これはきっと悪夢だ。
確かに昔から苦手意識はあった。でもそれがこんなに過酷なものだとは思いもしなかったんだ。俺の認識が甘かったのか……どうしたらいいんだ、しかしもうこの事実は覆らない。
中間テストの順位。
「橙田くんは頭が良さそうに見えるのに意外です」
「テッちゃんさらっと馬鹿にしないで……」
いや〜だってさ、授業って眠いじゃん?それに俺成長期だから、寝る子は育つっていうじゃん?寝ないとじゃん?
「頭がいい奴はどんな人生を歩んでいるんだ……」
貼り出された学年1位に目をやれば、「赤司征十郎」という名前。
「赤司征十郎って新入生代表やってた子だよね?」
「はい。それに、バスケ部の一軍です」
「しかもイケメンとか……文武両道、才色兼備……」
悪いところが見つからない。性格がひん曲がっているのか、それともとんでもない性癖があるのか……
「征十郎くんに勉強教えてもらったら俺も頭良くなれるのかな」
「オレで良ければいつでも付き合うよ」
横から聞こえた落ち着いた声色。オレで良ければってまるで噂の征十郎くんが話しているみたいじゃないか。声のする隣を見れば、
「?!……なぜ才色兼備がここに?!」
「それはオレのあだ名かい?」
「いや、まぁ初めて呼んだけどあながち間違ってないっていうか何ていうか」
「光栄なあだ名だ」
「律儀か」
思ったより大きくないんだな。俺と身長同じくらいだ。それにしてもムカつくぐらいのイケメンである。なんかこう凛としてる。
俺に向かって微笑んでいる才色兼備こと征十郎くんはなんだか生活感的なものがない。彼のことを知りたい。直感でそう思ったけど、知りたいって何だそれだよな。
「俺、橙田カケル。今度勉強教えて!」
「あぁ、もちろんだよ」
そろそろ時間だ。と教室に帰る征十郎くんの背中を見送ってる時に気付いたけど、周りがざわついている。俺、チラ見されている気がする。
「てか何でテッちゃん黙ってるの?同じバスケ部でしょ?」
「一軍と三軍では関わりがないので」
「え、そうなんだ」
思わぬところで思わぬ人と交友関係を広げたところで、俺達も次の授業に向かった。眠くなってきた。