のことだった。
 店員に勧められるがまま、クリスマス用の包装がされている。部活終わりの花宮くんに手渡すと、花宮くんは少し驚いたような顔をした。

「メリークリスマース」
「……おう。プレゼント系は苦手って言ってなかったか」
「めちゃめちゃ苦手。なのでよほどのことが無い限り外さん、かつ、わたしの精神衛生にも優しいモノにしました。そんなびっくりする?」
「イベントごとには乗らねぇタイプかと」

 乗りこなし方が分からないだけで、乗りたくないわけではない。今年は花宮くんもいるので、気が向いただけだ。

「中身は」
「ボールペン。ちょっと良いやつ」
「……サンキュ」
「『なんて言うワケねーだろ』?」
「礼くらい言うわ、俺のことなんだと思ってんだ。つかそれ誰から聞いた」
「原くん」
「クラス別だろ」
「わざわざ絡みに来たよ」
「アイツの言うこと鵜呑みにすんなよ、いいな」

 あきれ顔で言われるが、口癖であることは否定しない。わたしが聞いていないだけで、バスケ部内では頻繁に聞かれる言葉だというのは事実らしい。花宮くんは、この"上げて落とす"戦法が得意なのだそうだ。
 花宮くんは「一哉のことは置いといて」と、コートのポケットから手のひらに乗るサイズの箱を取り出した。
 
「メリークリスマス」
「え……あ、ありがとう」
「ふはっ。何キョドってんだよ」
「普段こういうのせんからかな、めちゃめちゃびっくりするね。さっきの花宮くんの反応にも納得する」
「俺のを用意しておきながら期待してなかったのか」
「ブーメラン刺さってるよ」
「……はよ取れ」
「何くれるん?」
「ネクタイピン」

 霧崎第一の制服はブレザーで、女子はネクタイとリボンを自由に選べる。わたしはネクタイ派で、リボンはたまの気分転換にしかしない。
 ネクタイピンには指定品がなく、派手なデザインでなければ自由に選んでつけていいことになっている。だが装着自体が任意であり、着けている生徒は滅多にいない。
 すぐ開封して着けたいくらいだが、今は包装紙を派手に破く自信がある。

「明日から毎日着ける」
「明日で二学期終わるぜ」
「三学期が待ち遠しい」
「そりゃ良かったな」

 つないだ手をご機嫌に振りながら歩くと「肩が外れる」と運動部男子らしからぬ貧弱宣言を受けた。


 帰宅後、部屋に駆け込んで開封すると、ピンクゴールドのシンプルなタイピンが入っていた。以来、わたしは必ずタイピンをつけて登校している。
 そして花宮くんの胸ポケットには、ダークブルーのボールペンが鎮座するのだった。

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