*小説 info アネモネ


満たされる甘さ

今日のパンケーキも甘かった。
とても甘かった気がする。

ぼんやりと生クリームの乗ったパンケーキを切り分けて口に運びながら俺───織は考えていた。
目の前でパンケーキをお皿の生クリームにたっぷりとつけている全身ピンクの小柄な青年は、零衣。
ピンクのカーディガンに、双子を見分ける為のピンク色のメッシュがトレードマークだ。
パンケーキを頬張って、んーっと美味しそうに顔を綻ばせている姿は、なんだか幼稚園児を見ているようでとても愛らしさを感じる。
一応俺の恋人なのだ。
まだ慣れないその響きのむず痒さを、乗っていたドライフルーツを食べることで飲み込んだ。
告白されてから、零衣は今まで以上にずっと一緒にいてくれる。
いつも一緒にいてくれる安心感はとてもありがたいものだが、零衣は俺だけでいいのだろうか?
友達も多くいつでも誰とでも仲がいい零衣は、勿論俺の周りの人間ともすぐに馴染んだし、今は近くにいることが当たり前になって前ほど誰も一緒に居ることに驚かなくなった。
零衣の隣にはいつも双子の蒼音がいたからなんというか変な感じだけど、零衣本人はあまり気にしていないらしい。
聞いても、まぁ、あおも兄弟とかとくっ付くよ多分〜などと言われるのでいろんな意味でそれ以上は突っ込まないようにしている。
「……」
もう一口パンケーキを口に運んだ。
甘くて柔らかくてまだ少し温かい。

先日、零衣に初めて抱かれてしまった。
…なんていうか、凄かった…。
思い出すだけでも顔が赤くなりそうになるのをなんとか振り払う。
まさか零衣に抱かれるなんて全く思ってなかったし、本人も初めはその気はなかったようなのに。
初めの頃は、今後1年間は、不純異性交遊になるからそういうのはだめだときっぱり断った筈だったのに。
気が付けば約束は半年になり、3ヶ月になり、結局1ヶ月半経ったあの日、零衣の押しに負けて体を許してしまった。
零衣曰くこれでもめちゃくちゃ我慢したらしいのだが。
しかも俺が抱くと思って押し倒したのに、きょとんとした顔で上下ひっくり返されて、さらに混乱が止まらなかった。
俺のあの時の覚悟を返して欲しい。
結果ずぶずぶになるまで丁寧に丁寧に抱かれて、性にもなくあられのない声を出してしまい、想像以上の快楽を教えられてしまった。
もう正直あんな思いはしばらくしたくない…。
初めてだったのに、気持ち良すぎて自分を見失うようで少し怖かった。
なんでそんな…。
ちらりと零衣に視線をやって、はっとしてすぐに逸らした。
なんでそんな上手なの?
ちょっと、聞こうにも聞けない。
可愛い顔してあんなに上手なのは勘弁してほしい。
比べる対象がいないから分からないが、それでもあいつが上手なのは理解できた。
初めに「れー正直すごく上手だから覚悟した方がいいよ?」なんて言われたが、覚悟も理解も追いつく前に行為が始まってしまった。
今まで何人ぐらいと付き合って何人ぐらいとしたの?なんて聞いてみたいが、聞いたら間違いなく落ち込む気がするから聞くことができない。
零衣ならあっけらかんと正直に答えてくれそうだが、それが余計に…多分軽くショックを受ける気がしてならない。
ちなみにこの時想像していた数の約5倍の解答が返ってくるとこを織は知る由もなかった。

「…くん、織くん?」
聴き慣れた声にはっと意識が現実に引き戻される。
「へ⁉」
覗き込むように零衣の顔が真ん前まで寄ってきている。
「ちょ、近い近い!」
そっと椅子の方に押し返すと、零衣はぷくっと頰を膨らませて可愛く口を尖らせた。
「だって織くん考え事してるみたいだったんだもん。構ってよ〜」
「ご、ごめん…」
「マリッジブルーなのかなぁ?」
首を傾げている零衣に一瞬考えて言葉を返した。
「それは結婚前に使う言葉だろ」
「そうなの?」
「結婚を控えた人が突然不安や憂鬱を覚える時に使う言葉だそ」
「あ、そうだったんだー!零衣全然知らずに使ってた〜!」
なるほど〜!と言いながら沢山頷いている零衣に小さめの溜息をついた。
時々こういうところがあるからな…でも素直に言ったことを飲み込んでくれるのでそこは好感を持てている。
「んーじゃあ、何を考えてたのかな〜?お勉強のことかな〜?うーん、違うな!パンケーキのことかな?悩み事かな?それとも…零衣のことかな!」
最後に満面の笑みを浮かべられ、その曇りのない笑顔に思わず気持ちが緩んだ。
「んー…内緒」
「えー!ケチケチ!」
零衣のことだよと思いつつ、ころころ変わる表情で腕を振り回している零衣を眺めて笑った。
「もっと素直になってくれるようにれ〜は頑張るもんね!れ〜ゎ、令和だから、零衣の時代!」
「何を頑張るんだよ。もうこれ以上ないぐらい素直にしてるだろ?あとその理屈は分からない」
「えー‼もう…そんなことないよ〜。まだまだ素直になれるよね?この前のえっちの時は可愛かったのになぁ」
「ば…っ」
周りには聞こえてないだろうがこんな公共の場で…!
「可愛かったのにねぇ」
右手が伸びてきて左の頰を優しく包み込むように触れられる。
水色とピンクの不思議な色合いのきらきらした瞳が覗き込んでくるのがいたたまれなくなって、思わず目線を逸らした。
まだまっすぐ目を覗き込んで喋りかけられるのに慣れない。
不意打ちに今みたいなキザな仕草をしてくるのはなんとも恥ずかしくなるのでやめてほしい。
「ばか、やめろ…」
「えへへー可愛い、れーと自撮りを撮ろう?織くん」
いつの間にかぴたっと右横に引っ付いてきて、流れるように女子のような愛嬌でカメラを構えられ笑った。
写真にぐらいかっこよく写りたい…。
と、なんとか切り替えてピースサインをしながら、すっかり零衣のペースに呑まれているなと心の中でまた大きな溜息を吐いた。
「はいチーズ!…送るね!」
自撮りを撮り慣れているであろう零衣の写真は上手で内心満足していた。

「はぁ〜楽しかったぁ!」
その後2人でしばらく雑談して、お店を出て外を歩きながら腕を組まれていた。
小柄で少し髪の長い零衣は、服装も相まって正直こうしていると女の子と間違えられてもおかしくないぐらいで、いちいち人から見られるような事もなくて自分としてはありがたい。
「そうだな、限定のパンケーキも美味しかった、し…」
カシャン、と背中が柔らかい衝撃に包まれた。
すっかり気を抜いていたので一瞬何が起こったのか分からなかった。
「え…」
路地に入ったところで、人目につかない公園の木陰のフェンスに体を押し付けられていた。
所謂壁ドンというやつだ。
「零衣…?」
まだ混乱が収まらず動こうとすると零衣に強い力で抑えられた。
そのたびにガシャンとフェンスが揺れる音がする。
早鐘を打つ鼓動に必死で気付かない振りをしていると零衣の口許が緩んで妖艶に微笑みかけられた。
「やっと2人っきりになれたね」
「…んっ…!」
押し付けるように口を塞がれる。
零衣の甘い香水の匂いがふわっと鼻に抜け、キスだけは散々されてきた身体は無意識的にそれを受け入れようと口許を開いた。
「ぁ…」
開いた隙間から零衣の舌がぬるりと差し込まれて、同時に太腿を股間に押し当てられた。
「んっ……」
突然の刺激と、逃げられないようにがっつりホールドされた体勢で、なす術も無く零衣の舌に弄ばれる。
吸い出しては絡められ、わざと音を立てるように吸われたり、口内を擦られたりで段々と頭がぼんやりしてくる。
「ふ…ぅ…」
断続的に太腿から与えられる刺激と快感に力も入らなくなって、行き先を失った右手が思わず零衣の背中を掴んだ。
こんな…だめなのに…外で…。
薄目を開いても零衣の整った顔が0距離にある事に耐えられず、目を瞑りながら与えられる快楽を享受するしかなかった。
「…っ」
時々聴こえる零衣の雄っぽい吐息に興奮を煽られながら、完全に縋り付くように両手で零衣にしがみ付く。
酸欠になりそうなぐらいぼぅっとし始めた頃、ようやく零衣はその舌を解放してくれた。
「はぁ……」
浅い息を吐きながら、力尽きたように零衣の肩に顔を預けた。
「こここんなにしちゃってさぁ…」
「あっ…」
突然股間を鷲掴みにされ、そのまま擦り上げるように半勃ちのそこに指を這わされた。
ぞくぞくと這い上がるような快感に思わず体がびくりと跳ねた。
「れ〜が責任取ってあげるよ。ね、エッチなことしようよ?…ホテルで」
にこりと笑顔を浮かべられ、なんとか残った理性でイヤイヤと首を振った。
「だめだ…」
「どうして?」
不思議そうに聞いてくるが、どこか半分勝ちを確信しているような表情にも見えなくもなかった。
「お金、無いし…」
「れーが奢ってあげるよ」
金欠なのは事実だがそういう問題では無い。
「それはもっと嫌だ…」
「じゃあどうしてかなぁ…前はあんなに気持ち良さそうにしてくれたのに…」
「だって、あんな…あんな風になるのは、もう…」
あの時、本当に良すぎて、自分がなにか変わってしまいそうですごく怖かった。
黙っていると、ぐっと零衣に頭ごと抱き寄せられ、耳元で囁かれる。
「大丈夫だよ。…これから零衣好みにしてあげるから……観念して?」
「っ…」
耳を指でなぞられ、予想していなかった刺激に体がピクリと震えた。
「じゃ、行こ?」
手を繋がれ、笑顔で引っ張ってきた零衣に、俺は───
どうしてももう一度嫌だと言う事が出来なかった。


「お、ふ、とーん!やったー!」
ぴょんと跳ねてベッドにダイブするその様はさっきまでのイケメンはどうしたと言いたくなるぐらいに子供っぽくなんというか気が抜けてしまった。
壁にアート作品なんかが掛かっていて高級そうで綺麗な部屋といった感じで、人生2度目のラブホテルにまだ現実感がなくきょろきょろ辺りを見回してしまう。
高校生なのにこんな簡単に入れてしまっていいのだろうかと思いながら、ひとまず胸を撫で下ろした。
対して零衣は「お湯入れてくるねー!」とお風呂場に走って行ってしまった。
「慣れてる…」
思わず独り言を言いながら、どうしていいか分からなくなった俺は、とりあえず側にあったソファに座って緊張しながら零衣が戻ってくるのを待つことにした。
しばらくするとお風呂場から微かな水音が聞こえてきて零衣がひょっこりと顔を覗かせた。
「織くん」
嬉しそうに微笑むと、俺の膝の上にちょこんと対面するように座ってぎゅっと頭ごと抱き締めてくれた。
優しく抱擁されオキシトシンが沢山出ているのか、幸せを感じながら気付かないうちに首に着けた指輪が通ったネックレスのチェーンを外されていた。
「可愛いネックレスだね」
「…零衣も貸して」
背中に腕を回し、同じように手探りで零衣のネックレスのチェーンを外した。
ピンク色の土星のようなネックレスをそっと机の上に置く。
蒼音とお揃いで着けているのを知らない訳でもないが、とにかく零衣はピンク色の物を好む。
お揃いいいなと思いつつ、少し拗ねたのに気付かれないようにぎゅっと零衣を抱きしめ返した。
「ありがと」
ちゅ、と額にキスされて、それだけで頰が熱を持つのを感じる。
「織くんとも今度お揃いが欲しいね」
と笑顔で頭を撫でられ、もしかして心を読まれたのか?と内心どきどきしつつ、俺は素直に頷いた。
「そんな緊張しちゃやだよ」
左の腰に触れながらズボンに指を差し入れられ、反対の手はカチャカチャと腰のベルトを緩めている。
「れーだって興奮してるんだから」
小さく囁かれ、下着ごとするするとズボンを下におろされていく。
零衣からここで逃げられないことは分かっているし、もう抵抗しても無駄だとされるがままにしているとあっという間に全身脱がされてしまった。
全裸を見られるのが少し気恥ずかしく「零衣も早く脱げよ」と多少冷たく言うが、全く気にした様子もないように素早く零衣も全ての服を脱いだ。
綺麗な薄いピンク色をしたその象徴に嫌でも視線がいってしまい、見ないようにその場を立った。
「特別にシャワーしっかり浴びさせてあげるね」
「シャワー浴びないなんてないだろ」
多分…。
「え?れーはこのまま咥えられるよ?」
「…シャワー浴びる」
放っておいたらそうされかねないので、そそくさと逃げるようにお風呂の方に向かった。
零衣に身体を洗われるようなこともなく、安心してしばらく湯船に浸かっていると、目の前に座った零衣が、ぎゅうっと上目遣いで抱きしめてきた。
「あったかーい。幸せ…」
顔を綻ばせて笑う零衣に思わず可愛いなと思いながら頭を撫でていると、不意にその口がかぷりと食べ物を見つけたかのように俺の肩を甘噛みした。
「零衣…」
そのまま舌をツーと伝わせて乳首に持っていくと、引っ掛けるようにそこを舌で弄ばれた。
重点的な刺激にびくりと肩が震える。
どれぐらいそうしていたのだろうか、刺激を与えられるたび鼓動が早くなり、体が火照って汗が滲む。
ホメオスタシスのバランスがおかしくなっているのだろうか、ぼんやりする頭でそんなことを考えながらなんとか零衣の舌から逃げようと少し身体を捩った。
「あれ、やっぱりベッドが好き?のぼせないうちに行こっか」
言われるがままに立つのを手伝って貰うが、少し硬くなっている零衣のそこと肌が接触するのを感じて言い表せない気恥ずかしさを感じていた。


「大丈夫?ごめんね…はいお水」
少しのぼせてしまったみたいな織くんにホテルの冷蔵庫のお水を飲ませて、俺───零衣はベッドサイドに一緒に座って熱が引くのを待った。
ちょっと長風呂しちゃったかなぁ?
頭をずっと撫でてあげながら、織くんの回復を待っていると、だんだん織くんの赤くなった顔が元の色白さを取り戻していった。
「ありがとう…」
その声にほっとして、うんと言いながら横から抱きしめた。
織くんは背も高くて抱きしめたら幸せだし、顔もカッコいいし、れーに優しいから大好き。
すきすきと抱きしめていると、今度は織くんが頭を撫でてくれてもっと幸せな気持ちになった。
「今度はれーがお礼してあげるねっ」
そのままぺろぺろと美味しそうに織くんの肌をだんだん下の方に舐めていくと脇腹を通ったあたりで身体がビクッと反応した。
この辺が弱いのかな?
「んっ…!」
重点的に脇腹の辺りを舐めると、くすぐったいのかビクビクと身体を揺らしながら、声にならない声を漏らした。
その声にどうしようもなく身体が反応して、自分の物が熱を持っていくのが分かる。
早くいっぱいえっちなことしたい…。
と思いながら今度は舌を太腿の付け根の方に這わせた。
「んぁ…っ」
やっぱりここも好きだよね。
ちゅうちゅうと太腿を吸ったり舐めたり動かしていくと、焦れったそうに熱を帯びた目がこちらを覗いているのに気が付いたが、無視するように今度は反対側の脚をツーっと舌でなぞった。
その度にびくびくと身体を揺らして声を漏らす姿が愛おしい。
どうして触ってくれないの?と言いたげなその目を見てどうしようもなく興奮を煽られていく。
「ここも欲しいの?」
「っあ…!」
舌でペロッと亀頭を舐めると、織くんは恥ずかしそうにこくこくと頷いた。
「可愛い…。んっ…」
「は、あっ…!」
一気に喉の奥まで織くんの性器を咥え込むと、驚いたようにそこがびくんと震えた。
「んぅ…」
ゆっくりと頭を上下させるとそれに反応して織くんのものが脈打ち、れーに反応してくれてることが嬉しくなって益々そこを激しく動かした。
同時に右手で乳首を弄ってあげると、快感に耐えるように織くんはぎゅっと目を瞑ったが、その少しの変化まで見逃す事はなかった。
「ひゃんと、みて…?…れ、織くんの…ん…っ、おちんちん、たべてるよ…」
わざと見せつけるような仕草で、先端を咥えてカリの部分を卑猥な音を立てながらぐりっとなぞった。
「ふぁっ…あっ…れぇ…」
声が我慢できずに織くんは何度も身体を跳ねさせて潤んだ目でこちらを見ていた。
じゅっと吸い込むと、口いっぱいにえっちな苦い味が広がって、一滴も零さないように全部喉の奥に飲み込みながらフェラを続けた。
「ぁ…」
乳首も気持ちいいみたいで、反対側もこりこりと刺激を与えると、身震いしながら声を漏らしてくれた。
「ん…っ、織くんいきたい?イってもいいんだよ…」
大好きな織くんのおちんちんをじゅぶじゅぶと音を立てて吸い上げながら舌で弄りつつ、左手で竿を強く擦ってあげると一際大きくそこが波打った。
「あ、ああっ…!」
びゅっと口の中に熱さと苦味が広がって、一旦それを口の中に溜める。
べーと緩く口を開けて精液を見せてあげると狼狽えながら織くんは顔を真っ赤にした。
「んっ」
ごくりと喉を鳴らして飲み込むと、益々泣きそうな目で織くんはこちらを見上げていた。
「れ…はぁ……飲まないで」
「やだ。織くんのミルク美味しい〜」
目の前で起こったことが信じられないかのように、織くんはまだ顔を真っ赤にしながら涙目で困ったような顔をしていた。
その姿に無性に性欲を煽られて、今度は床ドンするみたいに左手を織くんの顔の横につきながら、薄く笑みを浮かべた。
「織…俺のも舐めれる?」
突然の呼び捨てに驚いたのか、一瞬固まった織くんは、その後女の子みたいに恥ずかしそうに恐る恐るこくんと頷いた。

俺だけ座って、硬く勃ちあがった自分の物を寝転んでいる体勢の織くんの方に向けてあげると、しばらく戸惑っていたが少しして、ちゅ、と先端に口付けしてくれた。
めちゃくちゃかわいい…。
織くんが自分のを咥えようとしてくれているのがまだ信じられなくて、その様子を食い入るように見つめてしまった。
「んっ…」
しばらくして覚悟を決めたかのようにぱくっと亀頭を咥えられると、その刺激にじわっとカウパーが漏れた。
そのまま1センチぐらい咥えて、心配そうにこちらを上目遣いで見上げる姿にどうしようもなく興奮して、益々そこが熱くなるのを感じた。
「可愛い…織くん…すっごい気持ちいいよ…」
それを聞くと安心したようにまたぺろっと控えめに裏筋を舐められた。
うわ…織くんかわいい。
思わずがつがつと口の中を犯したくなる衝動を必死で我慢して、俺はこっそり用意していたローションと小型のローターを手に取った。
ローションを手に馴染ませるように温めて、織くんのお尻にそっと触れるときゅっと驚いたようにそこが窄まった。
「大丈夫…続けて…慣らしてあげるだけだから…」
「んっ…ふぅ…ん……っ」
声を漏らしながら必死でそこを舐めてくれる織くんに快感を感じながら、その窄まりの奥にローションで濡れた中指をつぷっと挿れた。
「っ…」
意外にもすんなり飲み込んでくれたそこをゆっくり押し進めながら、指を奥まで入れてトントントンと中を刺激した。
「ぁ…」
気持ちいいみたいで織くんの吐息が小さく聞こえてくる。
耐えている織くんの様子を見ながら、その指だけでぐるぐると入り口を広げるように刺激して、そっと指を抜いた。
「今からこのおもちゃで後ろ慣らしてあげるからね」
「え…」
ピンクのローターを手に持つと、流石に不安そうな目でこちらを見上げてきたが、気にせずに左手で頭を撫でた。
「大丈夫、痛くないから」
十分緩まった蕾にローターの先端をつぷっと押し当てると、ローションの力もあってかそこは少しずつ異物を飲み込もうとしていた。
そのまま滑りに任せて残りの部分を一気にぐっと押し込んだ。
「あっ…」
「いい子だね、大丈夫…全部入ったよ」
未だに玩具が入っていることが信じられないのか、少し不安そうな顔をしているが、頭を撫でてあげると次第に目元がとろんとしてきた。
「…っ!」
カチッとスイッチを最弱にするとバイブは小さく音を立てて、動作した。
「織くん、気持ちいい?」
「な、なんか…変…」
まだ快楽にまでならないのか、浅く呼吸しながらこちらを見ていた。
「お口がお留守だよ。れーにされて気持ちよかったこと、織くんも真似してやってみて…」
「っ…わかった…」
そう言って、もう一度咥えなおすと、今度は奥の方まで口全体で含んでくれた。
「ぁっ…」
そのまま舌で裏筋を往復するように舐められると、元々快感に弱いそこは、びくびくと先走りを漏らした。
「気持ち、い…よ…織くん」
「んっ…ふ…んん……っ」
声を漏らしながら今度は手も使ってそこを刺激してくれた。
お尻のバイブのせいもあってか、また織くんのものは硬さを取り戻してきている。
「やっ…だめ、れ…イっちゃう…から…」
「んん…⁉」
口を退けてやめさせようとした時にはもう遅く、引き抜いた拍子に我慢出来なかった白濁がびゅっと織くんの顔にかかっていた。
わ…顔射しちゃった…。
射精感に浅い息を吐きながら、織くんの顔をまじまじと見つめる。
潤んだような表情の織くんに自分の精液がかかっているのが凄くえっちで、ティッシュを取ろうと伸びた手が思わず側にあったスマホを取っていた。
「ティッシュティッシュ…じゃなくてごめん」
カシャッとロック画面から流れるようにカメラを開いてその姿をスマホに収めた。
「は⁉ちょ、消して…」
「はいティッシュ!やった〜家宝…ライン送る?」
「いらない!」
「ごめんって」
怒ってる織くんの顔をティッシュで拭いてあげて、そのまま全部忘れさせようとカチッとバイブの振動を強まであげた。
「あ"っ…⁉」
突然の刺激にびくっと跳ねた織くんがこちらにもたれかかってきたのですぐにバイブごと引き抜いてあげた。
そのまま電源はオフにしてその辺に投げ捨てる。
「ねぇ、欲しい?」
こくんと頷く織くんにそれじゃダメと深めの口付けをする。
「ちゃんと言葉にして。…れーの欲しい?」
「……ほ、ほしい…っ」
上目遣いで焦れたように懇願してくる様は、めちゃくちゃ可愛くて、思わず俺は織くんを押し倒した。
「いいよ。れーの全部あげるから、織くんもれーのものになりな」
そう言って力強く抱きしめた。

ずっとバイブで慣らされていたそこはひくひくと物欲しそうにしている。
「織くんってほんと無意識に煽ってくるよね」
「え?あっ…」
また硬くなっていた自分の熱を、待ちわびているそこにぐっと押し込む。
「楽にして…」
頭を撫でてあげながらみちみちとゆっくりその中に熱を押し込むと、苦しそうに、はぁ…と息を吐くのが聞こえた。
織くんのものも段々と熱を持っていき、全て収まった頃には狭い肉壁がきゅうきゅうと締め付けきているのが感じられた。
「ほら…全部入っちゃった…」
「はぁ……」
嬉しそうに呟くと、織くんの手が背中に伸びてきて抱きしめてくれた。
「動くよ」
そのまま本能のままにずぶずぶと腰を動かして抜き差しを繰り返すと、すっかり我慢できなくなったのか、織くんが声を零し始めた。
「ちょ、あっ…ぁ、あ…!」
その声に興奮してパンパンと何度も体の奥に熱を打ち付けたのだが、ぎりぎりの理性でなんとかイく前にそれを止めた。
「こんなに興奮させてくれるの、やっぱりれーが織くんのこと大好きだからかな?」
「あっ、うぁ…⁉」
そのまま入れたままぐるりと体勢をひっくり返し、自分は寝転んで騎乗位の体勢にした。
自身の体の重みで一気に性器が奥まで入ったのか、織くんの中がぎゅっと締まるのが分かった。
「まだまだこれからだよ?織くん」
「え、っあ!…ああっ…!」
腰を持って前後にゆさゆさと揺すってあげると、よっぽどそれが気持ちいいのか、仰け反りながら大きな声を漏らした。
「れー…そ、それっ…あんっ…む、むり…やらぁ……!」
「んっ…ヤダじゃないよ。もっと腰動かして」
呂律の回らない舌で懇願してくる織くんが可愛くて、何度も前立腺に当たるようにごんごんと奥をついてあげた。
「あっ…ぅあ…あ"…」
もう声が出るままに喘ぐ姿を見て「すっごい良い眺め…」と恍惚に浸った。
「ここが好きなんだよね?」
「ぇあっ…んっ…ぁ…!」
前立腺を下から擦り上げるようにグリグリと突いてあげると、その度に身体を震わせてきゅうっと締め付けを返してきた。
「れーが、一回見つけた彼氏の性感帯忘れる訳ないでしょ?」
「やっ…れ…そこっ……そこ、すきっ…」
涙目で見下ろしてくる織くんが可愛くて、何度もそこに快感を覚えさせるように突き上げたのだった。

「もっとイイコトしてあげるね?」
極限まで快感漬けにした身体を引っ張って、壁際で鏡の前に立たせると、押し付けるように織くんの手を鏡に、そしてお尻をこちらに突き出させた。
力も抜けて全く抵抗する様子のない織くんは、訳も分からないまま零衣に後ろから抱きつかれていた。
「…?」
まだぼんやりしている織くんに後ろから囁いた。
「ほら、可愛い織くんの顔がよーく見えるでしょ?」
「ぁ…!」
気付いてももう遅いとばかりに耳を舐めるとびくりと肩を震わせた。
「織くん可愛いから、すぐとろとろにしてあげるからね」
「ひ、ぁ…」
ずぶっと後ろから自分の性器を差し込んだけど、今度はあえて気持ちいい場所は擦らない。
浅い場所で何度も抜き差しを繰り返しながら、乳首をくりくりと弄った。
「ひゃっ…!」
女の子みたいな声で身震いして、ちょっと物足りなさそうな織くんに、口に指を優しく突っ込んであげた。
「ちょっと遊んであげるね」
ちょうど近くに投げ捨ててあったローターの電源を入れて亀頭に押し当てた。
「んんっ…!」
指のせいで声がうまく出ないのに一々びくんと震え上がってくれる織くんを、親指で顎を上げさせながら、鏡としっかり向き合わせた。
顔は火照って、目はとろんとしていて、だらし無く開かれた口元からは唾液が溢れている。
「ぁ…」
やっと自分が今どんな顔をしているのか認識したようで、一気に顔を赤くさせた。
「ね〜、れーのおちんちんより玩具の方が気持ちいいわけ?」
「だ、だって…あぁっ…!」
理由は分かっている。
さっきからわざと織くんの好きなところには一切触れずに抜き差しを繰り返している。そろそろもっと奥に入れてほしいと思っている筈だ。
「何?もっとどうして欲しいの?言ってくれなきゃ分かんないよ」
そう言って竿の裏筋にもバイブを押し当てた。
「やら…んっ…それ、嫌…」
「わがままばっかりじゃなくて、ちゃんとどこをぐりぐりして欲しいのか言って…」
ぴたっと腰もバイブも止めて、物欲しそうな織くんを鏡越しにじっと見つめる。
「ほら」
もう一度じゅぶっと抜き差しすると漸く織くんが口を開いた。
「あっ…れーの、れいのを、奥に入れてぐりぐりして…!あっ、ひぁっ…!」
織くんの言葉と同時に1番奥と前立腺を穿つように何度もピストンした。
「あっ、ん!あ、ああっ…!」
その度に快楽に喜ぶような声で喘ぐ織くんに言いようのない快感を覚えた。
蕩けるような顔が鏡に映っている。
「れ、れい…前から、して…顔見たい…」
絞り出すような声に思わず後ろから抱きしめて、顔をこちらに向かせてその唇を塞いだ。
「どこまでれーのこと興奮させてくれるのかな?」

そのままなだれ込むようにベッドに正常位で押し倒すと、顔が見えて嬉しいのか織くんが小さく蕩けた笑顔を浮かべる。
またそうやって人を煽る…。
だいぶ余裕の無くなってきたまま再度織くんの中にズンと押し入った。
「あっ…!」
嬉しそうな声をあげて、織くんは身体をびくんと震わせる。
そのまま前立腺を擦ってあげると、うぁっと、ほとんど理性の効いていない様子のまま声を漏らした。
「いきたい…れ、い…」
「こら、触んない」
赤くなって今にも熱を吐き出しそうなそこに、自分自身で触れようとする織くんの手を、左手で押し払うようにシーツに恋人繋ぎで固定した。
代わりに織くんのモノを右手の指先で根元を摘むように軽く擦ってやると、だらしなく開いた口から掠れた声が漏れた。
「あ…あっ…」
今はただその快楽を貪るように性器を指先に押し付けてきてびくびくと小さく震えている。
だいぶ出来上がってる…?
快感が身体に馴染んできたのか、性器に吸い付くように身体で飲み込み、自分でも腰を振ろうとする。
「あっ…ああ…はぁー…」
その姿は普段の理性的な姿とはかけ離れていて、今は快楽だけを貪る獣のように、ただただ零衣しか見えていなかった。
それを見てぞくぞくと背筋を突き抜けるような快感が走る。
「…織くんの身体、誰の?」
吐息混じりに聞きながら、快感に任せて、それでもゆっくりと抜き差しを繰り返す。
「れい…っれ、い…の」
掠れた声のまま、熱を帯びた織くんの目がこちらを見ていて、酷く欲望を煽られる。
「…はぁ…零衣のに、なるの?」
じっと見つめると、縋るように言葉が紡がれた。
「れいの、れー…の、になるから…!もっと奥、ぐりぐりして…!」
「っ…‼」
涙目で懇願する姿にパンッと理性も全部吹っ飛んで、食らいつくように唇を塞いだ。
「んっ…、ん…!」
さっきまでと別人みたいにキスを求められながら、パンパンと力任せに織くんの1番奥を突く。
合わせるように締め付けてくるそこにどうしようもない快感と幸福感を覚えながら何度もそこを突いた。
「ご褒美だよ…」
「っ…あんっ、ああっ…!」
織くんの喘ぎ声を聞きながら、性器に触れて何度も擦り上げた。
「っ最高…!織…一緒にイくよ…!」
「んっ…ああああ…‼」
2人同時に、自分の熱が広がっていくのを感じながら求め合うようにぎゅうっと抱きしめあった。


くったりとしたまま、身体の奥に温かいものが広がっていくのを感じていた。
頭が真っ白になる程の感じたことがない快感に、まだ意識がはっきりしなかったが、零衣が抱き締めてくれて、どうしようもない多幸感に包まれていた。
こんな時がずっと続けばいいのに…。
そう思えるぐらいそれは心の底でずっと求めていたもので、愛情で、自分だけを見てくれて、安心できて、とにかく幸せで…。
零衣の、ものに…。
そこで自分が快楽の中でさっき何を口走ったのか急に思い出して、一気にさあっと頭が冷えた。
「あ…」
あまりの恥ずかしさと崩壊した自己に耐え切れず、勝手に涙が溢れてきた。
もう泣くしかない。
「どうしたの、恥ずかしいの?良すぎた?」
まるで全部分かってるよという風に優しい声でおでこに口付けされて、涙を舐め取られ、益々涙が溢れてきた。
「れ〜…」
ぐすん、と涙声で零衣にしがみつく。
「気持ちいいセックスしたら誰でもそんなもんだよ」
そう言って頭を撫でてくれたが、だとしたらセックスはかなり怖い。
前回よりももっと快感が強かった気がするのに、全部零衣のものにされたみたいに独占されて、愛されて…それが不覚にも心地いいと思ってしまった。
「……」
「愛してるよ」
零衣の声は優しい。
頭を撫でる手は酷く心地よくて、繋がったままのそこはまだ熱を孕んでいる。
「れーの前では素直になっていいから…それに、れーあんな風に懇願されたら…めちゃくちゃ、好きになっちゃう…」
少し照れ隠しするような顔で視線を逸らしつつもまた向き直られ、そんな表情をなかなか見ないせいか心臓が少し早鐘を打った。
「好きだから」
あ、まただ…。
時々見せる男らしい表情で見つめられ、この顔を俺以外の誰も知らないで欲しい、とぎゅっと抱き寄せた。
「れー以外考えられないでしょ?」
「うん…」
囁かれるままに、こくりと頷いた。
もっと満たしてほしい。
もっと愛してほしい。
ただ俺だけを見ていて欲しい。
言えない代わりにぎゅっと抱き締めた。
いつも素直な零衣が少しだけ羨ましくなった。
「ね、大好き?」
笑顔で聞いてくる零衣を顔が見えないように抱き寄せて、そっぽを向いて答える。
「大好き…」
「愛してる?」
ただ繰り返すだけだ、そう思って
「愛してる」
蚊の鳴くような声で呟いた。
言ってみると、やっぱり恥ずかしかったが少しだけ安心した。
「零衣…」
零衣に、言ってくれなきゃ分からないと言われた影響だろうか。
しばらく躊躇って、気持ちは言葉にしないと、となんとか口を開いた。
「そういう顔、もう…俺以外に見せないでね…」
「…うん!」
満面の笑みで子供みたいに抱き締めてきた零衣を、いつものように撫で返したのだった。