何を言うかと思えば、混乱

「蛍、飲む?」
「……ありがとうございます」

休憩中、綾人さんがドリンクを手渡してくれた。さっき飲んだけど一応受け取っておこう。するとそのまま僕の隣に一人分くらいの間隔を空けて座った。別に綾人さんのことは好きでも嫌いでもない。どっちかと言えば変に干渉しないし、どっかの誰かさん達みたいにうるさくないから一緒にいても居心地が悪いと思ったことはない。


「ずっと思ってたこと言ってもいい?」
「はい、なんですか?」
「俺と蛍って似てると思うんだよね」
「はぁ?」


居心地は悪くないのに何故好きでもないのかというと、今みたいに訳のわからないことにたまに言うから。ふざける様子もなく、いつも通り柔らかく微笑みながら、僕の顔を軽くのぞき込んでいる。僕と綾人さんのどこが似てるっていうの。


「……ミドルブロッカーってことぐらいしか共通点が見つかりませんけど」
「それもそうだし、“頭”でバレーするじゃん。俺ら」


プレースタイルの話?確かに本能で動くタイプではないけど、だからってそれだけで似てるっていうのもどうかと思う。


「僕は綾人さんみたいに戦略が練れるわけでもないし、技術もありませんけど」
「俺は、蛍がこれからの経験と知識次第で成長していくと思ってる。誰がなんと言おうと、俺は“その”蛍を楽しみにしてるんだよ」


妙に胸がざわついて驚く僕にそう言い残して、「翔陽のレシーブ練見てこよっかな」と、立ち上がって行ってしまった。その背中に悪態もつけずに黙り込んでしまって何故か悔しかった。