その言葉だけで

「夕、改めておかえり」
「俺は翔陽にレシーブを教えるだけであって部活に戻るわけじゃ……!」
「さすが先輩、面倒見がいいね」
「……!綾人さんっ!」


自主練の時間にかけられたその言葉は何だか照れくさくてでも嬉しくて、思わず顔がにやける。綾人さんが話す言葉たちはいつも、俺の心に溶けて染み渡る。きっとみんなもそうだと思う。


「部活来れない間も練習してたんだって?龍から聞いたよ」
「はい!もっとみんなが安心して戦えるように俺、上手くならないといけないんで!」
「そうだね。夕がいてくれると心強いよ」


そう言って微笑む綾人さんはやっぱり今日もかっこいい。醸し出す雰囲気っていうのか?落ち着いていて余裕があって、1年しか変わらないのにすごく大人に感じるから不思議だ。


「レシーブ練、手伝ってくれますか?」
「もちろん。じゃあまず西谷先輩のお手本見せよっか」
「せ、せんぱいのお手本んん!もちろんっす!!」


あの人が戻るまで俺も戻らない、って決めてたのに、綾人さんの言葉ひとつで揺らいでしまいそうだ。そのくらいこの人の言葉には力がある。だから少し、部活に参加してみようか。