これは驚いた。この相手が女性であれば今まさにオレ、赤司征十郎は恋に落ちていたであろう。
人ごみの中にいるはずの彼に何故か目がいって、そして視線を外せなくなった。貼り出された成績表を見上げる彼の横顔がとても綺麗で、この「学校」という場に相応しくないとも思った。
話しかけるつもりもないが、彼の横に立って成績表を見た。オレは1位。でもそんなことはどうだっていい。何故なら、彼の口からオレの名前が出たのだから。
「征十郎くんに勉強教えてもらったら俺も頭良くなれるのかな」
「オレで良ければいつでも付き合うよ」
咄嗟に出た自分自身の言葉に少し驚いたが、どうやら彼の方が驚いたらしい。その大きな目をさらに見開いて、オレを見つめている。
「?!……なぜ才色兼備がここに?!」
「それはオレのあだ名かい?」
「いや、まぁ初めて呼んだけどあながち間違ってないっていうか何ていうか」
「光栄なあだ名だ」
「律儀か」
くるくると表情を変えて話す彼に思わず笑みが零れた。
「俺、橙田カケル。今度勉強教えて!」
「あぁ、もちろんだよ」
偶然の出会いをしたオレ達は、勉強を教えるという名目で繋がりを持ったのである。