観覧車のちょうど真ん中あたりに到達する。赤井の手も借りられるのでスムーズだった。
下から、再び、また別の人間もそこに上って来ていた。
おそらく自ら観覧車内部に入り込んだらしいコナンが、口を開けて固まっている。「赤……」と言いかけたので、赤井に声を掛けるつもりだったらしい。コナンは口を半開きにしたままで、潮と景光に忙しなく視線を動かした。
錦は小さな手を自身の口元に当てる。景光は今、外見印象的には凌である。コナン視点では、亡くなったはずの錦の父親だ。
「キュラソーに、橙茉さんのお父さん……? これは一体どういう……」
赤井が首を横に振る。
「残念ながら俺も把握できていなくてね。とりあえず安全圏に脱出してきたといったところだ」
「安全……じゃ、ないんだ」
不意の遭遇に呆けていたコナンの顔色が曇る。
「観覧車の主軸に、無数に爆弾が仕掛けられてる。解除しないと、軸からホイールが外れて大変なことに!」
錦は観覧車の主軸のほうへ視線を向けたが、ここからでは障害物が多く、実物の確認は出来なかった。しかしコナンが嘘をついているとは全く思わない。このままここにいれば爆発に巻き込まれる可能性が十分にある。
危険なのは自分たちだけではない。今、貸し切り状態なのは片側だけなのだ。ホイールが外れるという事態になったら、外の広場や水族館にいる人々も危険にさらされる。
錦には、爆弾の解除は不可能だ。ううんと首をひねっていると、赤井がライフルケースから手のひらに乗るほどの黒い包みを取り出した。
「工具ならあるんだが、爆弾処理か。俺もある程度は心得ている」
口を挟んだのは潮だった。
「あなたはここで唯一、オスプレイへの対抗手段を持っている人間よ。爆弾処理はわたしに、」
「ぼ、」
「僕がやろう」
潮を遮ったコナンを遮って、あらたな人物が合流する。<STAFF>と書かれた服を着て現れたのは、神妙な顔の安室だった。安室はツカツカ歩いてくると、赤井が持っている工具をひったくるようにとった。そして赤井には言葉をかけず、景光に視線を向ける。
「風見さんは気絶してるだけだよ」
「そうか……。しかし、大人数になったもんだな」
「まあな」
潮と安室は数秒にらみ合ったものの、お互いに何も言わなかった。
安室の空気は、普段喫茶店で会うときとは違って厳しいものだった。錦がまじまじ見上げていると、雰囲気はそのままに軽く頭を撫でられる。「巻き込んですまない」早口で謝罪してくるので、錦は笑顔を浮かべた。「そんなことないわ」組織云々に関わっているのはもう三年も前で、今回は自分から首を突っ込んでいる。安室に謝られることではない。
「組織の情報を持っているキュラソーを放置するわけにも、唯一長距離武器を持っている赤井を爆弾に回すわけにもいかないからな。コナンくん、起爆装置のある場所は分かるかい?」
「うん、案内するよ!」
「よし。爆弾は僕に任せてくれ」
「じゃあ俺たちはここから出ることを最優先にする」
「俺はオスプレイの実物を見ておきたいから、一度上に向かってみよう」
安室の言葉に景光と赤井か続く。安室はコナンとすぐに駆けだして、赤井も錦たちと降りたルートを戻って行った。
錦たちの仕事は無事に脱出することだ。キャットウォークに到達しているので、そう苦労もなく外に出られるだろう。
風見を背負った景光が、錦の前でひざを折る。
「錦、頼みがあるんだ」
錦は一度瞬きをして、深く笑んだ。
「なあに」