*小説 info アネモネ


おりくゅとハッピーハッピー飲み会

第三者目線
モブ腐女子が出来てます

わりと読者人気の高いモブ宮ちゃん

ここから書籍に入っていない内容をこの章でやっていきます

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こんばんは。院生室のモブ宮です。
専攻は心理学、趣味はpixiv漁りの腐女子です。
今日は色々やることに区切りがついたので院生室の数人と居酒屋で飲んでいるのですが…。
「パンケーキ…絶対…頼む…」
「女子か」
なんと院生の中でも酔わなさそうなイメージの汐井織くんが真っ先に潰れてしまいました。
それまだハイボールの3分の1も飲んでないよな?と思いながら。
織くんは頭脳明晰、ハイスペック、顔がいい、要は見ていると減った萌えを回復できるタイプのイケメンです。
同期に突っ込まれているのをよそに、織くんは「ん〜」と気の抜けた声を上げています。
「いやだ…パンケーキ…食べるまで…帰れないからぁ…」
「どうしようね」
「こんなキャラだったっけ」
「汐井〜こっちのウーロンハイ(烏龍茶)飲んどきな」
「家に送れるようにちゃんと住所出して」
女子に色々言われながら織くんはお箸で自分の皿の唐揚げをなんとも言えない表情でつついている。
織くんは大変顔がいいです。
顔がいい男がお酒に弱いのは結構萌えだと思う、私は。
「れ〜………」
そのまま拗ねたように呟いた。
「れー?何?」
「れい…迎えにきてもらう……」
「ん?誰?」
「彼女?!」
酔っているのをいい事に野次馬のように声をかけると、織くんは顔を上げた。
「彼女じゃない…っ」
ちょっとだけ語尾を強めて携帯を手に取る。
「れーにきてもらう……」
そう言ってライン通話をかけ始めたので思わず無言になって聞き耳を立てた。
『もしもし織くん?』
微かに聞こえた声は男の子っぽい中性的な声だった。
「れー酔った……今すぐむかえにきて……うん………のみかい……」
そうやって場所を伝えると、電話が切れてぼんやりしながらまたジョッキの烏龍茶を飲んだ。
「れいは何者?」
「誰?」
「れー一緒…暮らしてる…」
「家族?」
「違う…」
また唐揚げをつついて口に運んだので、大丈夫か心配しつつ正直ギャップ萌えだと思った。
しかもそのまま織くんは眠ってしまいそうなぐらいうとうとしていた。
そんな様子を眺めながら20分ぐらい経つと、お連れ様がきたと店員が声をかけにきた。
遂にれいとやらがきたのかと、みんな一斉にそちらを見る。
「こんばんはぁ。織くんが迷惑かけちゃったみたいでごめんなさい」
その男はにこっと柔らかく微笑んで頭を下げた。
え、やたらイケメンがきた。
ゲームの中に出てくるみたいな小柄で愛らしい容姿にしっかりセットされたピンクのメッシュ入りの髪に、整った顔。
織くんとここだけ顔面偏差値高っ…と思いながら呆気に取られて見ていた。
イケメンがイケメンを連れてきた。
「あなたがれいさん?どういう関係ですか?」
同期の1人が代わりに尋ねてくれた。
「え、どういうって…えっと〜一緒に住んでるの!…です。高校の時からの、まぁ大親友ってとこ?織くん大丈夫?」
そう言って、そのれいは織くんの隣にしゃがんだ。
「…れ〜!!」
「?!」
そう言って織くんはれいの腕に女子のようにしがみついたので思わず何事かと私は口元を押さえた。
「酔ったのぉ?」
さも当たり前のようにれいは織くんの頭を撫でた。
プライドの高い織くんにそんな事する人いるんだ、と唖然とした。
というか何を、何を見せられている?!
え、目の前で顔のいいホモが展開されてるんですけど今すぐトイレに行って叫びたいしこのまま録画がしたい。
「酔ったぁ……れー…迎えにきてくれないと…帰れない…パンケーキ…」
「ねぇ、何言ってんのか分かんないよ?」
そう言ってよしよし頭を撫でている。
とても萌えだった。
あれ、彼女のポジションだよねそれ。どうした織くん。
「ごめんね、織くん酒めっちゃ弱くて。迷惑かけたよね」
そうみんなに気さくに声をかけるので、全然、むしろご褒美ですと思いながら首を振った。
「全然大丈夫です。いつもこんな感じなんですか?」
本音が、というか全力で詳しく聞きたい、できれば。
「うん、酔ったらいつもこんなだよ〜」
「れ〜…」
織くんはそのままがばっとれいに横から抱きついた。
れいはそれに苦笑して、それでも愛しそうな非常に親しげな視線を向けた。
え、何その視線は。やだ〜〜好き(2人が)。
目の前で起きていることに混乱しながら質問すると一気に周りがその後に続いた。
「え、めちゃくちゃ距離狭いですね!」
「ぶっちゃけどういう関係?!」
「れいさん何者?」
矢継ぎ早に質問されて、れいは顎に指を当てて口をぽかーんと開けたまま困ったように固まった。
「えーー………内緒」
人差し指を自分の唇に笑ってイケメンにだけ許される妖艶な笑みを浮かべた。
は〜……満点……五百億点です……。え、え??
普通にアイドルのような笑みに全員ノックアウトされてる中、織くんだけがれいに甘えていた。
「れーは、子供関係の大学出てから今はホストしてるよぉ。みんなのことも教えて欲しいなぁ。あと敬語が苦手」
れいがにこにこ笑うと、織くんが、え…とちょっと不安そうに顔を上げるが甘やかすように両手で頭を撫でていた。
付き合ってますよね???
隠す気ない…?
えーホモ…ホモがいる…。
内心めちゃくちゃにやにやしながら、いや多分現実にもにやにやしていたかもしれない。
れいの巧みなトークによって、女子のことが把握されていく。
え、ホストすごい。ホストと飲んでるの?すごい。
一瞬で打ち解けていくれいに凄い凄いと思いながら、網膜に焼き付けるが如く2人を見ていた。
多分これで3ヶ月ぐらい生きられる。
「よし、織くん帰ろっかぁ…パンケーキね、家で焼いたげるよ」
「うん…」
この2人が毎日家で一緒に過ごしてると思うと本当に最高だなと思いながら、ずっと応援しようと思った。
料理もできるのか…最高。
帰らないで〜3時間ぐらい居ていいんだよと思いながら。
「あ、気が向いたらまた飲み会呼んでね〜織くんの話聞かせて欲しいな。はい、名刺。モブ宮ちゃん」
そう言ってとても笑顔でピンク色の名刺を渡されたので、今だけ乙女の夢女子になってしまう…と思いながら有り難く受け取った。
裏返すとれいの写真とラインのQRコードが載ってあった。
というかよく見たら織くんがれいをじーっと見ていた。嫉妬だろうか、かわいい。
「はい…いつでも、歓迎です」
「うん、今日の事は内緒にしてね。織くん困っちゃうから」
「勿論です」
「ん、じゃあこれ飲み代と介抱代ね」
そう言って、れいはさらっと机の端に2万円を置いた。
「いいですこんな大金受け取れません…!」
「えへへ、可愛い女の子たちに出させられないでしょ。楽しかったから。ほら、行くよ織くん」
にこっと笑ってれいは織くんと肩を組んでそのまま出口の方へと消えていった。
「えー………やばい、今の見た?」
「見た〜!イケメンすぎる」
「やばい」
「完璧すぎる」
「絶対付き合ってる、あれ」
「分かる〜!」
「名刺見せて検索かけよ」
言われるまま名刺をみんなに渡すとふと横に黄色いハンカチが落ちているのを見つけた。
「あれ織くん落としていった…?」
と思いながらそれを拾うと、急いでレジの方まで追いかける。
下りのエレベーターに乗り込んでいなかったらまだ居るだろうと思ってきょろきょろと見回した時、視界に入った光景で思わず息が止まりそうになった。
「んっ…」
丁度玄関とエレベーターホールの死角になった場所で、れいが織くんを壁ドンしながらディープキスをしていた。
え…ドラマ…?
あまりの光景に夢でも見てるのかなと思いながら萌えが天元突破した。
「当たり前だろ」
そう、1度も聴いたことないぐらいの低い声で囁いて、れいは織くんの頭を撫でた。
れいおりだった…。
確定してしまった受け攻めに感動していると、ちらりとこちらを見たれいと目が合った。
やばい、終わった…。
「織くん、座って待とうね」
そう言って、れいは織くんをベンチに座らせて、こちらに駆け寄ってきてくれた。
「ごめんね、嫌なもの見せちゃって」
「全然!応援、します…」
意味分からないぐらいの本音が出て、真っ直ぐ見つめてくる綺麗な目に居たたまれなくなった。
こんな一介の腐女子を相手にしてくれてありがとう…と思いながら。
「あ、それ織くんのだよね。持ってきてくれてありがとう」
れいは手に持っているハンカチに自分から気付いて受け取ってくれた。
「いえいえ」
語彙力が無くなって近所のおばちゃんみたいになってしまった。むしろなりたい。
「付き合ってるけど、絶対内緒にしてね。織くん、俺のだから」
囁くように唇に指を当てて悪戯っ子みたいに笑うと、そのまま織くんの隣に帰っていった。
と、突然の…独占欲と俺…。
死んでしまう…と思いながら、本当に名残惜しいがその場を後にした。
今日からファンになります。
そう思いながら飲みの席に戻って検索をかける会に参加した。
そうして思う存分今日の夢のような幸せを噛み締めた。
今日私は部屋の壁になった。
モブ宮は6ヶ月は生きられます。
神様、ありがとう。
2人の未来に幸あれ。