刀剣女士続続々


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誰かに話したいスレ26

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500:38は話したい
今日すごいことがあったんだ、聞いてくれ

501:38は話したい
俺は今、屋上庭園でバイトしている
結構年季の入ったところで、警報装置とか不可視柵とか、そういう最新設備が不十分で死角が多い
幸いにも今まで事故はなく、改修工事も入ることになってた

今日その庭園でちょっとした催し物があって、子供とかも多かった
俺は掃除したり見回りしたり、適度に客との交流して結構楽しんでたんだ
お昼頃、三十代くらいの男性が、落し物があったって声をかけてきた。落ち着いたいい感じの人だった。悪く言えばモブだけど、気さくな話し方とかなんか、紳士的っていうか、優しげっていうか。しかもその男性、可愛い女の子(ツキ)と綺麗な顔した男の子(キヨ)を連れてて、ちょっと注目集めてた。
落し物預かってちょっと雑談してたんだけど、ここで悲鳴が聞こえたんだ。同時に、何か男の声もした。俺は「またか!」と思いつつ、騒ぎの方へ顔を向けたわけだ。

502:名無しは話したい
お、古参の38じゃん
コンビニバイト辞めたのか?

503:名無しは話したい
でたなリアル名探偵(トラブルメーカー的な意味で)

504:名無しは話したい
>>502
そこは多分、前スレで首になってる
強盗に入られて、その強盗を知ってたとかで仲間と誤解されたって
喫茶店に入った金取りと同じやつだったんだろ?

505:38は話したい
そこには、屋上の柵に掴まるキヨくん。もう騒然となってて、お客さんが集まってキヨくんを引き上げてた。
いやいつの間にキヨくんそんなとこにいるの!!??と思いつつ駆け寄ると、キヨくんに続いて引き上げられるツキさん。そのツキさんはさらに男の子を抱えてた。
周りは拍手喝采、男の子号泣、俺混乱。
母親の話によると、男の子が落ちたところをツキさんが飛び降りる形でキャッチ、その足をキヨくんがキャッチしたらしかった。

506:名無しは話したい
>>俺は「またか!」と思いつつ<<

507:名無しは話したい
ツキとキヨっていくつくらいなん?

508:名無しは話したい
ドラマみたいだな
子供から目をはなすなよ

509:名無しは話したい
キヨくんは2人分の体重を支えてたのか?マッチョ?

510:名無しは話したい
はよ改修工事しろよあぶねーだろ

511:38は話したい
>>507
高校生くらい?
2人とも細身だけど、キヨくん案外がっしりしてるのかも

で、監視カメラ映像見てさらに驚いた。
地上を見下ろしてた男の子が滑るだろ?と、同時にキヨ君が走ってるだろ?さらに悲鳴もここで上がるだろ?キヨ君がツキさんを呼ぶだろ?
この時点で、

ツキ     キヨ   男の子
  ●     ●     ●|
男性●
オレ●

こうなわけ。オレから男の子まで50mはあるんだけど。んでほんの数秒で男の子が宙に浮いた!って時に

        キヨ ツキ
            ●  |●
男性●
オレ●

こうなるわけよ!!!
意味わかんないね!!?!!???

512:名無しは話したい
50m走何秒?

513:名無しは話したい
うん?????
キヨくんが気付いて、ツキさんを呼んだのか?

514:名無しは話したい
ツキおかしいけど、これキヨも相当早いよな!?

515:名無しは話したい
くそはやい

516:38は話したい
だろ!?わけわかんないだろ!?
チーフも何回もリピートしてたもんよ!でもどうみてもアレなんだわ!
で、当事者に聞いた話。

キヨ「危ないと思って走り出したけど、追いつくかわからない上に俺結構重いからさ。ツキ呼んだんだよ。俺よりツキのんが速いし、軽いし。子供とツキくらいなら、俺でも支えられると思って」
ツキ「名前呼ばれて気づきました。キヨが呼んだってことはそういうことなんだろうな、と思って全力疾走です」
子供「うええええええええん!」
男性「2人の運動神経反射神経に追いつけるわけないんでねえ」

517:名無しは話したい
躊躇いなく走り出したキヨかっけー
判断も早すぎるだろ

518:名無しは話したい
これを高校生くらいの男女が?

519:名無しは話したい
ツキちゃんなんなの>そういうことなんだろうなと思って

520:名無しは話したい
子供いらんだろなんで書いた

521:名無しは話したい
なんかスポーツしてるの?短距離選手なの?

522:名無しは話したい
ツキちゃん、よく飛び降りたな

523:名無しは話したい
男性に様子おかしくね?
さも当然といわんばかりじゃん

524:38は話したい
>>521
剣道してるとか

このあとは目立ちたくないってんで、三人ともすぐ帰ってた
俺の報告は以上です

525:名無しは話したい
すげえええええやべええええ

526:名無しは話したい
その2人いなかったら子供死んでたな

527:名無しは話したい
高校生が平日の昼間って?
本当に高校生?

528:名無しは話したい


529:38は話したい
>>527
見た目がそれくらいってだけで、ちゃんと聞いてない
大学生かもしれないな

俺ごときの文章力じゃ伝わらないけど、美人2人の人命救助に庭園はほんと黄色い悲鳴だったぞ。不謹慎だけど気持ちはわかる

530:名無しは話したい
えっじゃあ…
美人で頭回って運動できる?
二次元??

531:名無しは話したい
美人の定義は人それぞれですし

532:名無しは話したい
そうとう仲いいんだな
男性も血縁?

533:名無しは話したい
そっか
美人なのか

534:名無しは話したい
俺も可愛いこに捨て身で助けられたい

535:38は話したい
>>531
ツキさんは可愛いって感じで、キヨくんはカッコいいより美人って感じ。ちょっと中性的
事件前から遠巻きに見られてた感じだぞ?美人だろ

>>532
どうだろ。三人とも似てはなかったけど。親しいみたいだけど恋人っぽくないし、親戚とかかな

>>534
おまいの体重じゃ無理

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11
縁側にずらりと布団が日干しされている光景は壮観である。通行の妨げではあるが、庭に降りたり布団を器用に飛び越えたり屋根に一度上がってみたり、と皆何食わぬ顔で生活する。

室内の掃除を終えた鳴狐は、洗濯物を取り込むため庭に出た。同じ当番なのは五虎退で、鳴狐が持つ半分の量を運んでいる。五虎退は少ない荷物量に少々不服だったが、力があっても小柄なせいで転びかねないため仕方がない。

この本丸では、内番は大きく二つに分かれている。馬当番と畑当番だ。馬当番は馬の世話だけでなく、屋内の掃除と洗濯も担当する。馬に関しては、乗る刀剣が世話をするので、正確には馬小屋の掃除だ。畑当番は、重労働なので畑の整備と収穫のみ。表の掃除は、大体審神者が行っている。

また、調理当番は出撃する刀剣が当たることが多い。確実に厨を任せられる者が少ないためだ。例えば今日なら、朝食は燭台切と歌仙と審神者、昼食は長谷部を筆頭に非番の者が手伝い、夕食は天守を筆頭に手の空いた者が手伝う。朝食準備は必ず審神者も手伝っている。

つまり鳴狐と五虎退は本日馬当番なのだ。母屋にある広間の一つで、朝に干していたそれらをたたむ。服の量はそう多くなく、大体がタオルだ。ふわふわではなく、どちらかといえばゴワゴワした手触りなのは、柔軟剤を一切使っていないせいだ。審神者の肌に合わないらしく、硬くてごめんね、とたまに彼は謝罪するが、刀剣にとっては些細な問題にもならない。余談だが、唯一の女性である天守月影の下着だけは、審神者きっての頼みで天守自身が管理している。

鳴狐は無口な方で、黙々と作業を進める。五退虎とは同じ粟田口で親戚関係にあり、本丸での生活も長いため、気まずさは全くない。洗濯物は大体の部屋ごとで分けて持っていく。紛らわしいものーー個人所有の手拭いなどーーには名前が書いてあるが、多少間違いがあっても、それに目くじらをたてる者はいない。タオルはまとめて風呂場の棚に積んだ。

あとは馬小屋の掃除だ。馬小屋に入ると、数頭が前足で地面をかいた。慌てて確認するとまだ水は残っていたが、さっさと新しいものにかえろという要求らしい。鳴狐も五虎退も動物と相性がいいので、苦笑して謝りながら水を替えた。

馬小屋掃除を終えると、埃っぽくなった服を着替える。時計をみると三時過ぎで、ここからは自由時間だ。トモを迎えに行こう、と母屋に足を向けた。トモは鳴狐の肩を定位置とする狐で、審神者に名をもらったときには狂喜乱舞していたものだ。

トモは昼食を食べすぎたからと、母屋の広間に残っていた。まだそこにいるかは分からないが、自分のところに戻っていないということはそうなのだろう、と焦りもなく広間に向かう。

厨の前を通ると、昼食後には一度片付けた洗い場に、数点の食器がみられる。朝から出撃していた隊が昼過ぎに戻ってきていたので、その食器だろう。帰還後に大人しく食器洗いをする気になれないのは、なんとなく理解できた。

鳴狐はコップに冷えた緑茶を注いで、面頬をつけたまま器用に飲み干す。冷蔵庫に戻すとき、作り置きの麦茶と緑茶が補充されていることに気付いた。無表情ながら感謝しつつ、業務用冷蔵庫を閉める。

バタン、と冷蔵庫の戸に手をついたまま、鳴狐は首をかしげた。

静か過ぎやしないか、と。

出撃を終えたり、出撃の合間の時間だったり、非番だったり、刀剣は広間にいることが多い。本丸唯一のテレビがここにしかないからだ。DVDを再生するだけのものならばまだあるが、外からの電波がきちんとはいるのは一台だけ。当たり障りのないバラエティーや旅番組やニュース、スポーツ番組など、政府が認可しているものを視聴できる。事実、先程洗濯物をたたんでいた時は、他の部屋から話し声がしていた。

刀剣の気配はあるのに、と広間へ入ると、確かに数名の刀剣がいた。テレビも付いており、どうやら旅番組だが音量が小さい。刀剣は人間に比べて耳がいいが、それでも小さいと思うほどだった。微量の音声を前に無声音で会話する刀剣というのは、中々異様だった。なにか悪巧みだろうか。

「あ、なき兄。しー」
「?」

先ほどまで一緒にいた五虎退が、テレビ前から鳴狐に言う。静かにと言われるまでもなく、恐ろしいほど無口で比較的大人しい性格なので、ただ足音を消しながら歩いた。テレビを見ていた刀剣が、お疲れ、と微かな声をかけてくる。それに頷いて返し、腰を下ろすと、獅子王が広間の隅を指差した。

「アレ。トモもあそこにいたぜ」

日の当たらない隅っこで、横になる小狐丸が見える。どうしてわざわざ日当たりの悪い場所にいるのだろうか。加えて、小狐丸が昼寝しているからとここまで気を使うだろうか、と失礼なことも思う。

獅子王や五虎退たちの反応から、何かあるらしいと腰をあげる。足音を立てず、まるで出撃中のように気配をおさえた。背を向けて眠っている小狐丸に歩み寄り、その寝息が一つではないことに気付き、鳴狐は目を細めた。

小狐丸の影に、獅子王の鵺を枕にする天守がいた。壁と小狐丸に挟まっているように見える。その隙間に五虎退の虎が埋まり、トモも丸まって寝息を立てていた。

日当たりの悪い場所なので、最初に天守が鵺(ツグミ)を誘って昼寝を始めたのだろう。彼女は日の光をあまり好んでいないのだ。そこに、遊んでいた虎たちや休んでいたトモや出撃を終えた小狐丸が混ざり、今の状態になったに違いない。こうも気持ち良さそうに眠られれば、音を立てるのははばかられる。

鳴狐はそっと離れ、先ほど腰を下ろした所に座る。獅子王や五虎退が、保護者のように笑っていた。

「俺も混ざりたかったんだけど隙間がなくてさ、ツグミずりーわ」
「日陰なのに気持ち良さそうです。今日は縁側でお昼寝出来ないから、ちょうどよかったのかもしれません」
「……よく、眠ってる」
「だろ?けど、えーと、二十分経つから、そろそろ起きるかもな」

主が既に写真におさめたらしいので、鳴狐はテレビをながめながら、昼寝が終わるのを待つことにした。

最初に起きたのは天守で、虎と狐と大きい狐に囲まれている状況に、無表情で困惑していた。


後日、縁側で昼寝する小狐丸に、虎や野鳥や野兎を盛り付ける天守が目撃された。


12
本丸は冷暖房完備だが、基本的にガラス戸を開け放っているので、エアコンをつけるのは夜くらいだ。昼間は扇風機と各自扇子やうちわで対応している。あと保冷剤やアイス。クールビズ本丸とはうちのことである。

畑仕事をしていると、縁側のちょうど影の部分で、二つに分けるタイプのアイスを開ける月ちゃんを見つけた。確かパピコ。ずりい。恨みがましく見てみるが、あいつは片方を加え、うちわで顔を仰ぎながらぼけっと座っている。月ちゃん、暑いのだめだもんな。冬場はけろっとしてるくせに。

「島くーん?もうちょっとなんだから頑張ろ」
「あーアイス食いてえ」
「え?ああ、月ちゃんか」

台さんが、「あ、倶利」と作業を止める。縁側を歩く倶利さんを、月ちゃんが呼び止めていた。残ったアイスを差し出している。倶利さんずりい。

倶利さんはそのまま月ちゃんの近くに座った。夏場、月ちゃんのいる場所は涼しいから分かる。

「……『倶利さん?アイス食べる?』」
「『馴れ合うつもりはない』って受け取る」
「『倶利さんって夏好きそう』」
「『肌の色は元々だ』」
「『パピコ似合うね。色的な意味で』」
「っふあっは!」

不意打ちだぜ台さん。変に吹き出しちまった。

「どやあ」
「女声上手すぎだし!って、あ、なんか倶利さんに睨まれてる?」
「ほんとだ。うん、さっさと終わらせて僕らもアイス食べよ」




13
鶴とやっくんと鳴と月。

「次の演練どうするかな……衣装交換はそろそろ飽きてくる」
「相手は毎回違いますから、単にこっちのモチベーションの話ですね!」
「スーツにサングラスはもうやっちまったからな。金かかるから、全員分用意すんのも厳しい」
「……女装?」
「鳴はチャレンジャーだねえ」
「あっ天守殿そこっ!そこが大変気持ちよく……!」
「俺は前に乱の着たけどな」
「あれ馬だったろ。女装だと太刀連中が事故だぞ。だがいいなそれ」
「着物とかじゃなくて普通の洋服なら安いと思う。太刀でも鶴は絶対似合うね。ミカはああ見えて筋肉がなあ……絶世の美女になるだろうに」
「素直に喜べんがまあいい。俺は左文字に期待だな」
「ばみも似合うぜ、女顔だからな。鳴兄はカツラかぶるか?」
「ショートの女の子もいるし大丈夫じゃないかな」
「……白い隊が組めそう」
「おお、本当だな。白しばりだと、俺とばみと鳴……あとイマノ。コタと蛍もいける」
「コギは?」
「いけると思っちまったのか?」




14
「清ってこの本丸で一番長いんだよね?」

朝食時に隣に座った月が、ぽつりと確認してきた。俺は主の初期刀で、折れてもいないから、紛れもなく最古参だ。

「そうだけど、何?」
「ん、いや、後で話す……」

俺は畑当番で憂鬱だったから、特に追求する気にもなれなかった。とりあえず、主に迷惑かけんなよ、とだけ言っておいた。

月の問いの真意を知ったのは、その日の夜だった。


翌日、夕餉終わりに俺は短刀(プラス蛍丸)に目配せする。彼らとは既に話を聞いており、このあとに予定している会議(仮)には参加する必要もない。なぜこんな二度手間じみた真似をしたかーー主に話を聞かれないためだ。月も参加不要なため、五虎退に誘導されることになっている。

ごちそうさま、と手を合わせた直後、片付けもそこそこに短刀が主に群がる。羨ましい混ぜろ、という言葉は飲み込んで、成り行きを見守る。見た目は子供だが流石というべきか、彼らはあっというまに主を連れ出した。月も五虎退の虎に絡まれて、広間を出て行く。あいつのことだから察してるかもしれないけど。

沸き立った短刀の行動に、他の刀剣があっけにとられている。俺はまだ誰も広間を出ていないことを確認して、主の出て行った障子を閉めた

「加州?何してんの?」
「皆どうしたんでしょう」

安定が俺を見て顔をしかめ、イチゴが呆然としていた。

「ちょっとみんな聞いてくれ。手短に済ませたいから単刀直入に聞くぞ。ーーーーこれ、誰のだ」

俺は隠し持っていたソレを掲げる。広間の空気が一瞬凍った。

視線を集めているのは一冊の雑誌だ。中途半端に洋服を引っ掛けた女性が横になり、顔を赤らめてこちらを見ている。恥ずかしそうにも自ら足を開いている様子は、中々加虐心を刺激するものだ。要はえろ本。俺たち的には春画とも言う。

突如投下された爆弾(えろ本)に、真っ先に立ち直ったのだ鶴さんだった。驚かすことを好み、驚かされることにも慣れているということか。

「待て清。春画なんぞあっておかしくないだろう?人間には劣るとはいえ、少なからず性欲はある。主がそれを許容しているし、猥談も珍しくないだろう」
「月が来てからは、控えるようになったがな」

トオルさんが頷く。それは俺も知ってる。最古参なんだから。というか、俺は主から、刀剣の性欲について相談されたこともあるんだ。

「俺は別にこれについて糾弾したいんじゃなくて。これを月の部屋に隠しっぱなしにしてたのは誰か、聞きたいんだよねえ」

再び凍る空気。凍りたかったのはこっちだよ畜生。

「月がさあ、なんか言いにくそうにしてた訳。『これ、私の部屋にあったんですけど、どうしよう』ってこっちがどうしようだよ。しかも『刀剣とはいえ男だから、その辺は理解してるよ。大丈夫』なんてフォローされた俺の気持ちわかる!?見た目同年代の女子に!えろ本渡されて諭された俺の気持ち!誰だよ置きっ放しにしたの……」
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