はてなマークを浮かべる

授業の間の休み時間。牛乳にするか飲むヨーグルトにするか悩みながら自販機にたどり着いたところで耳に入った女子の声は、よく聞きなれた名前を呼んだ。


「綾人先輩!」
「ごめんね、待たせちゃって」


それに応えるのも毎日のように聞く声。姿を見なくとも人違いではないとわかるあの声。


「綾人先輩を見るとすごく胸が苦しくなって、体が熱くなって、先輩のことが好きなんだなって気付きました。あの……えっと、付き合ってください!」


告白現場だった。
綾人さんがモテることなんて中学の頃から知ってるし、女子にキャーキャー言われている姿は見慣れすぎてもはや日常だったけど、実際に告白されているところに出くわすのは初めてだ。


それに、今女子が言っていた感覚が何故か自分もしっくりきていて首を傾げた。


俺も、綾人さんを見たり話すと胸が苦しくなる。体が熱くなる。でもそれは綾人さんを「苦手」だからであって、「好き」だからではない。
同じ感覚なのに、「苦手」だと思う人と、「好き」だと思う人がいるのはどうしてだ?