31.君を閉じ込めたい

大尉の首に挟まっていたレシート。そこに隠されたメッセージを辿り、一台のトラックを見つけた。車を降りて、道路に居る男に声をかける。トラックに死体ということは、この男たちが犯人なのだろう。

「すみません、この路地狭いから譲ってもらえますか?傷付けたくないので」

荷台のドアの隙間から子供たちの声が聞こえた。どうやら切羽詰まった様子だ。全く、この町の犯罪発生率はどうかしている。コナンくんや、周りの子どもたちが巻き込まれる確率も。

「探偵の兄ちゃん…助けて〜」
「あれ?君たち、何をしてるんだい?そんなところで」

近付くと、犯人と思われる男が焦ったのか、僕までも荷台に乗せようとする。完全にクロのようだから、遠慮はいらないと見た。眼鏡をかけている。壊れるだろうとは思ったが、そのまま一発殴った。男は地面に倒れる。

「言ったでしょ?傷付けたくないから、譲ってくれと。あなたもやります?」

もう一人の男に向かって言うと、そちらは簡単に引き下がった。冷え切った体の子供たちを荷台から降ろす。これは誘拐か?おそらく中に死体があるということは、何らかの理由で子供たちがそれを発見して、口封じのために閉じ込められたのか?

「コナンくん?」

奥に居るまま一向に出てこない少年に声をかける。彼にしては珍しく、焦った表情を見せた。

「名前さんが動かないんだ」

慌てて荷台に乗り込み、彼の方へ駆け寄る。名前が横たわっていた。聞きたいことはたくさんある。休日は部屋着で転がってるじゃないか。どうして今日に限ってこんな目に遭遇してるんだ。急いで彼女を抱き上げ、外に出る。日の下に出ると、血の気が引いて顔色は真っ白だった。赤い口紅で覆い隠されたくちびるの色はきっと紫だ。

「名前さん、僕たちに上着を貸してくださって」
「大丈夫。体を温めたらすぐに良くなるさ」

心配そうに見上げてくる子どもたちを安心させるため、笑顔でそう言った。車の後部座席より、助手席のが日差しが当たる。彼女を助手席に乗せ、車に置いてあった毛布で包む。暖房をつけて車内を温めた。ここから家まで飛ばして20分ほどか。どこかで温かい飲み物を買いたい。そう思っていると、車の窓を小さな手がノックした。

「博士の家で沸かしたから」
「助かるよ、ありがとう。君も早く温まるんだよ。いいかい?」

コナンくんが魔法瓶に淹れた白湯をくれた。開けると温かく湯気が立つけれど、やけどするような熱さではないようだ
。コナンくんは通報したり、やることが多そうだ。車を出す。車内は随分暖まったが、彼女は目覚める気配がない。
今回のことは、さすがに肝が冷えた。僕の目の届かないところで、危険な目に合うなんてことは金輪際無くしたい。事件はおおよそ予測不可能だ。だからと言ってあの家に閉じ込めるようなことはできない。さて、これからどうしようか。