キスしようか



「……きりゅー」

ベッドに座って愛銃の手入れをする錐生に呼びかける。床に座ってる私は私で、自分の対吸血鬼武器の手入れは終えている。

「きーりゅーうー……」
「…………」
「うう……きりゅー」

なんてこった、反抗期か!私より銃が大事かコノヤロウ、確かに私も相棒は大事だけどね!

「きりゅー……」
「…………」
「きりゅうきりゅう」
「…………」
「…………」
「…………」
「零」
「何だ」
「このクーデレめ」
「何の話だ」

前に、零って呼べって言われてたの思い出した。「錐生」の方がシックリくるんだけどなあ。まあ、こっち向いてくれたからヨシ。

「きりゅ……零、零」
「……どうした?」
「ちゅーしよ」
「は?」
「ちゅーしようよ」

零の手から部品が落ちる所だった。あっぶないなあもう。そんなに変な事言ったかな。

「……急にどうした」
「したくなったから。零、銃(ローズ)ばっかりで構ってくんないし」
「お前な……」
「してくんないの……?」

上目遣いで言ってみる。私は知ってるんだぞ、君がこれに弱いってな!おいおい溜め息なんぞ吐きよって何だよもう。不貞腐れちゃうぞ。

「……すぐ組み上げるから、そんな顔すんな」

ほーれみろ!ローズざまあふはははは。私と零の貴重なお休みが、商売道具の手入れだけなんて悲し過ぎるから!

軽やかな金属音を聞きながら、手早く部品を組んでいく手元を見つめる。かっくいいなあもう。

「……ん、終わり」
「やたっ。構ってー」
「分かったよ、こっち来い」
「んー」

よいしょとベッドに上がって、腕を零の体に巻き付けた。逞しいよね、やっぱり男だ。

「はー落ち着くー」
「……仕方ねーな、お前は」
「零、零。ちゅーしよ」
「はいはい」

唇に軽く触れた柔らかさににんまり笑う。私からまた唇を寄せると、今度は離した途端、噛み付くようなキスをくれた。窒息するかと思ったよ本気で。

「ぷは……っ。息、させて!」
「構ってやってんだから文句言うな」
「くっ……」

零が目の前でにやりと笑った。このSめ。

「……でも好きー」
「……お前今日ほんと変だよな」
「失礼ね。でも好き」
「ああ、愛してる」
「っ……不意打ちはやめようか」

呼吸困難でやっと息が落ち着いたのに、次は心臓をどうにかする気ですか。ぎゅうぎゅう抱き締めたら、同じくらい抱き締め返してくれた。思いっきりじゃないよもちろん、そんな事したら私の内臓が大変な事になるからね。

「ぜろぉ」
「ん?」
「ちゅーしよー」

へらっと言うと、零はまたにやりと笑って、顔を近付けてきた。ああ、これはまた窒息コースだと分かったけど、臨む所だと零の首に腕を回した。


fin
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