鬼殺隊に入って強く思ったことがある。
人間すぐ死ぬ。
知っていた。吸血鬼よりは寿命も短く、脆く、弱く、死にやすい。知っていたが、鬼との戦闘で死に過ぎている。学園に入る前のわたしならすぐに心が動かなかっただろうけれど、学園で多少なりとも人間について勉強し好ましく感じていると、鬼に生み出された惨状は心が痛んだ。無抵抗で喰い殺される民間人や、果敢に立ち向かって死ぬ隊士たち。そうでなくとも病気や飢餓や戦で死んでいく人間が多いのに、さらに食い散らかす鬼。人間の生存戦略が急がれる。
「いや、わたしは、人間の存亡を心配しているのではなくて。純粋に心を痛めていて、もうちょっと何かできないかなと思っているの」
無声音で言い訳をする。
人と人との争いに首を突っ込む気はないけれど、人間が無慈悲に蹂躙されているのは気分が良くない。
わたしに何ができるかと考えて、まずは武器の確保が必要だという結論に至った。鬼は日光を浴びるか、日輪刀で頸を刎ねないと死なないのだ。日輪刀は隊士にのみ支給される刀であり、刀鍛冶の里の場所も開示されていないため、里を訪ねて頼むことは出来ない。目立たず行おうと思えばなおさら、人の手は借りられない。もし刀を手に入れられたとしても、素人のわたしには扱えないとも予想できる。刀を使って特殊能力を使用していた副寮長ならともかく。
そこで、死んだ隊士の折れた刀に目をつけた。柄のほうは遺品として回収するので、刃のほう。持ち主の死後、鬼によって砕かれていることがままある。
日輪刀は対吸血鬼武器と似通った気配があって――そりゃあ対吸血鬼武器のほうがひどい――とても素手で触りたい代物ではない。わたしは黒いグローブをして、刀の破片を回収する。本来は提出すべきものを盗むのである。
正直、こんな嫌な気配のするものを持ち運ぶこともしたくはないのだが、鬼と対峙する上では必要だ。もし戦闘が必要な場面に遭遇しても、朝日が出るまではとどめを刺せないのだから。
「ありがとうございます」
他の隠の目を盗んで破片を集め、亡骸に手を合わせる。
吸血鬼は戦闘民族ではない。学園で人間を守るために外に出たのは必要だからであって、戦いたいからではない。身体能力が人間より優れているから、戦闘民族のように誤解されることもあるだけだ。
ただし、ある程度の訓練はする。貴族階級には、暴走した吸血鬼の始末という役目があるからだ。貴族階級は大抵特殊能力を一つ持っており、それを活かした戦い方をする。戦闘に向いた能力でなければ、別の技術をある程度モノにする必要がある。わたしは戦闘に不向きな能力持ちなので――工夫して役立てることはあるけれども――直接的な攻撃方法と言えば投げナイフだった。回収が面倒ではあるが。ダーツはめちゃめちゃ得意であるし、昔なじみからのあだ名は"強肩"だった。狂犬ではない。
何が言いたいかと言うと「日輪刀の破片を投げて応戦する」というのが、わたしなりに考えた戦闘スタイルなのだ。