優しさと痛みと

「旭ー飯食おー」
「綾人、」
「拒否権はなしね」

あの試合以来俺は部活を休んでる。それからだ、クラスが違う綾人が一緒に昼飯を食べに教室へ来る。きっと俺に気を使ってるからだ。

空いてる前の席に座ってその長い脚を組む。俺の机にコンビニの袋を置いて、パックのトマトジュースにストローを指して飲む綾人の横顔はいつも通り静かで、どこか涼しげで。


「大地とスガはいいのか?」
「ん、同じクラスだしいつだって食えるだろ」
「そうだけど……」
「てかあれだよ、バレー部だからじゃなくて、俺が旭と食べたいから来てんの」


何でもお見通しか、綾人には。

その後はチャイムが鳴るまで他愛もない話をしてた。バレーのことを口に出さないのはきっと綾人の優しさだろう。その優しさが嬉しくもあり少し痛かった。