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 ちょうど高学年の授業が終わる時間帯に、景光と一緒に下校する。ランドセルは景光が持ち、錦は給食当番のエプロンが入った袋だけを持っていた。
 父親が代わったことで、担任の大畑との三者面談があったのだ。

「良い先生だな。知ってたけど」
「たくさん心配されてしまったわ」
「悲しそうな顔を練習させときゃ良かったと思ったよ……芝居してくれって言わなかったか、俺」
「誤魔化してくれ、とも言っていたから。誤魔化しているわ」
「うまくかわしてくれるならいいけど。にしても、不思議な気分だったぜ。眼鏡を着けてないだけで別人扱いだ」

 眼鏡は今も景光のポケットに差してある。いざという時のために、景光に戻った今でもずっと持ち歩いているらしい。
 ぽこ、と給食袋を膝で蹴る。

「クラスメイトは? 一々親のことなんて話題にしないか。俺(凌)が会ったことある子も一人しかいないもんな」
「その一人には伝えているわ。妙に怪しまれたけれど、彼、いつも怪しんでいるから問題ないでしょう」
「いつも怪しんでいるってなんだ。キッドキラーは疑心暗鬼なのか?」
「わたくしのことが苦手らしいわ」
「なんで嬉しそうなんだ」

 給食袋を持ったまま、景光の片腕に抱き上げられる。大人しくつかまると、錦に合わせていた景光の歩幅が大きくなった。これならバス停まであっという間だ。
 錦は歩く振動に揺られながら、先ほどまでの面談を思い起こす。

「凌より景光のほうが、若く感じたわね。こう、雰囲気が」
「見た目年齢に違いはないって聞いてたから、突然父親になったってところを意識した。使命感とかやる気が有り余ってる感じ」
「流石ね。主演男優賞をあげるわ」
「錦の演技も中々のもんだけど」
「パパぁ、今日の晩御飯はなぁに? あ、景光呼びのほうが良かったわね」
「じゃあリテイク、はい」
「ひろみつ、今日の晩御飯はなぁに?」
「生姜焼きです」
「レアでお願いするわ」
「じゃあ焼く前のやつを錦用に盛り付けるか――あっ」

 滑らかに停車するバスが見えた。景光の一歩がさらに大きく、駆け足になる。錦は振り落とされないようしがみつき、ぐんとあがった速度に笑った。「ひろみつ、はやく!」無邪気に急かすとさらに揺れが大きくなった。
 バスのドアが閉まるも、錦らに気付いた運転手の優しさでもう一度開いた。

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