「錦ちゃーん!」
バス停まで歩いていると、後ろから元気よく名前を呼ばれた。立ち止まって振り向くと、歩美たちがランドセルをがっしゃがっしゃと鳴らしながら駆けてくる。コナンと哀は後ろからゆったり歩いていた。
「錦ちゃん!」
「なあに?」
「さっきみんなで話してたんだけど、東都水族館に遊びに行かない?」
錦は頬に手を当てた。
東都水族館そのものは長くある施設だが、リニューアルオープンが近いとあって最近注目されている。水族館だけではなく周辺施設を含めた大幅な改装で、巨大な二輪式観覧車が目玉だ。錦も何度もCMで目にしている。
少年探偵団のメンバーで遊びに行くことは確定しているようで、そこに当然のように錦を誘ってくれたのだ。おそらく阿笠のビートルで行くのだろう、すし詰めになるとしても声をかけてくれたことは嬉しいのだが。
「ごめんなさい、お誘いは嬉しいのだけれど」
歩美と元太と光彦が目を瞬く。近場の施設だ、断られると思っていなかったらしい。
「パパと一緒に行く約束をしているの。わたくしは初めてだから、最初はパパとがいいなと思っていて」
「あーそっかあ。残念だけど、仕方ないね」
「まだ日程は決まっていないから、多分、歩美さんたちのほうが先に楽しむことになると思うわ。見どころは、ぜひ教えてね」
「任せて!」
「存分に楽しむためのしおりをプレゼントします!」
「うまい店も調べておくからな!」
そうなると前もって調べておかなければ、と光彦がスマホでホームページを検索する。歩美と元太が覗き込むが「歩きスマホは危ないわ、帰ってからにしなさい」哀の一声でスマホをしまう。
「お父さんと仲良いよな」
何気なく、ただ思わずといった風にコナンが言った。返答は求めていないようだったが、錦はしっかり反応した。
「ええ、とても。仲良しよ。大好きなパパだもの」
「良かった……と言っていいのかどうか分かんねぇけど、良かったな」
「どうして歯切れが悪いの?」
「そりゃ……ほら……本人に言うのはアレだけど」
コナンはこどもたちを確認して声を潜める。「橙茉さんのとこ、いろいろ複雑そうだから」言葉を選んでいる様子だった。
「あまり気を使わなくていいわよ」
「そこまでさらっとされるの怖いんだけど」
「ながーく生きているとね、いろんなことに心を乱されなくなるの」
「小学一年生だよな?」
「江戸川くんなんて受精卵よ」
「同い年だよな?」
橙茉さんの冗談って独特、とコナンが困った顔で笑う。聞こえていたらしい哀も頷いていた。
全く冗談ではないが、楽しんでくれているのならばそれはそれで良い。困らせているとしても、錦は楽しいので別に良い。
「顔に出てるぞ、俺らの反応が面白いって」
「あら」