はじまりの話をしよう

学校に戻って、反省と対策、そして練習をしてからモップをかけ終わってさぁ部室へ、というところで何とも神妙な面持ちで近付いてくる飛雄。何か言いたいことでもあるのかな。無言で首を傾げてみれば、口をもごもごさせて、やっぱ何かあるんだ。


「あの、」
「うん」
「セッターやってたって言うのは……」
「あぁ、そのこと。だいぶ前にね」


俺がセッターだったってことを1年と烏養さんはもちろん知らない。2、3年だって何故俺がミドルブロッカーに転向したかっていうところまでは話してない。別に言いたくないとかそういうことではないけれど。

気付けば部員だけでなく、コーチや武田先生までも俺の言葉を聞いているようで。


「何ていうか……綾人さんの冷静さと頭脳とフォームのきれいさとか、セッターだったって聞いても何も違和感がないというか……すげー納得がいったんですけど、なのに何でセッター辞めたんですか?」
「明るい話ではないけど、聞く?」
「……はい、」
「綾人、無理に話さなくてもいいぞ」
「大丈夫だよ、大地」