リボンはどう?




「やあ、こんにちは」

僕が月の寮のテラスに出ると、そこでくつろぐ一匹の猫。白と黒の牛柄で、吸血鬼の巣で平然とくつろぐ強者だ。ちなみに女の子らしい。

「いい天気だねー」
「なーう」

猫はテラスで昼寝をしようとしていたのか、僕が来ても顔を上げない。尻尾で床を叩くようにペタペタと動かしている。僕はその隣に座って、太陽の眩しさに目を細めた。

「眠いなあ……」
「みゃー」

だったら寝てればいいじゃない、と言いたげに鳴いて耳を動かす。昼更かしは慣れてるけど、眠いのは確かだ。それでも起きてこうしてるのは、多分この猫を見たいから。

草食動物はーーそうじゃなくても小動物ーー基本的に吸血鬼を避けるけど、この猫は例外らしい。僕が来てから猫が動かしたのは尻尾の先と耳だけだしね。動く気ゼロだ。

「野良だよね、君」
「にゃー」
「よく学園に……というか月の寮に入れたね。ご飯はどうしてるの?」
「なおん」

何言ってるか全っ然分からない。でも会話が成立してる気がして面白い。

「僕の猫になってくれる気はある?」
「……」
「首飾りなんてどう?」
「……」

顔の位置を変えて猫は丸くなった。首飾りがイコール首輪だって分かってるようだ。ああ、振られちゃったや僕。

「ごめん、冗談だよ」
「……」
「明日、お菓子用意してくるから」
「なう」

ご機嫌とりは成功。猫に低姿勢な自分がおかしかった。まあでも悪くないかも。僕が一人で小さく笑っていると、猫はおもむろに体を起こした。足音なく僕の傍に来ると、足にすり寄って来て丸くなる。

「はは、おやすみ」
「にー」

撫でてやりながら言うと、猫は僕をちらりと見上げてから目を閉じた。


fin
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