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(ガラクタのポチの元の話)
(ちゃんと長編にするつもりだったんですが、何度か書き直すうちに力尽きたので、最新verの冒頭だけ投げちゃう……)




 明るい茶髪の男が倒れる。
 男は後ろ手で拘束され、足にも枷がはめられているが、意識はしっかりしている。バランスを崩したために転倒したものの、悪態をつく程度には元気だった。童顔には似合わないほど鍛えている茶髪の男だが、拘束を破壊することはできない。
 それを見て、島国の民族衣装をまとった男が舌打ちをする。仲間が得体のしれない罠にかかったと分かっても、敵の相手で手いっぱいなのだ。敵は、口元だけの狐面をつけた、左が茶で右が緑というオッドアイの男。珍しく、己と同等の強さを持った能力者だった。
 民族衣装の男とともに狐面の相手をしていた若い女が、拘束された仲間へと駆け出す。
 しかし、救出対象であるはずの仲間がその動きを制した。

「来ちゃ駄目だ!コレ、強制"絶"の罠みたい!」
「けど、シャルは!」
「まあ、何とかしてみるよ。だからマチはノブナガとそいつを何とかして!」

 女は「さっさとどうにかしなよ!」と言い捨てて、敵の排除任務に戻る。罠の発動条件が不明な以上、うかつには近寄れない。
 そこに、別の女が現れた。途端、狐面の攻撃が激化し、民族衣装の男と女を圧倒する。
 深くフードを被った女は、長い距離をたった数歩で埋めると、拘束された男を簡単にうつぶせにしてみせた。男が持ち前の運動能力で逃れようとすると、女は、拘束具に仕込んでいた麻酔をうつ。
 フードの女は、抵抗しなくなった男をかつぎあげる。そしてそのまま、逃走のために床をけった。

「くそ、待ちやがれ!」

 そう言われて待つ訳もなく。
 しかし、目の前に部分展開した氷壁に行く手を阻まれる。己の防御能力だ。発動理由を探そうと目を凝らし、周囲に糸が張り巡らされているのを確認する。氷壁に体当たりをしてみるが、丈夫に出来ている己の氷壁はともかく、糸はきしみもしなかった。
 狐面の男が二人を相手にしている以上、加勢は望めない。
 フードの女は、すっかり静かになった男を床におろすと、腰を低くして渾身の力で氷壁を殴りつけた。氷壁は自動修復機能の為に傷一つつかないが、糸を引きちぎることに成功する。
 氷壁が空気に溶けて消えると、女は男をかつぎなおして逃走を再開した。
 狐面の男はそれを確認し、二人から少しの距離を取る。二人が痛いほどの殺気を叩きつけてくる一方、男の目的はあくまでも足止めだった。殺すことは考えず、床に拳を、近くにある柱に蹴りを放つ。
 現在地は、高層ビルの二十階だ。
 激しい戦闘でいくつもの支柱を破壊されたビルは、狐面の男にとどめをさされたのだった。
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