埴輪、好きなんですか?

休み時間、トイレに行こうと廊下に出ると、何とまぁ背の高い人がいて。俺は自然とその人の後ろを歩くことになる。この学校背高い人多くないか?羨ましい限りだこの野郎。

少しでいいから身長分けろと念じながら背中を見つめていると、カランと鳴って転がる何か。謎の茶色い物体。


「あの、落としました……よ、って埴輪?」
「あぁ、すまない」

長身くんの落し物を拾ってみたものの、確実に埴輪である。それをさも当然のように受け取る彼は一体何者?この埴輪はまさか筆箱とかなのか?なんてハイセンス!


「埴輪、好きなんですか?」

何言ってんの俺。動揺のあまりになんていう質問をしてんだ。別に会話をする必要もないのにどうして俺は立ち話を吹っかけたんだ。何故だ。


「今日のラッキーアイテムなのだよ」
「ラッキーアイテム……?」
「おは朝占いに決まっているだろう」
「あぁ!おは朝!俺も毎日見てるよ!」
「!」

長身くんは驚いたような、でもなんとなく少し嬉しそうな顔をした。何にそんなに食いついてくれたかは謎である。


「ならばお前のラッキーアイテムはなんなのだよ」
「えっとねー、確かコロコロ鉛筆だったかな」
「所持はしていないのか?」
「え、だって持ってないもん、普通の鉛筆しか」
「全く理解出来ないのだよ」


大きな溜息をついてそう言うけど、俺はその落胆の意味がわからない。理解出来ないことを俺が理解出来ない。


「だが、おは朝占いをチェックし、ラッキーアイテムを認知していることは褒めてやろう」

そう言って長身くんは細長い何かを俺に手渡してきた。

「何これ?」
「緑間真太郎特製、コロコロ鉛筆なのだよ」
「ありがとう?」

頭にはてなマークを浮かべながらも一応受け取る。何だかよくわからないけどありがとう。
じゃあな、と去っていくデカイ後ろ姿をポカンと見つめて、あ、俺トイレ行きたいんだった。思い出してチャイムがなる前に、と早歩きでむかった。